第91話 猫被り
sideリン リン視点
『逃げられた・・・くそぉ』
ケルベロスさんがあたためているタマゴを確認する為に必死に追いかけたのだが逃げられてしまった。
『どこ行ったんだ・・・。少し見るくらいさせてくれても良いのに・・・』
見失ったケルベロスを村の隅々まで探すが見当たらない。ちょっと文句の1つでも言いたい気分になって悪態を吐いていると・・・
『ちょっと・・・、こーゆう感じのリンちゃんもたまには良いわね・・・』
大精霊からなんか聞こえた。なんか大精霊の姿を見たくなくなってきた。
『・・・別に大精霊は今のままでも大丈夫かもなー』
リンがタマゴを探すことを諦めようとすると・・・
『リン・・・。精霊はまだこの村にいるわ。』
大精霊が元に戻った。いや、猫を被った。
前から薄々感じていたが、現実(大精霊)と向き合うのがいやになってきた。大精霊の相場は美人で清楚な感じのお姉さんと決まっているのだから。
『そうは言ってもさっきから全然それっぽいのもいないじゃないか』
『ええ、ただ反応はあるわ。だけど何故かぼやけてしまって・・・。』
うーん。大精霊がだいぶ曖昧なことを言う。大精霊を信用するのであればこの近くにいるのは間違いないようだが・・・。とりあえず一旦ケルベロスさんが戻ってきていないか、いぬさんの小屋まで戻ることにした。
『ケルベロスさーん。』
犬小屋まで来て見たもののケルベロスさんはいなかった。
『あら、リンさん。結局捕まえられなかったようね』
犬小屋までもどるとコボルトが出迎えてくれた。
コボルトが僕の頑張りを労ってくれる。優しい。
『あぁ、少しも触られてくれなかったな』
『ケルベロスさんも頑固ですからねぇ・・・』
◇
sideリン リン視点
『それにしても今日は葬式をやってるね』
『はい。リンちゃんとオークさんが頑張って準備してましたからねぇ。』
『いぬさんが知ったらどんな顔するかな』
『そうですねぇ、とりあえずオークさんがぶっ飛ばされてる気がしますねぇ』
コボルトとの話に花を咲かせていると・・・
『うーわーき!それ、うーわーき!あそれ、うーわーき!それ』
・・・大精霊の情緒がヤバいことになりだした。
確かにコボルトはもふもふだし可愛いけど・・・そんなことを考えていると更に酷くなってきた。情緒どこいった。
『こら! コボルト。リンに色目使うなー』
大精霊がコボルトに怒っている。色目も使ってないし、そもそもコボルトには大精霊の声は聞こえてないけど。
『・・・おい。大精霊。少し落ち着け。』
おれは大精霊に注意した。さようなら・・・、おれの中の大精霊・・・。
リンの思い描いていた大精霊は跡形もなく砕け散ったのだった。
次回へ続く。
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