2話 ここは何処?
目の前のありえない現象に僕は呆然とした。先程まで教室に居たのに、今ではレンガ造りの見知らぬ場所に居るのだから。
周りを見渡すとクラスメート約30人全員居るみたいだ。中にはパニックになったり、喜んでいる奴もいる。……喜んでいる奴の心境はわからないな。
「なぁ……。一体どうなってるんだ?」
周りの状況を把握した恭也は僕に問う。
「……夢だといいけどな」
床や壁を触りながら僕は答える。感触がある時点で、夢ではないことが確定。そうなると、どのように僕達を拉致ったのかが気になる。現代日本でワープ的な事ができる技術なんて聞いたことも見たこともない。この拉致はまるで魔法のようだ。
暫くしたとき、僕からは見えないところにあった扉の開く音が響く。クラスメート達は一斉に扉から離れる。
そして、開かれた扉の先には全身鎧、いわゆるフルプレートアーマーを着た謎の人物が立っていた。
「ふむ、なるほど。俺はフローレンス国第三騎士団団長のリオ•チャーリーと言う者だ。君達の代表みたいな者はいるかね?」
フローレンス国? そんな国を僕は知らない。そもそも今の御時世、騎士団なんてある国を僕は知らない。リオと名乗るこの男が嘘をついている可能性もある。
リオ団長の元に我がクラスの室長が向かう。室長の名前は……知らない。まぁ、興味なかったし。
室長はリオ団長と数分話すと苛立ちを見せながら戻ってきた。
「はぁ……とにかく、聞いてパニックにならないでくれ。どうやら俺達は異世界転移ってやつをされたみたいだ」
そこまで聞いて、約一部の男達が喜ぶ。そんなに、異世界とか来たかったのか? と疑問に思ってしまう。……多分来たかったんだろうな。
「そして、俺達に帰る手段はない……らしい。今まで召喚された人達は生涯この世界で過ごしたようだ……残念な事にな」
そこまで聞いて、泣き出す者が現れた。いきなり拉致されて家族や元の生活に戻れないなんて聞かされたら、誰でも泣きたくなるよな。僕はあんまり日本での生活が好きじゃなかったし、別にどーでもいいけど。
ふと気になり、隣にいた恭也を見る。彼はどことなく少し寂しそうな顔をしていた。そういえば、恭也には弟が居たな。……ここはそっとしておこう。
「どうやら、この国は俺達を保護してくれるようだ。俺達は異世界から召喚された勇者として扱われるらしい。そして、あの人……リオさんに魔王軍と戦ってくれって言われた」
異世界に、勇者に、魔王軍ねぇ? まるでライトノベルの世界みたいだ。
「俺は魔王軍と戦うべきだと思う。俺達は異世界から召喚された勇者として扱われると言ったが、勇者しか保護してくれない。つまり、戦わないとこの国は保護や支援をしてくれないと言うことだ。何も情報のない世界に放り出されるよりは、勇者として戦ったほうがマシだと思う」
室長はそこまで言って、クラスメート全員を見る。そして、反対の意見の者が居たら全力で説得し始めた。
「……なぁ? 陸はどう考えてるんだ?」
隣にいた恭也が僕に問う。どうやら、心の整理がついたみたいだ。
「僕は室長に賛成だよ。見返りを求めないで保護とか拉致した国がする訳がないじゃん」
「お、おう。なんか冷静だな」
「最初焦ったけどね。まぁ、見返りに合う仕事をすればいい話でしょ? それに、爆薬は無理かもしれないけど材料さえあれば毒は作れるからね」
「……陸は強えよ」
「いや、僕は世界に無頓着だから」
世界なんてどうでもいい。今生きているんだから。僕はそう考える。
それに、日本の生活は嫌いだった。親に道具のように扱われる日々、それから開放されるから逆に嬉しい。
全員の説得をし終わった室長がリオ団長の元へ向かう。
「よし、全員ついてきてくれ。君達の能力測定を行う」
そう言われ、この監獄みたいな場所から開放されたのだった。
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モチベアップに繋がって執筆が捗るです(*´ω`*)