第9話
その後、サイガとその仲間1人に手伝って貰ってギルドの前まで気絶した冒険者を運ぶのを手伝って貰い、直ぐに2人は去っていった。
ヒイロ達はギルドの中へ入る。
「あ、ヒイロさん!」
「4人無事だぞ。外に2人寝かしてあるからどうにかしてやってくれ」
「分かりました!ちょっと待っててくださいね」
受付嬢は気絶した少年達を運んでもらう様に他の冒険者達に頼んでいた。
頼まれた人も嫌な顔1つ見せずに手伝う所を見るに、受付嬢の人望が高いのか、このギルドにいい人が多いのか測りきれないな。
(まぁ最初のあの街が特殊か)
1人自嘲気味に笑う・・・確かに最初のあの街のギルドの人間は少なくとも良い人間ではなかった、全員があんな感じではないだろうが・・・
「なんや可愛い娘やなぁ、せっせと働く女の子はええなぁ」
受付嬢を目で追いかけるゼロ。
と、そこで指示が終わったのかこっちにパタパタと駆け寄ってくる。
「すみません!お待たせしました!報酬の事を話してませんでしたよね.......」
口ごもる姿を見て、ある程度の事情を察したのか自分から報酬の事を話し出す。
「今回の1件、特に難しくもなかったからな....俺の店の宣伝してくれればそれでいい」
「お店?」
受付嬢に最近暇な時だけ店を開けているという事を伝え、それを知り合いとかに話してくれるだけでいいと伝える。
「ありがとうございます!今度私も行きますね!」
笑顔で答えてくれるし、これで少しは店に来る人も増えるといいんだがな・・・
「なんやお前...自分の店持ってたんか?」
「暇な時だけだがな、当然ながらお前にも手伝ってもらうぞ」
間で口を挟んできたゼロと会話していると、受付嬢が困惑したような顔をして見てきた。
「えっと....さっきから気になってたんですけど、ここらじゃあまり見ないですけど、どなたですか?」
「ワイはゼロや。ちょっとコイツんとこで世話んなるからよろしくな!」
肩を組みながら答えていくゼロ。
「あぁコイツも冒険者登録するから手続きを頼む」
「はぁ、分かりました」
こうしてゼロの冒険者登録をしてから家へと帰る・・・もちろんゼロはFランクからのスタートだった。
それから数日間もの間俺は店を開け続ける羽目になった。
その理由は明らかなのだが・・・外に目を向けると、そこではゼロが人を呼び込みしているのが見える。
「お!そこの嬢ちゃん1人?暇やったらこの店でお茶でもしていかへんか?」
「甘い物は高いですから…」
「ここはそんなことあらへんて、安いしくつろげるから試しに入って見てみてや」
「う〜ん、そこまで言うなら行ってみようかな」
「まいど!ヒイロ〜また1人入るで〜」
これでまた客が増えた。
しかも女性客・・・この店は女性達の憩いの場になりつつあった。
店内にいるのは全て女性客しかいない、一応男性客も誘ってはいるみたいだが中々入ってこないのだ。
「まぁ店内を見て、女性しかいなかったら入りづらいよな.......それにしても、ここまで忙しくなるとは思わなかった」
あの受付嬢が色々宣伝してくれたおかげなのか、それともゼロの客引きのおかげか.......両方かな。
「あ〜疲れたわぁ」
「本当にな.......」
そんなこんなで客を全員捌いた頃には、既に外は暗くなっている頃だった。
「まさかこんな看板も掲げてない、開いてるか開いてないかしか分からん様な店にここまで客が来るとはな」
「それが逆にええんちゃう?やかましい奴はけぇへんし、のんびり出来るんやろ」
2人揃って椅子に体を預けながらのんびりと話し合う、これが店終わりの日課みたいになっていた。
「明日からはギルドで依頼でも受けるか」
「せやなぁ、たまには暴れたいわ」
そして、次の日からはCランクの依頼を2人でこなしながら過ごしていると、いつの間にやらBランクへと上がった。
「Bランクおめでとうございます!これからも頑張って下さいね!」
ゼロはEランクに上がったが、特にランクに関しては何も感じていない様子だ。
目に見える称号に興味がないのだろう。
「Bランクに上がったという事で1つ依頼があるんですけど…」
「なんの依頼だ?」
この受付嬢が言葉を濁す時は碌でもない依頼の可能性が高いことは学んでいる。
それでも一応聞くだけは聞いておこう。
「今この街の領主と話し合いをしているゴールド子爵が自分の街へ戻る為の護衛を集めてるんですよ」
「断る」
「最後まで聞いてくださいよ〜」
聞くまでもなかった、知らない貴族相手の依頼を受けるつもりはないのだ。
「一応最後まで聞いたれよヒイロ」
「ゼロさんもこう言ってることですし話しますよ。この依頼受ける人が全くいてなくて困ってるんですよ.......」
そう言って依頼の詳細を書いた紙を見える場所に置く受付嬢。
「ん〜なになに.......」
ゼロが手に取り、それを読んでいくが・・・
「場所は雑木林の道を進んだ先の街やな。最低Bランク冒険者、道中の食事は自分で用意、報酬は銀貨3枚、そりゃ誰も受けへんわ…むしろよくここまで護衛してくれる奴がおったな」
そんな内容で受けるわけがない、受けるだけで大赤字だ。
「こっちに来る時も冒険者に無理矢理護衛させたらしいですね.......」
「クソ貴族やな」
「ますます受ける気が無くなる情報だな」
俺もゼロも同意見のようだ、貴族なんぞ選ぶるだけの能無しが多すぎるからな、関わらんのが1番だ。
「そんなこと言わないで受けて下さいよ〜.......もうヒイロさんくらいしか受けてくれそうな人がいないんですよ〜」
「悪いが断る」
そんなやり取りをしてる内に、1人の男性がギルドの中へと入って来たのだった・・・