1-1 転移
これはプロローグみたいなものなので、今回は短めです。
次回からはこれより1話が長く書いております!
目の前の扉が乱暴に開かれる。
いや、開かれるではなく・・・壊されたと言った方が正しいだろう。
部屋を外と隔離するただ一つの扉の残骸が無惨にも転がっているからだ。
この部屋には窓はない、外の景色を見ることもできず、出入りするのはこの扉からしか出来ない様になっている。
「ようやく見つけたぞ!」
壊れた扉を踏みつけながら部屋に入ってくる男性、息を切らし肩を揺らしながら部屋の中心で座っている青年の元へと歩いていく。
「・・・・・・」
青年は燃えるような髪と燃えるような紅い瞳を男へと向けている。
その瞳からは何も読み取れない、男の事を何とも思っていない無機質な瞳だ。
「この悪魔め、俺がここまで来た以上お前はお終いだ」
男は懐から巻物を取り出す。
「これでお前をこの世界から消してやるよ!」
そう言って巻物の封を解いていく男。
その間にも全く身動きしない青年、この青年は一体何をやって悪魔と呼ばれるようになってしまったのか。
「そんな無表情でいてもビビってんだろ!?俺の仲間を皆殺しにしやがって.......これで仇を討つんだ!」
その言葉に初めて青年が反応を示す。
「そうか、お前はアイツらの生き残りか.......」
それでも口以外は動かさず、声を発しただけだった。
男の持つ巻物に何の脅威も感じていないような感じだ。
「そうだ!皆良い奴だったのに.......それをお前がッ!!」
その先の言葉を男が紡ぐ事はなかった・・・
「良い奴だったのは仲間内だけだろ?」
青年の姿が男の後ろに移動しており、男の頭が地面に落ち、頭の無くなった首からは赤い鮮血が部屋に飛び散り地面に倒れ伏してしまった。
部屋には血の匂いが広がっていく・・・
すると、男の手から離れた巻物が光を発し青年を包み込む。
ギリギリの所で巻物の封を解く事が出来ていたようだ。
青年を包む眩い光が数秒間続き、その光が消えた時、その場所に青年の姿はなかった。
青年のいなくなった部屋に取り残されたのは、壊れた扉、頭と胴体の離れた死体、そして部屋に充満している血の匂いだけだった。