3.侵食する異常
土日は2話投稿しようと思っていた時期が私にもありました。明日は1話投稿かな?平日は毎日投稿すら出来ない。これがプロット無しのその場投稿の辛さか…
〜組合にて〜
1週間賭け麻雀やカジノを楽しんだフミダーイは今、混乱していた。早ければ今日に豚が入荷すると聞いて組合に来たのだ。
それなのに、目の前にあるたった1つの紙のせいで豚のことなどどうでも良くなっていた。壁にでかでかと張り出されたその紙には新たな勇者の誕生とそれを祝うパーティーの開催について書かれていた。
さらに俺を混乱させたのがパーティーの招待に俺が選ばれていることだ。それ自体は何もおかしい事じゃない。勇者は昨日まで俺1人だったのだから。
勇者は世界を滅ぼす魔王を討伐するために生まれる。その勇者が増えるということは、俺だけでは魔王を倒すことが出来ないと世界に判断されたのだ。
それもイラつくが、何よりムカつくのはこの話を今まで聞いてなかったことだ。普通、公表する前に話がくるものだろう。いきなりパーティーやるから来てねなんておかしいのは誰でもわかることだ。
しかも今日の夜だと?これは俺を舐めていると受け取っていいんだよなぁ?
決めた。新たな勇者に力の差を教えて俺の方が強いということを証明してやる。
幸い、開催場所は外部歓待館と書いてあり遠くない。これなら余裕で間に合いそうだ。
外部歓待館は国内調査隊が使ったり、外国が視察に来る時に使われたりするので、かなり豪華ででかい。
分かりやすいから迷わず着くことは容易だが、入るのに手続きが面倒だからな。早めに行ってパーティーの詳細を確認した方がいいだろう。
何故か仲間たちはパーティーに招待されていなかったから探索者からは俺1人、あとは一部の貴族や王族辺りか。
パーティーの開催は既に町に広まっているから仲間たちに伝えなくても問題ないな。
1時間ぐらいかけて歩いて外部歓待館に着いた。パーティーがあるからかいつもより活気があるようで人通りが多く時間がかかった。
鉄製の防具と槍を構えている門番がいる。かなり強そうだな。ま、俺より弱いけど。
門番に話しかけたかったが先客がいるようだ。
「なんで入れないのよ!あたし王女なんですけど!あんたなんか何時でも殺せるのよ!」
「そうは言われましても、王家の紋章がなければ通すことは出来ないので…」
「アレは爺やが持ってるんだって!責任者を連れてきなさい!アイツなら話が通じるはずよ!」
「町長は今パーティーの準備で忙しいのでそんな暇はないのです」
「あたしより、パーティーの方が大事って!?王女であるあたしより!?」
うわぁ。邪魔だなぁ。大人しく爺やとやらを待てばいいのに。王宮育ちは待つことが苦手って聞本当だったのか。
自称王女様の横を通り抜けて探索者バッジを門番に見せた。
「はい、確認致しました。フミダーイ様ですね、お通りください。まだ準備に時間がかかりますので3階には行かないようにお願い致します。パーティーが始まっても来ない場合は部屋に案内が行きますので出来れば部屋で休んでいただけると助かります」
門番の言葉に頷き、渡された地図を受け取る。自称王女様と早く離れたくて中に入ろうとしたら邪魔をされた。
当然邪魔をするようなヤツは一人しかいないわけで、
「アンタ何勝手に入ろうとしてんのよ!招待されてんならあたしの顔ぐらい分かるでしょ!この無礼な奴どうにかしなさいよ!」
「嫌だ。大人しく爺や?を待ってろよ」
「はぁ!?ちょっと、アンタ待ちなさいよ!」
相手をするのが面倒くさいので早足で中に入る。1階にいるとうるさい声が聞こえてきそうだからさっさと2階に行くか。
地図を見て自分の部屋を確認する。階段を登ってすぐ先か。
地図から目を外すと壁に飾られている多くの絵が目に入る。全部でどんぐらいすんだろうな。
「ん?」
1つの絵が目に入る。それはきらびやかな衣装を纏った男が笑みを浮かべて豚を踏んでいる絵だ。
豚の表情から苦痛や屈辱、怒り悲しさが伝わってくる。豚にこだわりすぎだろ、趣味悪いな。
他の絵を見ても、あの絵のことが気になって仕方ない。
早く部屋に行って休もう。寝たらきっといつもの俺に戻るはずだ。
部屋に入りドアを閉める瞬間、クビにした豚が見えた気がした。きらびやかな装備、笑った顔が絵の姿と重なる。
じゃあ絵に書いてあった豚は……いや、やめよう。やっぱ俺は疲れてるんだ。寝たら治る、寝たら治る、寝たら治る、寝たら治る、寝たら治る、寝たら治る、寝たら治る、寝たら治る、寝たら治る…………………スヤァ
コンコン。ノックの音で目が覚め身を起こす。部屋にかけられた時計を見るにパーティーが始まるから来いってことか。
ドアを開けると従者の格好をした女がパーティーが始まるから案内すると言った。
無駄に装飾のある衣装は着なくていいのかと聞いたらむしろ探索者らしい格好の方がいいと言われた。
キラキラしたのはあまり好きじゃないから楽でいい。ああいうのは見てると目が痛くなる。
案内されて3階に登るとそこはもうパーティー会場だった。パーティーのためだけにこの階全部を使うなんてかなり気合いが入ってるな。
貴族達と格好が違うので視線が集まるが、コネ作りの方が大事なのか直ぐにザワザワし始めた。
貴族達の話し合いはめんどくさいから嫌いだ。巻き込まれたくない。そう思い人が少ない所に行き好物の肉を探す。やっぱり金のかかってる肉はうまい。おいしい肉を味わい、ワインで喉を潤す。
貴族達はこういう美味しい飯を食べ慣れているのか、あまり飯には手がつけられていない。
目に付いた肉を全て食べる勢いで味わっていると、陽気な男の高い声が聞こえてきた。
「皆様パーティーは楽しんでおられますでしょうか!?ワタクシはとても楽しんでいます。この場に出されている食事は全てが厳選された一級品でございまして、ワタクシは食べる機会が無いものですからつい夢中になってしまいました。皆様はしっかり食べておられますでしょうか?おっと?肉だけがほとんど無くなっていますね。これはワタクシではありませんよ。もしかしたらワタクシ程の大食いがいたのかもしれませんね!」
「お前の話は長くて困る。早く本題に移れ」
「申し訳ございません陛下、久しぶりの豪華な食事にはしゃいでしまいまして。えー、では早速ですが新しい勇者に挨拶をしてもらいましょう!《土》の勇者、ユーキ様!!」
用語解説
探索者・・・魔宮攻略支援組合に所属し、魔宮を攻略している人の総称。貢献度によりランク分けされており、ランクによって対応に明確な差がある。
《○》の勇者…そもそも勇者とは英精霊と呼ばれる3種の強力な精霊と契約した者のことを言う。○には契約した者英精霊の司る属性が入る。
例︰フミダーイは《火》の勇者、ユーキは《土》の勇者、《空》の勇者は現在不在。
火は空に強く土に弱い、土は火に強く空に弱い、空は土に強く火に弱いという相性差がある。また、火は力が強いが応用性に欠け、土は力が弱いが応用性が高く、空は力も応用生もバランスが良いという特徴がある。
良ければ評価、感想をお願いします!誤字を見つけたら誤字報告もお願いします!(欲張り)