10.新たな勇者、そして彼は思い出す
『ほう、お主は【空】と同じ所もあれば違うところもある。互いに混ざりあったということか?』
「そうね、好きなものも増えたけど、嫌いなものも増えてしまってめんどくさいわ」
『ふむ。お主は【空】の記憶があるのか?』
「少しだけね。だからアンタ達の事も覚えてる。【土】は相変わらず趣味が悪いし、アンタは馬鹿が全然治ってないし、【@/】の事も……あれ、覚えてない…」
『やはりそうか。あいつの事は覚えていないのも仕方ないから気にするな。…それにどうせすぐ会える』
「あのーいい加減説明してくれない?」
【火】がカスミと契約してしまい、そのまま思い出話が始まってしまったので止めるタイミングを失ってしまったのだ。
完全に存在を忘れられている。
『あぁ、言ってなかったか。カスミは【空】の精霊が混ざっておるから詳しく視る為に契約したのじゃ』
「カスミに【空】の精霊が混ざってるってどういうことだよ?」
「それはあたしが説明するわ。まず最初に謝るわ。黙っていてごめんなさい。簡単に言い触らせるようなものじゃないから言いづらかったのよ」
「さすがにこんな重要なことを、わざわざなんで言わなかったんだとは言わないよ。だから謝る必要はない。でもそれはそれとして凄い気になるから話してくれ」
今は俺が【火】の勇者、ユーキが【土】の勇者と世間では認識されている。
実際は【火】は俺じゃなくてカスミになったが、それは置いといて。
【火】だけじゃなく【土】の勇者も出たということは【火】だけだと魔王は厳しいと言うことだ。
逆に言えば、【空】の勇者が出ていないということは【火】と【土】で魔王を倒せるということだ。
だから大体の人は魔王がいると言うのに危機意識が低い。魔王は侵略行為をしていないということをビビっていると捉えているのかもしれない。
だが、【空】の精霊が混ざっているという摩訶不思議な状況になっているなら話は別だ。
カスミは【空】の精霊と混ざっているわけで、実質【空】の勇者と言ってもいいだろう。
もしカスミが勇者として世界に認められていた場合、魔王を倒すには【火】、【土】、【空】の勇者の力が必要だと判断されたことになる。
状況が異例中の異例だからなんとも言えないが、【火】が【空】と契約してしまった時点で今の人類の戦力は【土】だけと言える。
馬車から降りた時に彼女は帰る手段があると言っていた。それが【空】の精霊の力だとしたら、簡単に使えるものでは無い、もしくはかなり負担がかかるものでは無いだろうか。
そんな状態で【火】も担当するとなれば必ず無理が出る。
まあ、要するに人類詰んだくね?って話だ。
だから【空】の精霊が何故カスミと混ざるようなことになったのか聞く価値はあるはずだ。
そこに希望があると信じて。
「分かったわ。あれはつい最近、爺やがいなくなって探していた頃かしら。その時に偶然【空】の精霊と出会ったの。神殿とかじゃなくて普通に空に浮かんでいたからびっくりして腰が抜けちゃったわ。焦っていたように見えたから話を聞いたら、【空】に対する信仰が年々弱まっていて姿を見ることすら出来ない人が大半になってしまったみたいでこのままだと消滅してしまうから協力してくれって。どうすればいいのって聞いたらあたしと混ざることによって生き長らえることが出来るって言ってたからそれで混ざりあってあたしが【空】の精霊になったの。あたし的には精霊になれるから強くなれるかもって期待があったんだけど、混ざった時に【空】の記憶から常識とか性格とか見ちゃって影響されちゃったの。それで名誉とかどうでも良くなって面倒事は避けたくなったから今まで隠してたの」
「えっ。【空】の精霊消えかけてたのか!?世界の危機じゃねぇか!今は大丈夫なのか!?」
英精霊が消えるなんて大変だぞ!?【空】の精霊が消えるなんてことになったら天気が荒れまくったり空気が汚染されたりして人が住めなくなるんだぞ!?
俺の知らない内に世界が終わりかけてんだが!?
「大丈夫よ、今は私が【空】の精霊ってことになってるから。天候の調整とかはやり方が記憶に残ってたからそこまで苦ではないし。ただ、【空】の力を使うと寝てしまうから【空】の精霊と言えるかは微妙だけどね」
「寝てる間は天気が荒れたりしないのか?今までそういう所見たことないけど」
「調整をある程度自動化してるから寝てる間に荒れることはないわ。流石に意図的に雷とか降らされたら寝てる時はどうしようもないけど」
やっべぇ、カスミが人間辞めてるかもしれない。あっ、精霊だったわ。
『話すのもそれぐらいにしろ。そろそろ奴が来る』
奴?カスミ達が神殿から動かずに話していたのはその奴を待っていたから?
先に説明しろや。何でもかんでも後から説明するのはやめてくれ。仲間外れにされている気がする。
…いや、俺とカスミ達は同じ枠には収まらないのか。俺は【火】の精霊の力が無くなったからただのどうしようもない人間で、カスミ達は精霊で。
俺が【火】の勇者だった時もパーティメンバーはこんな気持ちだったのかな。
隔絶した差は、時に人を無意識に傷付ける。その意味が分かったような気がする。
こんなに近くに居るのに、とても遠いところに居るように感じる。
視界が闇に覆われる。突然のことに焦りを覚える。
神殿は常に光っているから暗くなるなんてことは無い。つまり、ここは神殿ではないどこか。
もしくは神殿を無くしてしまうほどの強者か。
闇に目が慣れ始め、その正体を確かめようと周囲に目をやる。
声が響く。
「やぁ、遅くなったかい」
不思議な声だ。ハッキリした声なはずなのにどんな声か分からなくなる。
まるで印象を出来るだけ与えないようにしているみたいだ。
『遅くはないが速くもない、といったところじゃな。そんなことよりこれを戻せ。どうも暗いのは好きになれん』
「嫌だね。僕は君みたいにピカピカ光るのが好きじゃないんだ。とは言っても、さすがに暗すぎると君たちは話しづらいだろう。僕の城に案内してあげよう」
…つまり、ウザイぐらい光る神殿を暗くできる強者ってことか?精霊の力で作られた神殿を嫌いだからってそんな簡単に変えられるとか、化け物じゃねぇか。
そんな化け物の姿を見たいような見たくないような。
その心の声が聞こえたのか、闇が消えていく。
そして、世界に光が戻った。
世界関係のお話
勇者と魔王の関係・・・魔王は世界に嫌われているので、勇者という強力な精霊(人間が勝手に英精霊と言っているだけ)と契約した人間を強化する。
簡単に言うと精神的にも身体的にも人間辞めさせられる。それが英精霊の力と勘違いされているが、英精霊の信仰が強くなっているので訂正する気はない模様。
ただ、世界が勇者を強化するのはかなり消耗してしまうので魔王の強さによって勇者の人数を決めている。
今まで【火】、【土】、【空】が揃ったことは過去に1度だけで、今とは桁違いの強さを持つ勇者達でさえその時は人類の被害も大きかったのでフミダーイは詰んだと言っている。
評価、感想はこの際しなくていいので想像力を下さい!!(切実)
なんなら今日がクリスマスだと勘違いしていました。祈るのが遅すぎたんですけど間に合いますかね?((( ;゜Д゜)))




