表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能を追放して全てを奪われた元勇者  作者: チョコクリーム
1部・無能を追放して全てを奪われた元勇者〜そして彼は思い出す〜
8/10

8.過去の記憶<罪>

 いつの間にか広場に戻っていた。

 不思議と今ならなんでも出来る気がした。これが精霊の力?

 雰囲気が全然違う僕に違和感を感じたのか誰もが僕を見て後ずさった。

「お、お前!なんで()()()()()()()()()()!?」

 名前も知らない誰かに言われて気付く。

 自分の体から火が出ていることに。

 そして、僕が笑っていることに。

 僕はゆっくり村のやつらの方に歩く。

 僕の火は熱いらしく、1歩、また1歩と近づく度にやつらの顔から汗が吹き出す。

 僕は精霊のおかげで熱さを感じないようになっている。


「こっちに来んじゃねぇ化け物が!やっぱり産まれた時に殺すべきだった!国のくだらない規則のせいで!()()()()が!俺らに近付くな!」

 必死で叫ぶその姿はむしろ笑える。朝は暴力を当たり前のように振るっていたのに。

 なんでこんな親から産まれたんだろう。……この村じゃどこも同じか。

 いや、あの人が親だったなら……。やめよう。彼女が苦しむだけだ。きっと僕を守ろうとして傷付く。そんな姿は見たくない。


「や、やめろ!お前は俺のガキだろうが!ガキが親を殺していいと思ってんのか!や、やめ……」

 なんの感慨もなく殺せた。憎い親を殺せた嬉しさも、親を殺した悲しさも、初めて人を殺めたというのに何も無い。

『殺せ…』

 精霊の声が聞こえる。気の所為かもしれないが、その声に背中を押されて作業のように人を殺した。

 そのまま子供も殺そうとして手が止まる。

 僕は何をしていた…?後ろを振り返ると燃やされて灰になったものだけがあった。

 もう、ここには僕とこの子供しか残っていない。

 僕に関係ない国の人も、僕に優しくしてくれた彼女も、僕が殺してしまった。

 それは防げることだった。殺す相手をちゃんと見ていたら、こんなことには。


「あ、あぁ……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」

『ふむ、1匹残ってるが…()()に支障はないか。よし、これで条件は達成だ、喜べ少年。君は誰にも負けない力を手に入れた』

 そんなの今はどうだっていい!彼女を、生き返らせることはできないのか!誰にも負けない力なんだからそのくらいできるだろ!

『できない。力は、自分を邪魔する者を倒すためにある。誰かを救うためのものでは無い。めんどくさいし早く始めよう。あの子供を殺したくなければ頑張って制御することだ』


 突然僕の体から出ていた火が激しく燃え上がった。このまま火が大きくなれば、あの子供を殺してしまう。

 それだけは、ダメだ。せめてあの子だけでも。

 火を抑えようとする僕の意志とは逆に火は大きくなり続ける。

 もう、抑えることが出来ない。

 僕の体から広がった火が視界を覆い、何も見えなくなる。


 視界を遮っていた火が消え、周りが見えるようになる。

 そこには村の面影が何も無かった。火で燃やされ、家も木も川も全部消えていた。

『やはり、制御出来なかったか。元から期待などしていないからどうでもいいが。さっさと神殿に行って終わらせるぞ』

 僕は精霊の言う事に従って動くといつの間にか神殿の目の前にいた。

 地下なのに明るく、どこに明かりがあるのかと探すと神殿自体が光っていることに気付く。

 神殿は光っているせいかどんな形なのかよく分からなくなっている。

 その場で立ち止まっていると、白い光が精霊界の火のような形になっていく。


『準備は整った。本契約をしてしまおう。…あぁ、本契約について知らないのか。軽く説明するぞ。今までの契約は仮契約といって、精霊の力を使う時に半分も無駄に消費するよう調整されておる。本契約をすると、精霊の力を使う時に無駄な消費が少なくなるのじゃ。理解出来たか?理解出来たなら我に祈りを捧げよ』


 どういう風に祈れば良いのか分からなかったから立ったまま火を見つめる。

 火がゆらゆらと揺れ目が吸い込まれていく。そして、有り得ない光景を目にした。

『貴方は自分の為に生きなさい。貴方は悪魔の子なんかじゃない、人間よ。貴方は今まで自分の為に生きる人間に奪われてきた。だからこれからは貴方が自分の為に人から奪いなさい。急に自分の為に生きろなんて言われても難しいと思うけど頑張って。貴方ならきっとできるわ』


 火で殺してしまったはずの彼女が僕に一方的に話す。言いたいことだけ言った後フッと消えていった。

 自分の為に生きる、か。急に言われてもどうすれば分からない。

 でも、僕は()()()()()()()をよく知っている。

 まずは、口調から変えていこう。これからは僕じゃない、俺だ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

用語解説

契約・・・人間が精霊の力を借りる為に精霊と交わすもの。精霊は契約を結ぶ際、必ず条件を付けてくる。条件の内容は精霊によって違う。どの精霊も同時に2人以上と契約を結ぶことは出来ない。ただし、契約者が死んだ場合は新たに結ぶことが可能。

仮契約・・・契約を結んでいる人間の大体がこれ。精霊の力を使う際に90パーセント無駄に消費してしまう。

準英精霊なら80パーセント、英精霊なら70パーセント、と精霊の強さで無駄に消費する量が違う。

本契約・・・英精霊しか結べない。無駄に消費する量が50パーセントになる。その分精霊の負担も増えるから精霊は本契約をしたがらない。


良ければ評価、感想をお願いします!誤字を見つけたら誤字報告もお願いします!(欲張り)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ