第53話 油断
『うー・・・。ケルベロス様の気配が消えた・・・。大丈夫かなぁ』
ダンジョン99階層。
地獄の鎧こと鎧ちゃんはケルベロスの気配がなくなったことにより、先へ行かせてしまったことを後悔していた。
100階層への入口の前で行ったり来たりする鎧ちゃん。今の鎧ちゃんは鎧を着て地獄の鎧そのものである。中身が幼女には見えない。
「1200ptある。スーパーガチャでも引くか・・・」
おれは100階層入口の隅でステータスを開きガチャを引く。
・・・・・・鎧ちゃんと目があった気がした。
『・・・』ジー
「・・・」
『・・・・・・』ジー
「・・・・・・」
『・・・・・・うぇぇぇえ!? なんでここに』
鎧ちゃんはおれがまだ99階層にいる事に驚いて鎧の目のところをシャカシャカ動かしている。
まぁダブルを使っておれは留守番もう1人は100階層に行っただけなんだが。
『・・・・・・なるほど・・・・・・』
おれが説明する前に鎧ちゃんもおれがここにいる理由がわかったようだ。優秀である。
『・・・・・・つまりは・・・逃げてきたと・・・』
・・・・・・違うわ。鎧ちゃんが凄い疑惑の目で見てきた。
ちゃんと説明して、誤解が解けるまでに時間がかかった。
「さて・・・鎧ちゃん、実は・・・」
おれは鎧ちゃんに100階層で起こった事を説明した。
そして鎧ちゃんの協力もいる事を伝えると鎧ちゃんは喜んで応じてくれた。
『それであれば急ぎましょう!』
そこからの行動は早かった。
おれは鎧ちゃんとともに急いで100階層へ向かっていった。
◇
『ふはははは・・・流石はケルベロス。今のも凌ぎきるとは凄い、凄いぞ!』
ケルベロスはおれがフルパワーで放ったメテオを受けたのにもかかわらず多少ダメージを負ったくらいだった。相当不味い。このままでは国が滅ぶ。
シュナウザーの持つ封印石を壊せばケルベロスが正気に戻ると思うんだが、シュナウザーはケルベロスが守っているために攻撃ができない。メテオでヤツももろとも倒せればと思ったんだが、うまくはいかなかった。
こうなれば・・・・・・
おれはケルベロスにむけスキルを放つ。
【剛腕(極)Lv1】
【グラビティスタンプLv3】
『ふっ・・・ムダだ。お前の攻撃ではケルベロスを倒せない!』
シュナウザーが調子に乗ったことを言い、ケルベロスはシュナウザーを守るように立ちはだかる。
だが、今回おれの目的は他にあった。
「ふっ!」
ケルベロスを掴み転移門の方へぶん投げた。そしてグラビティスタンプによる重量操作でシュナウザーもケルベロスとともに転移門の先、ダンジョン100階層へと投げ飛ばした。
◇
ダンジョン100階層
おれは鎧ちゃんと転移門の前で待機していた。
『・・・・・・来ます!』
鎧ちゃんはいち早くケルベロスの気配を感じ取った。
鎧ちゃんの声とともに転移門からケルベロスとシュナウザー、ワンコが現れる。
『うぉぉぉぉぉぉお! おのれ・・・このおれ巻き込むとは・・・。ん・・・・・・?んん?・・・あの珍妙なモンスターが2匹もいる・・・。』
シュナウザーは絶叫しながら転移門をくぐって来た。自分も巻き込まれてご立腹のようだったが、おれが2匹いるのを見て相当驚いてた。
『おい! シュナイダー! ケルベロス様を良くもこんな目に合わせてくれたな』
鎧ちゃんがシュナウザーに口撃する。そういえばコイツと話すのは初めてだ。せっかくなので鎧ちゃんに色々と聞いてもらいたいとこだが・・・
シュナウザーは鎧ちゃんの声を無視した。
『・・・・・・おい!』
『・・・・・・おい!シュナイダー!答えろ』
・・・・・・あ・・・。これは・・・。
おれが鎧ちゃんに指摘する前にシュナウザーは顔を真っ赤にして応えた。
『・・・・・・お・・・おれの名前はシュナウザーだ!おのれ・・・どこまでもバカにしよって。・・・お前ら・・・絶対に許さんぞ』
・・・・・・鎧ちゃんが名前を間違えた事により、シュナウザーは激おこだ。ここへ来てシュナウザーの小物感が目立って来た。
◇
『ぐ・・・どこまでもふざけやがって。このままやってても決着がつかない。お前らは気に入らないが、目的は達成したのだ。一旦退却だ。』
シュナウザーがケルベロスに退却するように命令を下す。
不味い。ここで逃しては後が厄介なことになる。絶対に逃してはならない。。
おれは事前の打ち合わせ通り、鎧ちゃんに合図を送った。
合図とともに鎧ちゃんの姿が消えた。ケルベロスはシュナウザーを守るように構えている。
さて・・・・・・いくぞ
【サイコキネシスLv8】SR
鎧ちゃんが消えたと同時におれはケルベロスに新しく手に入れたスキル、サイコキネシスを放った。
発動するとケルベロスが宙に浮かぶ。ケルベロスがそこから脱出しようと足掻く。念力による拘束だ。
「ぐ・・・・・・おいケルベロス!足掻くな、戻ってこい !」
おれはフルパワーでケルベロスを抑えつけた。
おれの言葉で微かに抵抗が弱まった気がした事も味方したかもしれない。ケルベロスの無効化に成功した。
(まぁおれもフルパワーで放ち続けているため動けないんだが)
あとは鎧ちゃんの出番だ。
◇
『な・・・ケルベロス! そんなもの振りほどけ!』
シュナウザーはケルベロスにサイコキネシスから逃れるように命令するが、ケルベロスは脱出出来ない。
『ふふふ・・・・・・余所見してるヒマはないですよ』
鎧ちゃんがシュナウザーの背後に回り込み、手に持っていた封印石を奪った。シュナウザーは自身を守ってくれていたケルベロスが無効化され、鎧ちゃんに封印石を奪われたことにより、敗北が濃厚となった。
『ば・・・・・・ばかな・・・。せっかくケルベロスの力を手に入れたというのに・・・』
シュナウザーが悔しそうに表情を歪める。
『これでチェックメイトです・・・絶剣・・・』
鎧ちゃんがシュナウザー斬りかかる。シュナウザーは捕らえて色々話を聞きたかったが今勝負を決めておかないと、また悪巧みするかもしれない。仕方ない。おれはそう割切り、シュナウザーの最後を見ようとした。その時・・・
『うわぁぁぉあ!』
ダンジョン100階層が激しく揺れた。転移門が閉じ始めたのだ。鎧ちゃんは急な振動に体制を崩し転がっていった。
『ふふふ・・・今回は私の負けです。 この借りは絶対に返しますよ・・・』
鎧ちゃんは逃すまいと直ぐに体制を立て直すが・・・時すでに遅く、その隙にシュナウザーは転移門へと逃げていってしまった。
こうして、シュナウザーは逃したものの、ヤツの企みは阻止することができた。
あとは封印石を破壊するだけだ。
次回へ続く
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