22話 強すぎて困る
リオ団長達と別れて実技訓練が開始した。そして、実技訓練中のはずなのだが……。
「リク! お前は絶対戦うなよ!」
「そうだぞ。ちゃんと俺らの後ろにいろよ」
騎士のみんなが全然戦わせてくれない! 何故か僕だけは戦闘に参加させてくれない!
騎士達は統率の取れた動きで魔物を倒していく。この実技訓練は盾などで守る前衛、後ろから魔法や弓で攻撃する後衛、治療を専門とする衛生兵からなる六人のグループで行動する。
僕達のグループは前衛僕と騎士、後衛柚葉さんと魔導師、衛生兵神官二人である。なので、僕も戦わなければならないのだが……。
「なんで僕は戦わせてくれないんですか!! 前衛一人は辛いだろ!」
「リクは強すぎるんだよ。俺らの訓練にならないじゃんか」
「オーガを一瞬で倒すやつがずっと攻めてたら、俺らの相手がいなくなるだろ!」
◆◆◆◆◆
遡るのこと一時間前………。
「よし。まずはあいつからだ」
このグループのリーダーの騎士であるグランが筋肉ムキムキのドデカイ人型魔物を指差しながら言う。
「あれはオーガだ。バカ力だから絶対攻撃を受けようと思うなよ。リクが回避しながら気を引いてマーロが魔法で攻撃しろ。シューマはマーロの魔法発動まで守れ」
なかなかいい作戦だ。
「「「「「了解」」」」」
「それじゃあ、行くぞ! 突撃ぃ!」
僕は速攻でオーガに飛びかかる。
オーガは僕達に気づいたようで手に持ってた混紡で殴りにかかる。その衝撃で地面がエグレ、石礫が飛び散る。それから大盾持ちの騎士であるシューマが魔導師のマーロを守る。
「[魔力障壁]」
僕は障壁魔法を展開し、回避する。そして、魔力による身体強化! ついでに【マナエンジン】も稼働!
「[重力軽減][加速]」
更に【運動魔法】で身体を軽くし、加速させる。それと同時に紋章からソフィア様から頂いた神殺しの短剣を取り出す。
嫌がらせ程度でいいかな? なら目を狙うのが適作か。
僕は障壁魔法を貼り、森の木々を使いながら錯乱させ、目を狙う。
「そこ!」
僕はオーガの振り向きに合わせ、短剣で切り裂く。
「え……?」
短剣の切れ味は凄まじく、まるで空気を斬ってるかのように骨まで切り裂いた。そして、脳にダメージが入ったのかそのままオーガは倒れ込んだ。
◆◆◆◆◆
あ〜。あれが原因か……。確かに訓練にならないな……。
「それなら単独行動させてくださいよ。まだまだやりたいことがあるのです!」
銃の試し打ちとか作った魔法の練習とかしたいんだよな……。
僕はグランに縋る子犬のような目線を送る。
「う〜ん。団長に聞いてみないと無理だな。六人一組の訓練なんだから」
「そうだよ。単独行動は危ないんだから」
柚葉さんも僕が単独行動するのを反対しているみたいだ。
「それならリオ団長に直接通話魔石で聞けばいいじゃない!」
通話魔石。風属性の魔法を応用して遠くの人と喋れる魔導具である。この実技訓練に参加している者の中のリーダーを務めている者に渡されている連絡手段である。
「ハァ……。これは緊急時用のやつだぞ……。まぁ、仕方ない。リクの頼みだ。ちょっと団長と掛け合ってみる」
「流石グラン! 分かってる〜」
そのままグランは離れてリオ団長に連絡を取ってくれているみたいだ。とてもありがたい。
「団長から許可が出たぞ」
「よし!」
「団長からの伝言。絶対死ぬなよ、だってさ」
「了解です! ふへへ。何からやろうか」
「……陸君、本当に大丈夫ですか?」
柚葉さんが不安そうな趣きでこちらを伺う。
「大丈夫大丈夫。いざとなったら全力疾走して逃げるから」
僕はそう言うと手を振りながら、彼らと別れる。
グランの指令は確かに的確で有効的だが、僕の特性的にも効率的にも一人で狩るほうがいい。それに魔物の素材を思う存分集められる。
「[音波探知]」
僕は【波長魔法】な微弱な音を発生させその音の跳ね返りから相手の位置を探る魔法を使用した。
「あっちにワイドウルフの群れだな」
僕は魔力による身体強化をしながら、群れに突っ走る。ワイドウルフ共は匂いで察知していたのか、奴らもこちらへ向かって来る。
「まずは……そうだね。[重力場]」
「グルルル……ウォン…」
魔法を発動した瞬間、数匹のワイドウルフはその場で静止し、そのままボキボキと音を立てながら倒れた。
今使った魔法は試したかった魔法の一つである[重力場]だ。これはオーガを倒すときに使った[重力軽減]の逆で相手に荷重を加える魔法である。
魔力の込め次第では一瞬でぺったんこにできるが……内蔵とか飛び散るからやめておこう。
僕の魔法に怯えたのか、魔法が当たらなかったワイドウルフ共は尻尾を巻いて逃げていく。
だが、僕がそれを許さない。
僕はカバンの中から銀色に輝くとあるモノを取り出す。
バン! バン!
「キャイン!」「キャイン!」
その爆音と共に逃げていたワイドウルフ共は全滅した。
逃げているワイドウルフ共を仕留めたこれは僕がオリジナルで作ったリボルバーである。少し大きめに作ってあり最大6発まで直径10mmの弾丸を飛ばせる優れ物。だけど、そこまで銃について詳しい訳じゃないから大きさとか適当だし、毎回コッキングしないといけないって欠点があったりするんだけどね。
「よし! この調子で殺っていくぞぉ!」
この時から、魔物のことを素材としてか見ていない陸による魔物の大虐殺が始まるのであった。
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