第74話 オークション
『さぁ、いきますよ!』
おれたちはクタクタになっていたところをミーアに無理矢理駆り出されていた。
ブルテリアに来た本来の目的、オークションに参加するためだ。
オークションに向かう前に露店の様な所に連れていかれた。
『ミーアちゃん、これ何?』
露店に着くと置いてある商品についてコボルトがミーアに質問した。おれとオークものぞいて見る。
「なになに・・・・・・、」
「英雄のお守り、オークのお守り」
・・・・・・
何じゃこりゃ。おれとオークの刺繍が入ったお守りだった。
『ここにお店を一時的に出してます!』
・・・ミーアのやろう。最近見なかったと思ったら店出してやがった。しかもおれたちをだしにして。そんなに儲かるとも思えないが・・・
『爆売れしてます!』
・・・くっそ。また金儲けしてやがった。金儲けの才能はピカイチである。にしてもこの袋、何が入ってるんだ。
おれは袋の中をコボルトに確認してもらおうとする。すると
『あ・・・えっとですね・・・犬さんとオークさんの毛が御利益にと入ってますよ』
・・・
・・・・・・おれの毛を入れてやがった。いつ取ったんだよ。おれたちの泊まっていた宿屋も1枚噛んでそうだ。色んな権利の侵害で訴えたいところだ。
『犬さん、オークさん! ちょっとお願いがあります!』
ん?この期に及んでなんだろうか。
『今、お守りが売れすぎて在庫が無くなりそうです。そこで・・・少し毛をください!』
・・・・・・やばい。ミーアの目つきがお金になっている。オークもその空気を感じ逃げていった。
おれは・・・コボルトに抱えられている為逃げられない。
『お犬様! 頑張ってお守り売りましょう!』
なにぃ。コボルトも寝返りやがった。おれの抵抗も虚しく、ミーアとコボルトはおれの毛を凄い勢いでカットしていった。カットの腕前は中々のもので、トリマーの才能を感じた。コボルトはおれをカットしたかっただけかもしれない。
ちなみにおれだけじゃ癪なので、その後オークも捕らえて丸坊主にさせておいた。
◇
遂にやってきた。オークション会場である。
『犬さん! 遂にきましたね。』
ミーアも興奮気味だ。
ここはブルテリアの金持ち御用達のオークション会場。月に数回しか開催されず、開催されるとその度に様々な国から金持ち貴族や商人がやってくる。貴族・成金など性格悪そうなのがいっぱいいた。
通常は出入り自体難しいが、出品アイテムが貴重だった事やミーアのツテのお陰で出品することができた。
ミーアに出品手続きを頼み、おれたちは指定された席に着く。
おれたちが会場に入ると見定められる様な気持ち悪い視線をそこらじゅうから感じた。
それからしばらく席でゆっくりしながらミーアを待っていると・・・
『おぉ・・・なんじゃこの珍しいモンスターは。この整った毛並み。モフモフ具合!最高じゃないか!』
おれたちの隣に座っていた貴族っぽいやつがおれを見てなんかいいだした。
『お・・・おい。そこのコボルト。このモンスターは幾らだ。オークションに出品されるのだろう。私が買い取ろう。』
売りもんかと思われた。コボルトが対応に困っていると・・・
『おい・・・お前。それは私も狙っていたのだ。抜け駆けは許さんぞ』
他のオークション参加者達が騒ぎ出した。こいつらもおれを狙っていたらしい。
・・・・・・帰りたくなってきた。
オークを見ると案の定笑いを堪えていたので一発入れておいた。
◇
ミーアが出品手続きから戻ってきた。
おれの出品騒動を鎮静化してもらい、なんとか落ち着いた。危うくこの会場にメテオを落とすところであった。
どうやら、ここにはおれやオークがこの国の英雄だと言うことを知らない奴が多いらしい。このオークションの為だけに開催に合わせて各地から来ているからということであった。
オークションが始まった。
競売人の素晴らしい腕で、順調に進んで行く。いよいよおれたちの番がきた。
『さて、お次です。これは・・・大変貴重なものです。魔剣デュランダル・ユニコーンの角!さぁひとつずつ行きます』
・・・オークションの行方を見守る。どんどん入札が入って行く。
『おぉ、本日2品とも最高値で落札です。おめでとうございます! さてお次にいきます。本日最後の商品です。超希少、目玉商品です!・・・』
結審した。結果は凄い高値が付いた。暫くは遊んで暮らせそうなくらいである。まぁ殆どは食費に消えるのだろうが・・・
オークも大喜びである。
『犬様!やりましたね』
オークが万歳をして喜びを爆発させている。やはりオークションは誰しもテンションが上がるようだ。
おれたちは出品商品が無事に売れたのでその場から退席しようとする。
『あっとー、ここでオークさん。10本指。倍の金額です!本日最高入札!他にはいませんかー?』
『はい! おめでとうございます。オークさんが落札です!』
・・・
・・・・・・オークと目をあわせる。ミーアもコボルトもオークを凝視する。
オークが先程の喜びから一転。涙目になっていた。オークの万歳が入札になってしまったようだ。
オークのやつ。またやりやがった・・・
ミーアが鬼のような形相をしている。
『・・・・・・んじゃ。オーク。おれたちはお先に失敬失敬』
ミーアが怖すぎるので直ぐ様、逃げようとした。
・・・
結局おれたちは今回の出品と露店で得た利益を根こそぎ持っていかれたのであった。
何を入札したのかもしらないのに・・・
次回へ続く。
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