7.過去の記憶<恨み>
恋愛小説は罪だ……。人から時間を奪い、涙を奪い、尊さを見せつけてくる。
はい、反省してます。恋愛小説にハマって一気に読んでました。
詫びと言ってはなんですが、土日は投稿を確約……確約……50%ぐらいの確率で投稿します。多分。
ガッタン!ケツが痛い。俺の隣にいる王女様も今まで乗ったことがないのか非常に辛そうにしていた。
俺は一文無しだ。だから、この馬車に乗る金も、必要な食料も、全部彼女が払った。
俺は今、最低なヒモ野郎だ。実際御者にもそんな感じで見られていると思う。
馬車の料金を全部彼女が払う時、俺の事を軽蔑した目で見ていた。
すっごい辛い。世界中の人を救う前に王女様に恩返ししなきゃだな。そうしないと男として終わる。
現実逃避をしようと今向かっている場所のことを考える。
今は人が居ない村の残骸のような場所。それが俺の故郷だ。
何にもない俺の故郷だが、一つだけ誰にも知らない秘密の場所がある。
確か地下に《火》の神殿があったはずだ。
【火】の英精霊に教えて貰ってようやく行けるようなかなり面倒臭い場所だった。
正直記憶がうろ覚えだが何とかなる、はず。
うん、不安だ。
仕方ない、出来るだけしたくなかったが、過去を思い出すしかないか。あの悪夢のような記憶を。
〜過去の記憶〜
「何呑気に寝てやがる!オラッ、起きろ!はぁ……あー殺してぇ」
「ちょっと。さすがに殺すと不味わいよ。精人するまでは殺すなって国に言われてるんだから。だからってこんなやつまで生かしとく必要ないと思うけど。……何よ、その目は!何か文句でもあるの?言ってみなさいよ!」
誰にもバレないよう服があるところだけを殴られる。まともに栄養も取れていない体は耐えられず、うつ伏せになって倒れてしまう。
吐き気がする。でも吐いたら殴られる。痛いのは嫌だ。涙が溢れ出てくる。
「あ?お前泣いてんの?アハッ、ちょっと殴っただけでしょう?相変わらず弱いわね。フフ。もっと苦しみなさい。お前のせいで、お前なんかが生まれたせいで私達の生活が苦しくなってるのよ!お前はもっと苦しみなさい!」
私達の中に僕は入っていない。それが当たり前。僕は悪魔の子だからしょうがない。それがこいつらにとって当たり前だから。
僕はこいつらにとって邪魔な存在らしい。そして多分、今日僕は殺される。精人すれば殺してもいいんだって。
それまでこいつらを苦しませてやる。僕が苦しいなら、こいつらももっと苦しむべきだ。
「おい、そろそろだ。イジるのも程々にしとけ。去年だって、疑われてただろうが。こんなやつでも国の連中がいる間は人として扱わなきゃいけねぇんだぞ。ったく、めんどくせぇ」
「分かったわよ。最後に1発だけね。オラッ!」
背中を思い切り踏まれて、声が出そうになる。声を出すな、出してはいけない。
コイツらに声が戻ったことをバレてはいけない。
もしバレてしまったら、疑問に思われる。もしかしたら、彼女が疑われてしまうかもしれない。
それはダメだ。死にかけていた僕を助けてくれた彼女に迷惑をかけたくない。
早く、逃げたい。
〜精人式〜
村の中心にある広場。
いつもは人気がないが、今日は精人式だからか全員集まっている。
僕を見に来たという訳ではなく、もう1人の青い髪をした子供を見に来たのだろう。
確かあの子は村中の人から愛されていた。彼女がかわいいからだろうか。
だが、彼女はよく愛想笑いをする。心から笑っているのを見たのは数回しかない。
村のヤツらは馬鹿だから気付いてないみたいだけど。
国から来た人は僕たちとは比べられないほど良い服を着ている。妬ましい……。
準備が終わったのか僕たちに近付いてくる。
「今年は、2人ですね。では前にいる子からどうぞー」
「よろしく、お願いします」
「はーい、落ち着いてー。痛くないからねー。じゃあ精霊界に繋ぐからゆっくり話してきてね。いってらっしゃーい」
国の人が、目の前にいる子供の頭を軽くトンッと叩いた。
精人式について何も知らないからなんの意味があるのかさっぱり分からない。
どうしようと考えていると違和感に気付く。
何も起こっていないのだ。
「はい、無事精霊との契約出来たみたいだねー。次の子ー。前へどうぞー」
「……」
「喋らないのかな?精霊界では頑張って話してねー。はい、精霊界へいってらっしゃーい」
え?いつの間にか知らない場所にいる。ここが霊界?なんか綺麗だなぁ。
明るいのに月や星が見える。下を見ると燃えていた。
燃えてる!?どうしようどうしよう…あれ、熱くない。
霊界って不思議な場所だなぁ。
ってそうじゃなくて!何が起こったんだ?
『おい』
ん?今燃えてる所から声がしたような…。
『おい、無視するな。我は火の精霊であるぞ。人間には【火】の英精霊などと呼ばれている我が声をかけてやっているのだから平伏し感謝せよ』
気のせいじゃない!?よく分からないけど偉い精霊なのかな?
『あぁ、話せんのか。別に我ほどの精霊になれば話さなくとも通じる。話を聞け。お主と契約してやろう。条件付きでな』
契約…?よく分からないけどこの精霊と契約すればいいのかな?
『そう、契約じゃ。お主はここには長く居られないから手短に話すぞ。契約とは精霊が人間に条件を出し、それが出来る者に精霊の力を貸すことを約束するものじゃ。この約束は精霊であろうと絶対に破ることは出来ない。条件は精霊によって違うが、我のは簡単じゃ』
少し間を置いてから精霊は言った。
『殺せ。あの無知な恩知らず共を殺せ。我の力を貸せばその程度簡単じゃろう。あやつらを殺すなら、我はお主と契約を結ぼう。どうじゃ、悪い話ではあるまい?』
殺せ…?無知な恩知らず共って誰のこと?
『お主の村に沢山いるじゃろう。お主の赤い髪を見て悪魔の子だと言っておるやつらが。そやつら全員を殺せ。お主だって殺したいじゃろう?自分を不当に扱ってきたあやつらが憎いじゃろう?』
僕はその異様な雰囲気に気圧される。
憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。本当に殺せるならどれほど嬉しいことだろう。
手を差し出すように伸びた火を凝視する。
…これが精霊?火を見つめていると僕を急かすように激しく燃えたので急いで火に手を触れた――――――――
用語解説
神殿・・・精霊が自分で建てた物。精霊パワーで絶対に傷付かない。精霊全部が建てれる訳じゃなく、準英精霊ぐらいないと厳しい。
精人・・・12歳になった(なる)年に精霊と契約を結ぶこと。国の規則で精人するまでは子供を生かす責任がある。子供を死なせてしまった親は国に年中狙われるようになる。
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