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神様の住む町  作者: 山下ひよ
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神様がいっぱい


 左手に、黒豆茶の茶葉が入った白いビニール袋を引っ提げ、商店を出た。


「ちっ、面倒くせえな。ほら持っていきやがれ。お粗末様でした!」

「いくらっすか」

「いらねえよこの野郎! また来いよ!」


 見た目ヤンキーの神様はとっても優しかった。

 印象は、ちょっと変わったツンデレだ。

 言継曰く、誉められてかなり喜んでいるらしい。マジかよ誉めただけで商品タダでくれんのかよ。


「…あんなチョロくて赤字になんねえの…?」

「はは、そこはまあ、町の人間が俺ら神様をちゃんと敬ってくれるから、あとで店長の大島さんにこっそり支払ってるんだ」

「あーなるほど。じゃあ俺も大島さんに会わねえと」


 言継は面白いものを見たとばかりに俺に笑いかけてきた。


「ちゃんと払うんだ?」

「そりゃ、元々買うつもりで言ったんだし、母さんが黒豆茶好きだからこれからもお世話になるだろうし」

「あっはっは。お前つんつんしてるのに良い子だなぁ」


 ば、馬鹿にされてる気がする!

 コイツに比べたら、見た目あれだけどタマさんの方が数倍性格いい気がするわ。

 ていうか、俺はまだ神様云々について信じてないんだからな。


 その後もすれ違う人みんなに声をかけ、俺の面通しをさくさく進める言継に、顔が広いのは本当らしいと納得する。

 明らかに言継よりはるかに年上のご老人方が、言継に対して丁寧に接してもいる。

 だけど神様なんて荒唐無稽な話、高校二年にもなって信じるわけがないだろう。


「光太郎、聞いてるか?」

「えっ、聞いてなかった。何」


 色々と考えながら歩いていたら、言継に話しかけられていたらしい。呆れたような視線を受ける。


「だから、ここが四月からお前が通う高校、黒森高校だよ」

「おお、いつの間に」


 気がついたら、大きな校門の前にいた。春休み中なので大きな柵は閉められており、右横にある小さな入口だけ開いている。

 部活の連中が出入りするのだろう。


 遠目に見ると、思ったよりきれいな外観だった。グラウンドも広く、野球部がキャッチボールをしている光景が目の前にある。

 田舎の高校とは思えないほど立派な学校だ。


「へえ、予想外」

「もっと田舎にありそうな高校だと思ってたろ。ここ、割と有名なんだよ。県外からも生徒が集まるし」

「ふーん。スポーツとか強いの」

「そうだな。ここの土地神様の影響が強くて、生徒たちもその恩恵にあやかれるっていうか」

「ふーん。……土地神様?」


 出たよ。また出たよ神様。

 どんだけいるんだよ。そんなほいほい出てこられたら、ありがたみ一切ないわ。


「黒森様っていう土地神様でな。この敷地内にいる人間が危害にあったりしないよう守護してくださってる。人間の成長を見守るのが好きな方だから、じゃあってことで神住町の偉いさんたちが学校にしたんだ」

「いやいやいや、神様のために作ったみたいじゃん」

「だからそうなんだって。黒森様は前途洋々な若者の成長を見守れて大喜び、町の人間は子ども等の安全が保証されて大喜び、Win-Winってやつだ」

「ええ…」


 マジかよどうなってんのここ。


「まあ町の外から来てる生徒は黒森様が見えないから、お伽噺や七不思議の類いと思ってるらしいけど。七不思議も町の生徒には全部見えるから、怪談でも何でもないわな」

「七不思議見えんのかよ…」

「黒森様がいるから、悪霊は入ってこられないし町の生徒は動じないぞ。他の学校でありがちな走る人体模型とか、ここだと普通に黒森様の部下のつくも神だからな」

「走る人体模型いるのかよ…」

「さとしくんっていう奴な。会ったら挨拶しとけよ。町の外の人間が見てないときにな」


 あー何か頭いたくなってきた。

 磁場とかおかしいのかな、ここ。

 いや、まだ黒森様やさとしくんと会った訳じゃないし、言継の作り話という線も捨てきれない。ていうか捨てたくない。


 一通りの説明を受け、帰り道をとぼとぼ歩く。

 言継は相変わらず町の人間に声をかけまくっている。元気だなこいつ。

 そうしてようやく家が見えてきて、気が緩んだときだった。


「ちなみにな、光太郎」

「まだ何かあんのかよ…」

「この散歩の間に俺がお前を紹介した人たちのうち、半分くらい神様だから」

「うそだろ!?」


 田舎マジ怖い。


 ちなみに黒豆茶は母のお気に召したらしく、夕飯は俺の好きな唐揚げだった。

 タマさんのことだけは信じてもいいかもしれない。

 何故ならご利益があったから。



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