第160話 ちっぽけな勇気
sideドラゴンとコリー
ヨークシャー王国 城下町
『う・・・うぉぉぉぉお! 逃げろぉぉぉお。』
『こら、逃げるな!』
オークがヨークシャー王に瞬殺(死んではいないが)された頃、ドラゴンとコリーのペアは勇者ナツとの戦闘になっていた。ドラゴンはひよって勇者の攻撃から逃げ回っている。
『コ・・・コリー! 逃げるなって言われてもあんなんムリだろうに。』
『うるさい! 静かにしろ。』
『いやだぁぁぁ』
『こ・・・こいつめー!おりゃぁぁあ』
『う・・・うぎゃぁぁぁ。』
コリーが逃げ回るドラゴンにお尻ペンペンを食らわした。
『フー、フー。コリー、本気で叩くことないだろー。フー、フー。』
『うるさい、ちょっと気合いを入れただけだ。それに私はボーダーの冒険者だ。お前のことを知らないわけ無いだろ。元々はヨークシャーを守ってたんだろ』
『う・・・。ま・・・まぁ、前の王がいた時までだがな』ヒュー
コリーがドラゴンにそう問いかける。ドラゴンは図星だったようで口笛をヒューヒュー吹いている。
『おいドラゴン、とりあえず勇者は私が戦う。お前はちょっと心入れ替えてから来い!前の住処に戻るんだろう、気合い見せろ!』
『うげっ、う・・・うむ。うーむ。』
ドラゴンが勇者にビビって逃げ回るなか、遂にコリーは追って来た勇者を迎え撃つ賭けにでたのだった。
◇
ヨークシャー王国 城下町
『・・・』
『・・・。おい、お前勇者だろ、勇者なんだから操られてないでしっかりしてくれよ。』
『・・・・・・』
『無駄・・・か。』
コリーはナツと対峙していた。コリーがナツに、操られている力から逃れるように期待を込めて語りかけるが、ナツはうんともすんとも言わない。無駄なようだ。
『仕方ない・・・。どこまでやれるかだが・・・行くぞ、勇者。』
コリーはここへ来て初めて自身の武器である短剣を手に取った。
『さぁ、来な。あいにくここで死ぬわけにはいかないんでね。』
コリーが物凄い速さで勇者の背中に回り込む。
『瞬剣 五月雨』
ナツもそれに合わせスキルを発動させる。ナツの聖剣の刀身がブレたかと思うとコリーの死角から無数の剣戟が出現する。
『ちぃ、瞬剣 雀蜂!』
コリーは死角から襲いかかる剣戟を紙一重で避け反撃にでた。剣戟の隙間、針の穴を通すくらいの精密な突きをナツの急所に向かって放った。
『・・・サイレントモーション』
ナツもコリーの突きを固有スキルでゆるりとかわす。今回のナツは固有スキルを迷いなく使用する。前回ボーダーを襲って来た時は、固有スキルをなかなか使わなかった。前回よりも操られ方がひどくなっているようだ。容赦がない。
『前回ボーダーで遠目で見た時より容赦ないな。このまま守っていても負ける・・・。』
『・・・。』
『仕方ない。私がどこまで勇者と渡り合えるか・・・。頑張ってみるか。』
『・・・ホーリーバースト。』
『ち・・・。厄介な』
コリーはナツのホーリーバーストの竜巻を避け、ナツに接近する。コリーはその超人的なスピードによりナツのバースト系スキルを見事に避け切っていた。
『私がお前に勝つには接近戦しかないからね。私のS級たる所以をみせてあげる。絶剣極・・・。』
コリーにとってはナツの懐に入ることなど容易かった。潜り込んだところに短剣で絶剣極を放つ。当たれば大ダメージは必至の攻撃がナツに放たれる。だが、ナツもサイレントモーションをうまく使い、攻撃を避けていた。そして時間が経つにつれ・・・
『はぁはぁ・・・。くぅ。このままでは厳しいな』
『・・・。』
コリーが徐々に劣勢になって来た。これまで超人的なスピードで動いて来たコリー。スキルの使用も無制限ではないし、効果時間も当然だが制限がある。コリーの負けが濃厚になってきたのであった。
◇
sideドラゴン
『うーむ。・・・うお!』チラチラ
ドラゴンがコリー対ナツの戦いを隠れて見ながら、同じ場所を行ったり来たりしている。激しい攻撃の応酬が続いており、その度にドラゴンはぶるっていた。
『い・・・いくらおれでも勇者は無理だぞ・・・。』
ドラゴンは弱々しげな声でいじけている。その間にも徐々にコリーは劣勢に追い込まれていく。
『コ・・・コリーのスピードが落ちて来た。まずい、まずいぞー!』
ドラゴンは焦る。焦るがその一歩が踏み出せない。
『ふぅ・・・。おれは・・・ううう。』
ドラゴンは涙目になりながら、少ない勇気を振り絞って叫んだ。
『お・・・おれは家に帰るんだぁぁぁぁあ。こりぃぃぃぃ、今行くぞー』
そして遂に、覚悟を決め、コリーのもとに駆けつけたのであった。
『遅いんだよ』
『う・・・うるさい!おれも頑張ったんだよ』
コリーが駆けつけたドラゴンに跨る。
『さぁ、ドラゴン。がんばるぞ。』
『う・・うむ。あとは任せたぞコリー。』
『あぁ、私に委ねろ。』
ドラゴンは怪しげなオーラを発する。ナツは警戒して距離を取る。
『行くぞー、こりぃぃぃぃ。"同化!"』
ドラゴンがスキル名を発した。その瞬間、ドラゴンはコリーと混ざり合っていく。そして
『ふぅぅぅう。よう、ドラゴン。初めてにしてはうまくいったな。』
『う・・うむ。おれも久しぶりにしてはうまくいった。後はコリーに任せる!』
2人の体はコリーをベースとして竜人に変身した。肌や尻尾はドラゴンのそれだが、外見はコリーそのものだ。その口からはコリー、ドラゴン両方の声で会話が発せられている。
『ドラゴン。勇者を倒す。』
『ああ、やってくれ。』
『いくぞ、ふん!』
コリーが地面を蹴る。蹴った地面がえぐれて弾ける。元々超人的なスピードを誇っていたコリー。竜人化したことでそのスピードは更に磨きがかかっていた。
『はぁぁあ、ドラゴンパンチ!』
ナツにも反応しきれない速度で、コリーのパンチがボディにヒット。ナツは数十メートル飛ばされて、民家に突っ込んでいった。
コリーとドラゴンの反撃が始まった。
次回へ続く。
読んで頂きありがとうごさいます。少しバタバタしてまして遅くなりました。一応この先の話も決まっているので、今後もよろしくお願いします。
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