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1-6 登録

家を貰い執事と別れた後、冒険者登録をサクッと行い冒険者となった。

1つ前の街で起こった出来事のような事は無く、スムーズに事が運び、晴れてGランク冒険者となった。


最低がGで最高がSランク、Gランクはお試し期間という事で、一定期間内にFランクに上がれなければギルド除名となって半年間は再登録出来ない仕様だ。

Fランクから本格的に冒険者として行動する事になるが、それまでは雑用がメインとなっている。


本来ヒイロのような年齢で初めて冒険者登録するというのは珍しいらしく、10代で登録する人が多いみたいだ。

そして20歳とかで登録する人は、仲間がいたり戦闘の経験があったりでGランク免除のFランクスタートになる事が多いんだそうだ。


戦闘は問題なく出来るのだが、それを全面に推し出すつもりは全くないみたいだ。

受付嬢もその点に関しては何も突っ込んでこなかった、それは登録する時に武器を持たず丸腰だったのもあるかもしれないが・・・

「まぁのんびりやっていけばいいか」

ヒイロ自身はその位にしか考えていないのだ。


そんなGランク初依頼は'街のドブさらい'という仕事だった。

the雑用といったこの仕事、だが誰かがやらなければ臭いや害虫発生の元となってしまう大事な仕事だ。


嬉嬉としてやる訳ではないが、仕方ないと割り切って黙々と街中を掃除していく。

仕事中、若い冒険者に指を刺されながら嘲笑われたりもしたが、それら全てを無視し続けてドブさらいを終わらせた。


「お疲れ様です!まさかこんなに早く終わらせてくれるとは思ってませんでしたよ〜確認した役人の人もここまで綺麗にしてくれたのは初めてだって感謝してました!」

依頼人に報告し、ギルドに最終報告をすると受付嬢に驚かれる事になった。


「この程度は普通だろう。受けた仕事はしっかりこなさないとやる意味がない」

なんて事ないように言うが、'ドブさらい'なんて雑用を真面目にやる冒険者なんてのは、それこそ絶滅危惧種なのだ。

「汚い臭い安い!!で有名な依頼ですからね、ヒイロさんみたいなのは貴重なんですよ〜」


世間話を交わしながら依頼完了の報酬を受け取るが、報酬は微々たるもので誰も受けたがらないのも分かる。

「俺もランクが上がればわざわざ受ける事は無くなりそうだがな」

「そんな〜たまにで良いから受けて下さいよ〜....はっ!?私がヒイロさんのランクを上がらないように調整すれば.......ははは、嫌だなぁ冗談に決まってるじゃないですか、そんな怖い顔しないで下さいよ.......」


(怖い顔をしたつもりはないんだがな.......)

あまり感情が表に出ないから怖がられているヒイロだった。

「それで次はどんな依頼受けますか?今受けれるのだと'孤児院の手伝い'とかですね」

「じゃぁそれを受け「ドブさらいの次はガキの子守りかよ!」よう」


横からドブさらい中にも聞いた事のある声が聞こえてくる・・・

「んな年で冒険者になっても無駄だぜおっさん、田舎に帰って畑でも耕してろ!」

「ワード君!ヒイロさんはまだ20歳だからおっさんじゃないわ!」


突っ込む所はそこなのか?

おそらく今ギルド内のまともな冒険者の心の中は一致した事だろう。

「それじゃぁ孤児院に行くから、依頼の処理を頼む」


我関せずといった様子でギルドから出ようとするが、それは許されなかった。

出入口の前に立つワードと呼ばれた男。

「待てよ!無視するなんざ先輩冒険者に対して礼儀がなってねぇなぁ?」

「どけ」

「んだとてめぇ、舐めてんのか?俺はDランク冒険者だぞ。Gランクのお前は先輩である俺の言うことを聞けや!」


言ってる事が無茶苦茶なワード。

「ワード君は16歳でDランクまで上り詰めた剣の使い手なの。自分より下だと思った人間には高圧的な態度を取るのが悪い癖だけどね」

受付嬢の説明のおかげでこの男がどういう人種かを理解する。


「どけと言っている、言葉が分からんのか?」

「あ?」

出入口で睨み合う2人の冒険者。

今にも一触即発な空気が周囲に漂い出す・・・

「地面に額を擦り付けて泣いて謝れば今ならまだ許してやるぜ.......?」

ぷるぷると身体を震わせ、拳に力を入れ、青筋を浮かべながら話してくるが、それを素直に受け取って謝るつもりはない。


「なんだ?震えてるぞ、Gランクの俺が怖いのか?」

ぶちっ・・・

何かが切れる音がした瞬間、ワードがヒイロに殴りかかっていた。

それでも剣を抜いていないだけまだマシなのかもしれない。


「ふざけんなカスが!謝ってももう遅せぇぞ!!」

顔面に向かって右拳が迫るが、如何せん遅すぎるそのパンチを喰らうはずがなかった。

バシッ!

「なんだと!?ぐあぁぁぁ......」


パンチを受け止め力を込めていくと、ワードがうめき声を上げながらその場に膝を着いた。

「離せ!」

「利き腕を握り潰したらどうなるかな」

拳を受け止めた手に更に力を込めていく、ワードの右拳からメキメキメキっと嫌な音が周囲に広がる。


「あぁぁぁ!!やめ、やめてくれ!痛い痛いいたい!!」

「.......」

無言で手を離すと、ワードは掴まれていた腕を隠すように蹲った。

それを一瞥してギルドを後にし、孤児院へと向かう。

ヒイロが去ったギルド内はいつも通りの騒がしさを見せるが、ワードだけは扉を睨み付けているのだった。


そして1人孤児院へと向かったヒイロ、ドブさらいをしたお陰か街の概要もある程度は分かってるようで、迷うことなく孤児院に着くことができた。


そこで子供達の世話をシスターの代わりに行う事で依頼を完了させる。

やはりこういった雑用みたいな依頼を受けてくれる物好きは少ないそうだが、ドブさらいとは違って子供が好きな冒険者が受けてくれる事もあるんだそうだ。


孤児院からの帰り道、周囲も大分暗くなってきた道を1人歩く。

だがその表情は優れない・・・というよりも不愉快な表情をしている。

「バレバレだな....隠密行動は向いてないぞ」


闇の中へ一声かけると、バレているなら仕方ないと誰かが姿を現す。

「剣を使ったら俺の方が強いに決まってる!昼間は恥かかせやがって.......」

怒りと憎しみに染まったワードがヒイロに向けて剣を向ける。


「叩きのめしてやるよ!」

次の瞬間にはヒイロ目掛けて剣を振るってくる、だが何もかもが劣ってる以上ワードに勝てる要素はない。


バシッ!

「素手で!?」

「なまくらだな」

振り下ろされる剣を片手で受け止め、驚いた不意をついて首を絞めて気絶させる。

そのまま首に根っこを掴んでギルドへと連れていく。

剣を受け止めた手にはワイヤーが張っており、そのワイヤーで防ぐ事で素手で防いだと錯覚させて隙を作ったのだ。


「依頼終わったぞ」

ギルドに到着し、受付嬢の元へ近づく・・・ワードを引き摺りながら。

「はぁ、それはいいんですけど....そのワード君はどうしたんです?」

「襲ってきたから返り討ちにした。殺してはいない、気絶してるだけだ」


その言葉を聞いた受付嬢や周囲の冒険者達は驚いたり、慌てたりしている。

「ちょっと待っててくださいね!」

受付嬢は奥へ走り去っていき、ヒイロが1人周囲の視線にさらされる。

だがそんなものに反応する訳もなく、ワードを適当に放り捨てて戻って来るまでジッと待っていた。


やがて奥から受付嬢と耳の長い色白の女性が歩いてきた。

「お待たせしました!この方がこの街のギルドマスターであるルウシェ様です」

「初めましてヒイロ君、早速だけど色々話があるの」

いきなり何の話があるというのだろうか?それを聞いて少し身構えるのだった。

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