17話 科学と魔法の融合
城下町を楽しんだ後、僕は早速部屋に戻って来ていた。
それじゃあ、あれを作っていきますか。
『あら? 面白そうなことしてるじゃない?』
僕が素材を出していると【大賢者】とは違う声が頭に響く。
あ、お久しぶりです。ソフィア様。
『久しぶりね。ねぇ、今から何作ろうとしてるの?』
これは黒色火薬を作ろうとしてるんですよ。
黒色火薬とは、爆薬のことで花火とかに使われているものだ。これがあれば爆弾が作れる。
『ほう。貴方達の記憶で見たアニメで知ってるわよ! あの爆発するやつね!』
ソフィア様は興奮したように話す。
……もしかして、ここ最近アニメばっかり見てたんじゃないですか? だから、信託って言うか通信が……。
『そ、そんな訳ないじゃない! 私だって世界記憶の管理とか仕事が色々あるのよ!』
ものすごく同様してるじゃないですか……。まぁ、日本と言えばアニメですからね。
『そ、そんなことより早く作らなくていいの?』
あ、話を逸しましたね。まぁ、僕も早く作りたいですからまた後で。それと【大賢者】、魔力操作の手伝ってほしいんだけど。
『了解です』
ありがたい。
「[化学分解][原子操作]」
僕は岩塩に手をかざし、無反応で化学分解を行う魔法を発動させる。僕の魔法により、岩塩からカリウムを取り出す。この岩塩はカリ岩塩と言い、カリウムと塩素でできた水晶である。黒色火薬に使うのはカリウムなので残った土はそのまま捨て、塩素は魔法で操り瓶の中に入れ密閉する。
「[原子化合]」
次に魔法で空気中にある窒素と酸素を使い、カリウムを硝酸カリウムにする。
「ふぅ……終わったぁ」
僕はため息を溢しながら肩を下ろす。
この魔法は緻密な魔力操作が必要であり、とても集中力を使うのだ。1つでもミスしたら多分爆発するんじゃないかな?
『これで完成ではないのよね』
そうですね。後は混ぜるだけです。
「[原子操作]」
僕は硫黄や帰る途中で拾った木に手をかざし、原子を操る魔法を使う。そして、炭素と硫黄を取り出す。
次に炭素と硫黄、硝酸カリウムを混ぜて少し水分を含ませる。
「できたぁ!」
『へぇ、思ってたより光沢があるのね』
僕は慎重に瓶の中に入れる。静電気だけでも爆発する恐れがあるから気をつけないと。
ふぅ……。これで大丈夫。
『ねぇ? この火薬は一体どうするの?』
これは銃の火薬に使う予定です。強化プラスチックとかこの世界にないので、軽めのリボルバーでも作ろうかと。
『それなら、魔物の骨とか使ったら? 魔力を含んでいて強度もあると思うわよ』
なるほど、魔物の骨を強化プラスチックの代用にすると……。【大賢者】そんなことできる?
『この世界の世界記憶には強化プラスチックに関する情報がないためお答えできません』
あ〜。この世界にないものは分からないのか。
『安心して。叡智の女神ができると言ったのよ!』
それもそうですね。ソフィア様の事を信じます。それなら、構造的に簡単なコッキング式のスナイパーライフル辺りが作れるようになると思いますね。
僕はリボルバーを先に作ることにした。そもそも、僕は短剣で戦うので小型のハンドガンがとても合う。それに、魔物の骨を持ってない……。
僕は[無反応液化]と言う温度関係なく液化させる魔法と[原子操作]でリボルバーの形状を作る。ライフリングと言う弾丸にジャイロ回転を与え、まっすぐ飛ばすために必要な銃砲の内側に溝を作るのが大変だったが無事に作ることができた。
早速試し打ちと行きたいところだけど、今は夜だし、恭也へのプレゼントでも作るか。
僕は精霊の原石を見ながらそう考える。
『あら、珍しいものがあるじゃない。精霊の原石なんてなかなかお目にかかれないのよ』
へぇ〜。そうなんだ。そういえば、精霊の原石と魔石の違いってなんだろう?
『魔石は魔物の体内のオドが凝縮し、結晶化したものです。そのため、魔物から切り離すと魔力を一方的に放出します。しかし、精霊の原石は自然に溢れたマナが凝縮し、結晶化したもの。魔力を放出するだけでなく、マナを集めて蓄えることもできます』
『地球で言うリチウム電池とかのバッテリーね』
その例え、ものすごく分かりやすいです。そうなると放置しておくだけで魔力が補充されるから、半永久的に魔力供給できるってことですね。
『そういうことよ。それと精霊を傷つけずに加工できたら、精霊が生まれたときに原石を使用した武器や防具に宿ってくれることがあるわ。精霊剣とかが例ね』
なるほど……これはいいことを聞いた。元々、これでカバンを作る予定だったが変更だ。もっと素晴らしいものをプレゼントしよう!
この日、恭也にとってかけがえのない唯一無二の存在、魔王討伐を成すための一つのピースが誕生したのだった。
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