第85話 緊急事態
バンドッグ王城にて
勇者ジンは村人の治療を終えてバンドッグまで戻ってきた。
『な・・・どうした・・・これは』
ジンは王城を見て驚いた。城は原型をとどめていないくらい破壊されていたからである。
『女王・・・。プードルは・・・。』
ジンは急いで玉座のあった場所まで駆けつける。
ジンにとっては勇者であることと同じくらい、プードルが無事でいてくれる事は大事だった。
だがそこにはプードルの姿はなく、生き残った騎士達がいるだけだった。
『やられたのか・・・』
騎士団長を問い詰める。
『勇者様・・・申し訳ありません。ケルベロスが突然襲ってきて女王様が拐われました。恐らくシバ王国のケルベロスと思われます。』
騎士団長がジンにそう報告する。
『シバが・・・報復に来たのか・・・。まだ生きている可能性はある。僕はシバまで行ってくる』
団長が悪いわけではない。団長は封印石の存在は知っていても、どういうものかまで知らなかった。
知っていれば、ケルベロスが黒い光を纏っている時点でヨークシャーの仕業だとわかった。知らなかったため、ケルベロス=シバと誤認してしまったのだ。
ジンは涙を堪え、急いでシバに向かうのであった。
『プードル・・・無事でいてくれ・・・。』
プードルの無事だけを願って・・・。
◇
シバ王国
ケルベロスはリンとの追いかけっこに勝利していた。
『ふー、リンのやつめ。ここまでくれば大丈夫だろう。タマゴは誰にも渡さん!はっはっは』
ケルベロスはワンコがドラゴニックスタンプで破壊して出来た谷の谷底まで逃げて来ていた。一度落ちている為、谷底の状況は知っていた。
『しばらくここで隠しておこうかな。がっはっは。』
ケルベロスはタマゴをより安全な場所に避難させる事に成功したのだった。
◇
sideワンコ
ダンジョンにて
「んぁぁぁぁぁあ・・・寝すぎた・・・」
おれは疲れたのでダンジョンにて一眠りしていた。
目を覚ますとラグが戻って来ていた。
『犬様・・・おはようございます。』
ラグはご飯を作っていた。
・・・ジュルリ
・・・・・・ヨダレが垂れてくる。"待て"をくらう犬の気持ちがわかる。
・・・ガツガツ
うまい・・・。ありがたく頂いておいた。
食べた後に、さっきビーフジャーキーやら缶詰やらをたらふく食べたばっかりなのを思い出してしまった。おデブになりそうだ。
そういえば・・・
先ほど精霊石を使った効果は未だに表れていない。URアイテムだけに何も起きないことに残念な気持ちになる。
『・・・まぁ仕方ない・・・。』
おれは仕方なく精霊石のことは諦め、先程やり忘れたステータス隠蔽をすることにした。
『おお・・・。おもろい』
面白いようにステータスが消える。結果的にはこうなった。
ステータス
種族 犬
称号 癒し犬
魔法 なし
スキル N【跳躍Lv3】
・・・やり過ぎた。調子に乗って消し過ぎた。
これではただの犬である。
まぁめんどくさいのでこのままにしておくことにした。
最後にラグのステータスを確認してみる。
だいぶ強くなっていた。
そうだな・・・このままラグには99階層を目指してもらい、おれはいったんシバの様子を見に行くか・・・。
今のラグなら60階層のスノードラゴンまではなんとか単独でこれそうである。ラグには後々、ギルドマスターをやってもらいたいと思っているのでこの調子でダンジョンを踏破してもらいたいが・・・
『はぁ・・・。』
ラグからため息がもれる。この前兆は・・・
『はぁ・・・・・・』
・・・・・・やばい。
『妹ちゃんに会いたいなぁ』
きた。ラグのシスコンが今にも発動しそうだ。
妹の病気が治って元気になってからラグのシスコンが加速していたのである。
「おぃ、ラグ。お・・・落ち着け」
・・・あ・・・しまった。いつもなだめていたリンが今はいない。
おれはラグとは話せないのをすっかり忘れていた。急いでスケルトンナイトを呼びに行くことにした。
次回へ続く
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