21話 実技訓練の序章
実技訓練当日。僕はウキウキしながら闘技場へ向かう。
武技大会等の色々な大会などで使われるこの闘技場の前の広場が集合場所らしい。なんでも、ここでは人同士の決闘だけでなく魔物同士を戦わせて賭け事をする場所でもあるらしい。なので、裏門から近い位置あるのだ。
「おはようございます。陸君も参加するんですね」
広場に着くと柚葉さんが僕に声をかける。見渡すとすでに複数人の騎士が待っている様子だ。
「おはよう。柚葉さんはどうしてこの訓練に?」
「ミアさんとエミリアさんも訓練に参加するからですよ。一応、勇者の実力が見たいとか」
「へぇ〜そうなんだ。二人共強そうだもんね」
「そういえば、この前ね────」
柚葉さんと世間話をしていると、沢山の足音が聞こえてくる。それと共に「おぉ」「なんと凛々しい」と言う言葉が飛び交う。
「勇者御一行のご到着みたい」
「……ん?」
勇者御一行を見た僕は驚愕する。なんと全員ちゃんとした金属の防具を身に着けていたのだ。それに対して僕と柚葉さんは………訓練で使用している魔物の革の胸当てのみ……。騎士達は自らのフルプレートアーマーがあるけれど、僕達二人はそんなものはない。
「よし。全員揃ったな! それでは、どうぞ」
一人の騎士……確か第二騎士団の団長がそう言うと一歩下がり膝を付く。そして一人の女性が前に出る。その女性は金色の長髪を靡かせ、誰もが安心してしまうような温かな雰囲気を醸し出している。
「私は第一王女殿下のユエリア•フローレンス様です。本日は私が後ろからサポートいたしますので安心して戦ってください」
彼女がそう言うと騎士達から「聖女様がいれば安心だ!」「聖女万歳!」などの歓喜の声が上がる。
「エミリアさんから聞いたことがあります。確か第一王女であるユエリア様は結界魔法や回復魔法に精通していて周りから聖女って呼ばれてるって」
「なるほど、だから歓喜に溢れているのか……」
確かに強力な結界魔法や回復魔法が後衛にいれば安心して戦えるもんな……。それより、この国の王族の名前のつけ方の方が気になった。
エミリアにユエリア第一王女、あのクソ王女……名前はなんとかリアだったけ? まぁ、クソ王女でいいや。なんで王女の名前に全員リアがついているんだろう? そういう習慣でもあるのかな?
『それは王妃であるジュリア•フローレンスのリアを取り、名付けたのです』
へぇ! なるほど。流石【大賢者】だわ。
「それでは行くぞ!」
「「「ハッ!」」」
第二騎士団の団長の言葉に騎士達が全員胸に手を当てる。これがこの国の敬礼なのだろう。
「リク〜! ユズハ〜!」
「エミリア! 走らなくていいでしょ。体力残していないと後々大変になるわよ」
エミリアとミアさんが僕と柚葉さんが並んで立っているところを発見したようでこちらに手を振りながら向かって来る。
「ミアさん。エミリア。おはよう」
「おはようございます」
「私もミアも奮闘しますわ! 安心して戦ってください」
「君達は武具がちゃんとしていないんだから、傷ができたらすぐに報告ね」
「はい」「は、はい」
エミリアとミアさんが僕達のサポートをしてくれるみたいだけれども、なんかミアさんが過保護に感じる。なんか新鮮。
こうして、実技訓練が開始したのであった。
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