28話 パーティは戦場
《sideキョウヤ》
今日は俺達のお披露目パーティらしい。王城には数々のお偉いさん方が集まり、盛り上がっている。
こういう場は慣れないな……。
俺はソワソワしながらも、着ているタキシードを整える。
「こんばんは」
「こんばんは、ユエリア様」
ユエリア様が俺を見つけたようで、話しかけに来る。そして、彼女は少し周りを見渡す。
「リクさんは……」
「陸は残念な事に出席しないみたいですね」
「そうですか……」
「彼はユエリア様に悪い印象を持ってないと思いますよ」
「そ、そうなのですか?」
ユエリア様は頬を赤らめる。
彼女は多分、陸に助けられた時に好きになったんじゃないかと思う。って言うか完全に好きになっている。俺は世界記憶に干渉してその人の想いすらも知ることができるから知っているんだけどな。
ちなみに、俺は陸の想いを優先させるが、ユエリア様のことも応援しようと思っている。
「彼は自分が信頼できると思った人には気軽に喋りますからね」
「そうなんですね。信頼されているといいのですが……」
「多分、自分のために怒ってくれたユエリア様への好感度は高いと思いますよ」
「えへへ。そうなんですか」
めちゃくちゃ嬉しそうな顔するじゃん。そう言う顔は好きな人の前でしてほしいもんだ。
「あの、今度リクさんの好きそうな物を教えてくれませんか? お詫びの品として渡したいのですが」
なるほど、プレゼントか。日本だと本とかばっかり読んでいたからな……。こっちの世界だと魔石とか買ってたし……そうだな……。
「分かりました。考えておきます」
「ありがとうございます。それでは私は他の方にも挨拶しないといけないので、ここで」
「はい。頑張ってください」
ユエリア様は満面の笑みで長い髪を靡かせながらその場から立ち去る。
陸は王族とか嫌そうだけど、将来安泰だもんな……。ユエリア様、頑張れ!
ユエリア様と別れてから時間は経ち、ある程度の来訪者と対面した後、アメリア様が一人の女性を連れてやって来た。
「キョウヤ様。こちら隣国のマグリット国の第一王女、ジェルメーヌ•マグリット様です」
「お初にお目にかかります。マグリット国第一王女、ジェルメーヌ•マグリットと申します」
「キョウヤ•シグレです」
第一王女……。確かに水色の美しい髪から品を感じる。
アメリア様が連れてきた人だ、彼女みたいに「配下に下れ!」って言ってくるかもしれない。
俺は警戒しながらも、握手をする。
「まぁ、なんと素晴らしい。毎日鍛錬をしているのですか?」
「はい。生きるためには鍛えないといけないので」
「努力は決して裏切りませんからね。どなたかと一緒に鍛錬しているのでしょうか?」
「【剛力の勇者】の殻斗とよく模擬試合を行ってますね」
「勇者同士、切磋琢磨してるようですね」
この後も長々とジェルメーヌ様との会話が続く。しかし、彼女は何かを探っているかのようだ。
「それで……私にどのようなご要件で?」
俺の言葉にジェルメーヌ様は渋そうな顔をする。
カワイイ顔がシワで台無しになってるな。
「……流石に気づきましたか。仕方ありません、単刀直入に聞きますわ。貴方がどんなモノでも鑑定もできるのよね?」
確かに【全知全能の勇者】には全知と付くようにありとあらゆるモノを鑑定できる……。
しかし、それなら何故魔眼を持つアメリア様に聞かないのだろうか。ますます怪しい。
「貴方達異世界人の中に大賢者様はいらっしゃるはずです。それはどなたでしょうか?」
彼女の言葉に俺は内心焦る。陸のスキルである【大賢者】は世界記憶とかに干渉できる権利の第一位をもっており、他の人からは自分の情報を見られず、他人の情報は見れると言っていた。
だから、アメリア様の魔眼でも見れないはず。一体どこから情報が……。
「私は【予言】のスキルを持っています。【予言】によれば、『かの対戦にて邪神を討ち滅ぼせし女神。その使徒である大賢者は、かの地、フローレンスにて誕生するであろう』との事です」
なるほど、【予言】と言うスキルは未来の可能性を言葉にするスキルなのだろう。それには世界記憶など関係ない。
多分彼女はアメリア様の魔眼で探して貰おうとしたけれど、ステータスが見れない者が数人おり、高位の鑑定のスキルを持つ俺に聞きに来たと言う訳か。
ここで陸の名を出すのはやめよう。彼女は【大賢者】と言うスキルではなく、その人その者が大賢者と思っているのだろう。なら、賢者とつくスキルを持ってる人を紹介すればいい。そうすれば、陸に被害が出ない。
「あそこにいらっしゃるナツメと言う女性は【雷鳴の賢者】と言うスキルを持っています」
「なるほど、情報感謝いたしますわ」
ジェルメーヌ様は聞きたいことが聞けたのか、早々と立ち去って行く。
「ふぅ……」
俺はため息を溢しながら、柱にもたれかかる。
こんなに人相手に疲れるとは思わなかったなぁ……。
少し休憩した俺は一人一人鑑定していくことにした。もしかしたら、パーティの参加者の中に魔王軍がいるかもしれないと陸から聞かされていたからだ。
◆◆◆◆◆
夕日が窓から差し込み、宿舎の廊下がとても幻想的である。そんな中、俺はパーティの前に陸の部屋へ向かう。
「なんだよ、陸」
理由は陸に呼び出されたからだ。しかも、何故か精霊武器も持ってこいと言われている。
「恭也……。パーティの時は精霊武器を絶対持っていくこと」
「……なんでだ?」
「パーティの来訪者にはこの国以外の人もいるらしい。中には魔王の手下がいるかもしれない」
「万が一の事のためだな」
「そういうこと。しかも、精霊武器は柄だけの状態だとタキシードの胸ポケとかに入るんじゃないかな?」
「なるほど!」
俺は試しに今着ている服のポケット入れてみる。
おぉ、すっぽり入った。
「あと、一人一人鑑定するといい。【叡智】までとは行かないけど【全知】でもある程度の過去まで知ることができる」
「おぉ! そんなことできたのか! それで怪しいやつを探すんだな!」
「いや、怪しくないやつを探すんだよ。特に世界記憶に過去が記録されてない人を探せばいい」
俺は頭の中で?が浮かび上がる。
「魔王の裏には邪神がいるらしいんだ。それで、その邪神は世界記憶に干渉して魔王の配下の記録を隠蔽とかしてるはず」
「なるほど! 陸は頭いいな。そこまで考えているなんて」
「それほどでもないよ」
言いたい事を言い終えたようだ。そして、陸は何処かへ行く準備をしていた。
「……何処か行くのか?」
「ちょっと城壁で周辺の警戒をしてくるだけだよ」
そう言うと陸はとても重そうなカバンを背負う。
きっと魔物と戦いに行くのであろう。
「死ぬなよ」
「そっちこそ気をつけて。こっちの心配はしなくて大丈夫だから」
「おう!」
「それじゃあ、また明日会おう」
俺と恭也は拳を合わせ、別れる。
俺は彼を信じている。彼も俺を信じている。だからこそ、一歩間違えれば大惨事になることを託すのだろう。
そう思いながら、パーティへ向かった。
◆◆◆◆◆
「おいおい……」
一通りの人物を鑑定した俺は呆れた声を出す。そして、俺は【縮地】と言う間合いを一気に詰めるスキルを使用してユエリア様の前へ向かう。
「させねぇよ!」
「きゃっ」
俺はユエリア様の手を引く。そして、彼女の後ろに立っていた男に精霊武器を剣にして切り裂く。そして、この男の右腕は中に舞い、その者が持っていたナイフが地面に落ちる。
そう、この男はユエリア様に今でも襲いかかろうとしていたのだ。
「お前……魔王の手下だな」
俺は剣をその男へ向けるのであった。
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