18話 友情の武具
僕がいつも通り、日課の朝の筋トレをしていると恭也が空から降ってくる。恭也は僕が朝に筋トレしていることを知った時から毎日のように現れるようになったのだが……。
「なぁ……。いい加減空から降ってくるのはやめてくれない? 危ないし、びっくりするから」
「俺の部屋からここまで直線的に飛び降りた方が早いからやめね〜よ」
恭也の部屋は三階建てのクラスメート達が住んでいる館の最上階である。ちなみに、この館は高待遇らしい……チクショー!
「あ、そうだ。これあげるよ」
僕は腹筋筋トレをしながら、カバンからとある筒状のモノを恭也に投げつける。恭也はスタッと音を(自分の口で)立てながらジャンピングキャッチする。
「なんだこれ?」
「フフフ、聞いて驚け! これは精霊武具だ!」
「えれめんたるうえぽん?」
「これはこの前買った精霊の原石を使用して作った武器で、精霊の原石の特徴を生かした魔力供給で[絶対零度]を常時発動! それにより水銀を固体化! 更に[絶対零度]を解き、水銀自体を操作する事によってイメージ次第では好きな武器の形にできる! まさに恭也の【全知全能の勇者】とマッチした最強の武器だ!」
ちょっとオタク特有の早口になっちゃったけど、伝わったかな?
恭也は少しの間、柄を見つめると魔力を柄に流し込む。すると柄から水銀がウネウネしながら流れ、剣の形になる。
「おぉ……」
「柄には空間を拡張させる魔法を使ってるから結構な量の水銀が入ってるよ。ちなみに、水銀には毒があるけど魔法で蒸発とかしないようにしてるから安心してくれたまえ!」
「ほとんど何言ってるかわからなかったけど………。これは凄いな……」
おい、理解してないんかい! 長々説明した意味ないじゃん。
僕が落ち込んでいると、素振りしながら恭也が問う。
「冷気を纏ってるけど、なんで俺は冷たくないんだ?」
「それは原子の振動を調節してるんだよ」
「……うん。さっぱり分からん」
いや、理解できないなら聞くなよなぁ……。
「とりあえず、凄いってこと、だな!」
そう言いながら、近くの木に振りかぶる。すると、キーンと音を立てながら綺麗な切れ目がつき、水平移動するようにズレ落ちる。
「なぁ……? これ切れ味やばくないか……?」
「さすが、僕だね! 高周波で振動するようにしておいて正解だ。切れ目も綺麗だ」
僕は切れ目を触りながら言う。切れ目には氷の水晶が覆っている。これが理由で綺麗にズレ落ちたのだろう。
フフフ。この精霊武具にはさらなる成長があるんだよね。今後が楽しみだ。
「これはありがたいけど……危なくないか?」
「これは恭也、お前だから託すんだよ」
恭也は不安そうな顔で首を傾げる。
「これはこの世界では異端の技術かもしれない。だけど僕はこう思うんだ。
万物どんなものでも使い方次第ではとても危ない。しかし、使い方次第ではどんなものでも守れる最強の剣となる。
恭也、僕は君が正しい使い方をしてくれると信じて、これを渡すんだよ」
その言葉を聞いた恭也は瞳から涙を零す。
こんな恭也を見るのは初めてだ。いつも、ヘラヘラしている恭也だけど、心の底では辛かったのかもしれないな。
僕はカバンからタオルを取り出し、恭也に投げる。
「ほれ、これで涙を拭きな」
「陸。ありがとよ」
「おう」
地球にいた時、僕の心の支えは恭也だけだったからな……。こんな時ぐらい、力になってやりたい。
この日、僕と恭也の友情がより深まった気がするのであった。
ちなみに、木を切り倒したことはめちゃくちゃ怒られました。
読んでいただきありがとうございます!
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モチベアップに繋がって執筆が捗るです(*´ω`*)




