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1-4 賊

俺は入口に張り付き中の様子を伺う。

中には4人の男が1人の少女を囲むようにして立っていた。

少女が舌を噛まないように何かを噛まされ、腕は上からロープで縛られている状態で身動きが取れないようだ。


「んーー!んーーー!!」

「騒いだって無駄だぜお嬢ちゃん。お嬢ちゃんの身体をこれから俺らで楽しませて貰った後で奴隷商に売り飛ばさせて貰うからよ」

周りの男達の下卑た視線や声に少女は体を強ばらせ、それを見た男達は余計に面白がっていく。


「まずは嬢ちゃんのその綺麗な衣服を剥かしてもらうぜぇっへっへへ」

「んーーー!」

ナイフを片手に少女へと近寄っていく男、それを嫌がる様に身をよじるが、両腕を上げた状態で縛られているから逃げる事は出来ない。


(あまり猶予はないな)

4方向に敵がいてる以上ゆっくりと気付かれずに入る事は出来ないと考えたヒイロは、1つの行動に出る。

その行動とは・・・


バキャ!!

「がっ!?」

「死ね」

扉を思い切り蹴り飛ばし、手前にいる男にぶつけて怯ませる。

その後少女の両横に立っていた男に向け、左右片手ずつ魔力ワイヤーを飛ばし、2人の男の首を跳ね飛ばす。

頭を失い首だけになった体は血を吹き出しその場に倒れる。


「ひいぃぃぃ!!」

その光景を目の当たりにした1人は腰を抜かし、尻もちを着いた所を同じように殺した。

この時、空いた片方の手で器用にある仕掛けを施した。

「っ痛ぅ、なんだってん....な...ど、どうなってやがる!」

扉をぶつけられた男が起き上がり、血溜まりとなった部屋を見て絶句する。

もうこの男以外は頭と胴体が離れているのだから、驚くのも無理はないだろう。


「後はお前だけだ」

「て、テメェがやりやがったのか!見張りはどうした!」

「殺した」

「ちっ...この卑怯者がぁ.......!!」

恨みのや憎しみのこもった目でヒイロを睨みつけるが、それはお門違いというものだ。

「カスと長々とお喋りに付き合うつもりはない」

「な!?この俺様をカスだとぉ!?死にさらせぇ!!」


男が怒りに任せて斧を持ち斬りかかってくる、だが・・・

「もう終わってんだよ」

ヒイロに向けて突っ込んだ瞬間の出来事だった。

男の首が胴体から離れ、血を噴き出してその場に倒れ落ちる。


ヒイロの一方的な殺しが終わり、その場に残ったのは4人の死体だった。

「さて、後は.......」

「!?んーー!」

少女の方を振り向くと、殺されると思ったのか激しく暴れようとする。

「落ち着け。俺は一応お前を助けに来たんだ」

宥めながら腕のロープを切り、口に噛ましてる物を外してやった。


「はぁはぁ、私を助けに.......?」

「あぁ馬車が倒れていてな、そこで生き残ってる人に頼まれたんだ」

縛られた姿から解放した為か、少し警戒を解いた少女にここまでの経緯を話す。


「お父様!お父様はまだ生きているの!?」

案の定あの生き残りはこの少女の父親だったみたいだ。

「応急処置はしておいた、素早く医者に見せれば助かるかもしれないな」

「なら早く行かないと!.......あ」

小屋から出て行こうと歩こうとするが、上手く足が動かないようで、足がぷるぷると震えていた。


「仕方ない.......しっかり捕まってろ」

「え?きゃ!」

少女をお姫様抱っこで抱き抱え、ヒイロは馬車が倒れてる場所に向けて走り出した。

「あ、ありがとう」

「あまり喋らない方がいい、舌を噛むぞ」

人を1人抱えているにも関わらず、物凄いスピードで雑木林を駆け抜ける。


そこまで時間がかからずに馬車の元まで帰ることができた。

ここに倒れていた男は、馬車にもたれかかる様にして休んでいる。

「お父様!!」

少女がヒイロの胸から離れ、お父様と呼ぶ男の元へと駆け寄っていく。

「お、おぉ無事だったかエリザ」

「お父様もよくご無事で.......!」


少しの間でも離れ離れとなった親子の感動の再会といったところだな、泣きながら抱き合っている2人。

父親と再会でき気が緩んだのか、少女は父親の胸の中ですやすやと寝息を立て始めた。


「娘と私を助けて貰って感謝するよ」

「気にするな、それよりもアンタも浅い傷じゃないはずだ。早く医者に見てもらったほうがいい」

娘が眠り一息ついたのか、男性が声をかけてくる。

「気にしない訳にはいかないよ。これでも私は王国の貴族なんだ、恩人に何の恩も返さないのは教えに反する。怪我に関してもこの先に街があるんだよ、そこまで護衛をお願いしたい」


この男性はその街で恩返しをしたいという訳だ。

ここからの護衛料も兼ねて、手負いの状態で娘を守りながら街までは危険だと判断したのだろう。

実際こうやってずっと喋り続けるのも辛そうに喋っている、傍目から見ても気付き辛いが注意深く見てるとよく分かる。


「とりあえず街に着いてから話をしよう」

「ありがとう、助かるよ。馬車は使い物にならないから歩いて行くしかないね。けどここからならそう遠くないはず.......」

荒い息を吐きながら喋る貴族の男性。

それを見た俺は、長時間歩かせるのは不味いと思い、馬車の破損具合をチェックしていく。


「中は問題ない、タイヤ部分が破損してるが....これなら魔力で補強すればなんとかなるな」

「な、なにをする気だ?」

ぶつぶつと言いながら馬と荷台を離し、タイヤを魔力で補強していくヒイロ。


「これに乗れ、俺が街まで引っ張って行く」

「そんな事出来るわけがっ...」

痛みに蹲る男性。

「そんな状態で長時間歩ける訳がないだろう。いいから乗るんだ」

ヒイロの言葉によろよろと荷台に乗り込んで行く。

乗り込んだのを確認し、ヒイロは極力振動が起きないように走り始める。


その速さは馬にも引けを取らないスピードで走り、むしろ振動が少ない分馬よりも余程快適な馬車の旅だろう。

馬車ならぬヒイロ車は休むこと無く走り続け、あっという間に街まで辿り着いたのであった。

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