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20話 リクと第三王女

 訓練場で素振りをしていると僕はリオ団長にいきなり呼び出された。


「三日後、実技訓練を行うからリクも参加してくれるか?」

「実技訓練ですか?」

「王都の壁外に出て魔物を狩るんだ。最近、王都の近くの魔物が増えたらしく、その討伐を兼ねてのことだ。別に楽しいことじゃないから、参加しなくてもいいのだが……」

「参加します! 是非参加させてください!」

「お、おう。威勢がいいな」

「丁度、魔法の的を探してたんですよ。それに、魔物の骨や皮も欲しいですね!」

「そうか。なら頑張るといい。

 それと、もう一点。その実技訓練は他の異世界人、リクの同郷の者も参加する。そして、彼らがある程度戦えると判断された者は前線の方へ駆り出されるようだ」

「ほうほう」


 つまり、勇者御一行は実技訓練を終えたら魔王討伐へ向かうと言うことかな?


「僕はどういう扱いになるのですかね?」

「リクとユズハに関しては国の庇護下にいないから前線に行く必要がない。自由に働きながら暮らすのもいいし、前線へ行って戦ってもいい」


 ふむ。僕と柚葉さんはある程度の自由が効くのね。

 僕は内心ガッツポーズをする。自由は正義!


「俺としてはここに残って騎士になってもらいたいが……。リクは縛られるのが嫌いだろ?」


 僕は心底驚く。まさにその通りだからだ。

 リオ団長はよく見ている方だな……。


「よく分かりましたね」

「団長と言う立場にある以上、人を見る目も鍛えているのさ」

「なるほど」

「ま、個人の自由だからな。今後の人生は己自身で決めたまえ」


 そう言いながらリオ団長は手を振りながら立ち去っていく。聞きたいことが聞けたので訓練に戻るのだろう。僕も訓練するか……。


「陸く〜ん!! ちょっと助けてください!!」


 木剣を持ち、素振りしようとした僕に柚葉さんが涙目で飛びついて来た。


「木とは言え剣をもってる人に飛びかかるのは危ないでしょうが!」

「そんなことより助けてください!!」


 そう言いながら柚葉さんは僕の腕を引っ張り訓練場から連れ出す。そして、騎士団の敷地から出て王宮の方へ向かっていく。

 これは面倒事の予感!!


「……ちょっ!! どこに連れて行く気!!」


 僕は腕を振り解こうとするが……死んだような目をした柚葉さんが意地でも離してくれない!


「ちょっととある人の研究を手伝ってくれればいいだけですから! ね! ね!」


 どんどん柚葉さんの歩くスピードが早くなってるような気がするんだけど……? 嫌な予感しかしない。

 そのまま、柚葉さんは僕を花園みたいなところまで連れて行く。


「ミアさん! エミリアさん! 連れてきましたよ!」

「ナイス! ユズハ!」


 そこには顔をテーブルに打ち付けたまま親指を立てているミアさんと大量の書類とにらめっこしている女性がいた。

 ……この女性……どこかで見たことあるような?


「貴方がリクさんかしら?」

「あっ、はい。」

「私はこの国の第三王女であるエミリア•フローレンスです。リクさん、よろしくおねがいしますね」


 あぁ。あのクソ王女の妹か! だから見覚えが……。って、つまり面倒事じゃん!! ……とりあえず、【大賢者】。この人ってどんな人?

『研究一筋で王族の異端児と言われてます。本人は王位継承権などどうでもいいと思っています。なので、マスターの害にはならないと思われます』

 なるほど。変わり者ってことね。……なんか僕と同じ雰囲気が出てる気がするかも。


「さて、早速ですが本題に入りたいと思います。この資料を見てどう思われます?」


 そう言うと彼女は僕にクリップ止めされた資料を渡す。

 そもそも、何も聞いていないのだが……。それにこの世界にもクリップはあるのね……。

 僕はその資料に目を通すことにした。内容は精霊の原石の再現を魔石で行うと言うものだった。魔石に魔力を集める術式そのものを書き込み、半永久的に魔力を使えるようにしようとしているようだ。でも………。


「これはちゃんと機能しないと思いますね」

「その根拠はなんですの?」

「まず、術式の効率がよくないですね。これでは集めた魔力全てをそれを行う術式に使ってしまいます。これでは、大体集めた魔力の90%ほどが術式に使われますね。なので、術式を簡略化する必要があります」

「よくそこまで見抜けましたね! 流石はユズハが連れてきただけはあります!」

「いえいえ、エミリア様の資料が分かりやすかったからこそですよ」


 拍手するエミリア様に軽く会釈する。


「あ、私には様付けしなくていいわよ。様付けさせると方苦しいですからね」


 それって大丈夫なの……?

『エミリア•フローレンスは珍しく様付けを嫌う令嬢のようです』

 なるほど、【大賢者】がそう言うってことは本人自身もそれを望んでいるのだろう。


「分かりました。エミリアさん」

「呼び捨てでもいいのですわよ?」

「流石に、呼び捨ては駄目でしょ……」

「ミアだって私のことは呼び捨てですわよ」


 僕は机にひれ伏しているミアさんをチラッと見る。

 第三王女を呼び捨てできるミアさん凄いな……。


「まぁ、いいですわ。本題に戻りましょう。貴方ならこの術式をどのようなものにします?」

「それなら、ここの術式をこの形式のものに変えるのはどうでしょう?」

「それなら試したわ。魔力がうまく循環しなくて爆発してしまいましたの」

「ふむ。なら、ここに付け加えると」

「なるほど! 確かにそれなら発動しそうですね。それならここに」

「おぉ! 確かにこれなら」


 僕とエミリアさんは術式の話で盛り上がる。


 ここまで話が通じる人は初めてかもしれない! めちゃくちゃ楽しい! もっと話をしたいと思ってしまうほどにだ。


 気が付くと日が暮れかけており、空は紅に染まっている。話に夢中になりすぎて三時間ほど経過していたようだ。まぁ、時間をかけただけでとてもよい術式ができたんだけどね。


「リク! ありがとうございます!! これで国の魔石の供給がより潤います!」

「こちらこそです! これほど楽しい時間を過ごしたのは久しぶりですよ。エミリア、これからもたまに話に来ても?」

「もちろんです! これからもよろしくおねがいしますね!」


 僕とエミリアは満面の笑みで握手する。いつの間にか僕とエミリアは呼び捨てで気軽に喋れる相手になっていた。

 恭也以外にも気楽に話し合える友達と言える存在ができたのかもしれない、そう僕は思ったのであった。




読んでいただきありがとうございます!

「面白い!」や「続き気になる!」って方は是非とも☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂けると嬉しいです!

モチベアップに繋がって執筆が捗るです(*´ω`*)

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