第7話 ギルドマスター
少し短めかな〜
「話ってなんだ?」
あの後、人が多い場所でする話ではないと、ギルドマスターの部屋へと連れてこられた。
「まぁそう慌てないの....飲み物はお茶でいいかしら」
ルウシェのお茶を用意する手つきは慣れているもので、あっという間に二人分の飲み物が用意されていく。
「はい、どうぞ」
用意されたお茶を一口含むと、それが何かがわかる。
「緑茶か....美味いな」
「そう言ってくれて嬉しいわ。緑茶ってあまり若い子には人気ないのよね.......」
少しの間お茶を楽しむが、ここにはお茶を飲むために来たわけではない。
落ち着いた所でルウシェから話が切り出される。
「貴方相当強いわよね?冒険者になるまでは何してたの?」
「企業秘密だ」
「まぁ教えてくれないわよね〜....どうしたら教えてくれる?」
「何をされたとても自分の事を喋るつもりはない」
淡々と事務的に答えるヒイロ。
別段探られて痛い腹の中ではないが、ただ説明がめんどくさいのだ。
「もし俺に関することが聞きたいならジェイド、この街の領主にでも聞くといい」
「何か関係があるのかしら?」
この件に関してはもう何も答えるつもりはないのか、黙々と緑茶を楽しんでいる。
それを見てこれ以上は無駄だと思ったルウシェは話題を変えてきた。
「なら後で領主様に聞くことにしましょうか。それと貴方の強さでGランクは他のランクの冒険者にとって迷惑なのよ、だからCランクまで一気にランクアップね」
「分かった。それはこちらとしても助かる」
Cランクにまで上がったことで、報酬の高い依頼を受ける事ができる。
ランクが上がると言う事は、その内容も難しくなり命の危険も高くなってくる。
その分報酬は美味い。
「雑用なんかはめんどくさいものね.......それとも他に目的があってランク上げたかったとか?」
ルウシェはこの街のギルドマスターとしてヒイロを疑っているのだろう、いきなり現れて物凄く強い青年で、素性が全く分からない、疑うのも無理はないと思う。
ランク上げに関しても隠す必要はないのだが、しっかりとした説明をする気がなかった。
「少し纏まったお金が必要でな、高ランクの依頼の方が割がいいからだ」
としか答えない。
おそらくここで理由を聞いても答えないと悟ったルウシェは、諦めたようにため息をついて締めくくった。
「はぁ....それじゃぁしっかりと依頼をこなしてね」
帰り際にCランクのカードを受け取ってから、何も無い家へと帰ったのだった。
それから数日間はCランクの依頼を色々とこなし、ある程度の纏まったお金を手に入れる事に成功したが、目標額までは後少し足りないといったところだ。
ある日ギルドに顔を出すと、いつもの受付嬢に呼び止められてしまう。
「ヒイロさん!盗賊団を討伐したんですか!?ギルドマスターが言ってましたよ!」
「ん?盗賊団?」
少し考え込むが、そんな盗賊に襲われた記憶もないし、依頼を受けた記憶もなかった.......
だがその後の受付嬢の発言でなんの事か思い出す。
「領主様を助けたって話の時の盗賊ですよ!ギルドマスターが領主様に聞いたらしいんですよ」
「あぁ、そういえば5人程殺ったな」
あの時領主の娘に乱暴をしようとしていた賊の事を思い出した。
「流石ですね〜賞金がかかっていたのでそれをお渡しします!」
相当悪さをしていた奴らなのか、賞金として金貨10枚を報酬として貰う。
「それで何か依頼受けていきますか?」
「いや...今日は止めておこう、やりたい事ができたからな」
臨時収入で目標額が貯まったヒイロは、足早にギルドから出ると様々な店に足を運ぶ。
鍛冶屋、家具屋、花屋、八百屋等、色んな店で買い物をし家に届けて貰う。
全ての買い物が終わり家に戻ったら、次は届けられた荷物の整理をやり始める。
全ての作業が終わって、家の入口から中を見渡してみる。
「うむ、いい出来だ」
何も無かった1階が、素敵な店の様相を成しているではないか。
入口近くには綺麗な花が添えられ、中に入ると木でできたテーブルと椅子が並べられてくつろげるスペースが出来ていた。
「これで後は暇な時に店を開ける事ができるな」
冒険者とは別に、ちょっとした休憩できる店をやって行こうと考えているのだ。
街を見て回っていると、あまり甘味処がなかったという理由で、自分の作れる甘味を作って売ろうって魂胆だ。
「今までやってきた事と違う事をしたいしな」
それに甘味だけではなく、簡単に作れる料理もだそうと考えてる、メニュー表にはそれらの名前も載っている。
店の開店時間も、自分が冒険者としての依頼をしない時だけの開店にするつもりだ。
「とりあえず明日は試験的にやってみるか、客が来なくても冒険者としての依頼をこなせば食いっぱぐれる事は無いんだしな.......」
色々と考えながら眠りに落ちた。