第78話 役割分担
バンドッグ王国、玉座の間
『やぁ女王様』
ジンが女王プードルの元に帰ってきた。
『あら、ジン。どうしたのかしら?』
プードルはジンが、もうシバまで行ったとは露ほども思っていない。
『いや、今シバまで行ってきたよ。』
プードルはその言葉に唖然とする。まだ頼んでからそれほど経っていないのだ。
『は・・・はやいわね。それでどうだったかしら』
女王は髪をたくし上げ動揺を紛らわす。
『あぁ。運が良かった。丁度向かってる途中にシバ王に会ったんだ。人間を襲ってたから、言われた通り排除したよ』
プードルはジンのその淡々とした報告を聞く。少しの沈黙のあと、ようやくジンが言った言葉を消化できたようだ。
『よくやってくれました。ジン。ありがとう。』
プードルはその日一番の笑顔でお礼を言った。
プードルの笑顔、それがジンにとってなによりの報酬だった。
◇
シバ村
「ぬぉっ!・・・」
『んー? いぬちゃんどした』
おれは相方との勝負に負け、タマゴをあたため中だった・・・のだが・・・。おれが急に声をあげたのでケルベロスがこっち見てくる。
「・・・・・・相方が死んだ・・・」
『・・・・・・え?』
「いや・・・なんか勇者が来て瞬殺された」
『・・・・・・まじ?』
ケルベロスが臨戦態勢に入ろうとするが・・・
『・・・いぬさんが!』
『た・・・大変です。犬様が!』
リンとラグが戻ってきた。状況がわかっているということは・・・相方が死ぬのを意識が朦朧とする中で見ていたようだった。おれは改めてダブルを使い、2人を出迎える。
『・・・・・・え・・・』
『・・・・・・え?・・』
「・・・・・・よう(ガウ!)・・」
「・・・・・・よう(ワン!)・・」
2人は犬小屋でピンピンしてるおれを見て安堵した。ケルベロスも2人が戻ってきたことにより、とりあえず落ち着く。
2人はおれがやられたのを見て、シバにいるおれも危ないと思い猛ダッシュで戻ってきたとの事だった。
なぜ猛ダッシュで戻れたかと言うと、どうやら勇者が2人に回復魔法をかけ、その場から立ち去ったからだということだった。
立ち去ったということは、おれだけがターゲットであったのは間違い。勇者もまさかおれが2匹いるとは思わなかったようだ。
・・・勇者は誰かの依頼を受けたと言っていた。なにかよからぬことが進んでるのかもしれない。
◇
ダンジョン41階層
『死ぬぅぅう・・・』
『うぎゃー・・・・・・』
おれはリン・ラグを連れてダンジョンに篭っていた。
引き続き修行中だ。
相方がやられたので、みんなでどうするか検討した結果、とりあえずおれは死んだことにすることに決定した。
暫くの間、代行としてオークに王様をやってもらう。
おれが死んでる間の他の国の動向はブルテリアに探ってもらう予定だ。オークであればバーナードとも上手くやれるだろう。
『ぬぉー、ワシもやりたい!』
ケルベロスは自分が王様をやりたいと駄々をこねていた。まぁアホでバカなので却下した。それにお前がやるとブルテリアにバレたらやばいだろうに。ふて腐れていた。
「ケルベロスよ。それよりもお前にしかできないことがある!」
『ワ・・・ワシにしか?おぉ、任せておけ!』
ケルベロスは目をキラキラさせて引き受けてくれた。
「んじゃ・・・頼んだぞ!ケルベロス」
おれはケルベロスにタマゴを渡した。
『・・・・・・うぉぉぉお。いやだぁぁぁあ』
ケルベロスが喜んでくれたようで良かった。
次回へ続く。
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