#-03
レキが罠に引っかかったのを確認した美由が、どこからか取り出した刀を手に、彼と同じく巣へ飛び込んでいく。
そして落ち行く最中、美由は刀を振う。
すると刀は容易く糸を切り、レキは拘束から逃れることが出来た。
そもそも〝誘い〟は前情報が無いから成立するもの。見せすぎたら新たな隙が生まれるのは道理。
「大丈夫?」
「ありがと」
重力操作された空中からふわっと地面に降りた美由はレキに問う。
対し、レキは礼を言うも、これは最初っから作戦に入っていたもの。
ここまでは予定調和にすぎなかった。
「なッ!? なぜ、あの糸を切れた?」
アラクネが驚愕し言葉を零す。どうやら言葉を喋れるようだ。
「ごめんね。私のこの〝虎鉄〟はちょっと特殊でね。魔力や妖力が通ってるものはなんでも切れちゃうの」
美由が見せつけるように虎鉄を振るう。すると刀身が青く揺らいだ。
そう、この刀もレキの翼や腕と同じく、彼女の相方、白 故の力を借りたものだ。
「そしてボクが自由になったのはお前が驚いて力を抜いたから。ってのは言うまでもないよね?」
アラクネは強力な巣を張る能力を持っていない。
遠隔から糸をに引っかかったモノを引く能力を持っていたのだ。
これはさきほど実際に引っかかり、感じたからこそ看破できた。
なのでレキは迷いなく宣言しているものの、横の美由は頭上に疑問符を浮かべている。
もちろん根拠は弱い。ハッタリ半分の発言だ。
しかしアラクネが苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていることから真実に近いのだろう。
どうやら勝負は決まったも同然か。
「自己紹介は必要ないと思うけど……」
レキは重い左腕を持ち上げ、アラクネに宣言する。
「レキ・ルーン・エッジ。お前の敵だ」
× × ×