第160話 ぶん殴りたくなる必殺技
ヨークシャー城
『おのれ、好き放題殴ってくれおったな!』
『ふはははは。いい準備運動になったわ。シバの奴らも大したことないな。このペースだと我が国の勇者の出番はないな。』
ヨークシャー王がオークの紫電槍を軽く交わしながら饒舌にしゃべる。見た目は物凄い体調悪そうなのによく喋るやつだ。
『フン! ここからだ、近接戦は苦手だからな。』
オークがおれの指示通りにヨークシャー王から距離をとり、城の天井に紫電を集中させた。激しい衝撃音とともに天井に大穴ができる。いい天気だ。
オークがその身に紫電を纏わせて、宙に浮く。そんな事も出来たのか。
『さぁ、ヨークシャー王、覚悟せよ!』
『ふはは、面白い。かかってこい。』
オークの背後に数千いや数万はありそうな紫電の槍が出現した。極スキルに変化した紫電槍。前の武闘大会時に少し見た通り変幻自在に分裂、合体を繰り返す。
「おー、これは凄い。オーク、行けー」
『いぬさまー、見ててください、こっからですよー!』
オークがおれの方を見てニヤニヤしながらおもむろに魔槍ゲイボルグを振りかぶる。
『ぐ・・・、この数はなかなか。』
ヨークシャー王もこの紫電の数には堪らず呻く。そして・・・
『今だ、くらえー!』
オークはヨークシャー王に隙ができたのを見逃さなかった。オークの掛け声とともに紫電が形を変えていく。
『ぐう・・・。なんだこれは・・・』
『ハッハッハー、これぞ必殺、紫電犬!』
紫電槍が凝縮された結果、それは生き物の姿になった。オーク曰く・・・あれはおれだろうか。
『ぐふ・・・、うぉぉぉぉお。』
ヨークシャー王は見事に犬に噛み付かれていった。なかなか派手な技だ。とりあえずは・・・
『いぬさまー!見ましたかアレ!』
「おう、見たぞ。後でぶっ殺す。」
『のぉぉぉお!?』
「よそ見するな。どうやらだいぶご立腹だぞ。」
ヨークシャー王が紫電犬と格闘し終えて戻ってきた。
『フー、フー。まさかあんな技があるとは。お前を少し侮っていた。』
『ふふん。お前に勝ち目はない。お前のパンチは私には効かんからな。マッサージと一緒だ。』
『さて、どうかな。本気を出そう!』
ヨークシャー王は衣服がボロボロになっているが、まだ元気だった。ようやく本気を出すらしい。その本気が本当かもあやしいが、相変わらず無手だ。腰にさしてあるヤバそうな剣は抜かないらしい。
『さて、行くぞオーク。はっ!』
『無駄だ。私にお前のパンチはきか・・・ぐっほぉぉぉぉお。』
ヨークシャー王が一瞬にしてオークの懐に潜り込んだ。オークもそれに反応するが・・・。
おお・・・。オークの体がくの字に曲がる。
さっきまでのパンチとは段違いでボディにめり込む。アレは痛い。
「オーク!大丈夫か!」
『ぐふ・・・。犬様の肉球に比べたら全然です!』
オークは満面の笑みでこっちみてきた。耐久どうなってるんだ。
『なにぃ。私のパンチをまともに食らってまだ立っているなどありえん!』
『ふっふっふ。日々鍛えられているからな。犬様に!』
・・・。おれが日々ボコってるみたいに言うな。とりあえず劣勢には変わりないが、オークも善戦している。そうとくれば・・・
「オーク!」
『はい!』
「スキルやるからもう少し頑張れ!」
『おお、頑張ります!』
おれは"ギフト"を使い使用不可スキルのSR獄炎槍Lv5をオークに譲る。光の速さで承認された。
『犬様、ありがとうございます!頑張ってみます!』
「どんなスキルかわからん、慎重にな!」
無駄かもしれないが、一応アドバイスしておく。
『さて、ヨークシャー王。いくぞ、獄炎槍!』
オークがスキルを口にすると、紫電槍と同じようにオークの体が漆黒の炎を纏う。恐らく使い方が違うんだが。
『うほー、この熱さ、気持ちいー』
オークは顔を緩ませている。熱いのも得意ときた。
『さて、ヨークシャー王よ。地獄の炎をくらえ!』
オークが魔槍ゲイボルグを振りかぶると漆黒の炎の槍が無数に出現した。紫電も壮観だったが、獄炎も凄い。
『ふん、雷が炎になっただけだ。結果はかわらん!』
ヨークシャー王は炎に動じずに迎え撃つ姿勢をとる。
『いくぞー、くらえ。必殺 獄炎犬!』
オークが漆黒の槍同士を合体させ、イヌの形をつくる。ぶっつけ本番でなぜソレができるのか。器用すぎるだろ。
『ぐ・・・こ・・・のお。うおぉぉぉぉお!仕方ない、限界突破!』
『犬様の怒りを・・・くらえぇぇぇえ!』
『はぁぁぁあ! ふはは、オークよ、良い準備運動だった。限界を超えた我が拳をくらえ!』
『ふ・・・ふごぉぉぉぉお』
オークの必殺技にヨークシャー王が素手で立ち向かう。それだけでも割と凄いのだが、ヨークシャー王が押され始めたと思った瞬間、逆に物凄い力で獄炎を粉砕しオークに腹パンを叩き込んだ。
オークがおれの方に吹っ飛んできたので肉球で受け止める。
『い・・・いぬさま。頑張りましたが・・・及ばずでした。申し訳・・・ありません。に・・・にくきゆうが・・・きもちいい・・・。』
オークはおれの肉球に受け止められながら気を失った。その顔は幸せそうな笑顔であった。
・・・。オークのやつ、せっかくスキル上げたのに瞬殺されやがった。必殺技・・・アレをやらなければもっとマシに戦えただろう。まぁスキルを使わせたのだけは評価するが。
『さて・・・よい準備運動だった。次はシバ王。・・・その前に。』
おれがオークをアイテムボックスに一時的に避難させていると、ヨークシャー王は城の周りを確認しだした。
『ふむ、勇者どもはしっかり働いているな。以前より良い動きだ。』
そう、2人の勇者はドラゴン、ジュニア達と戦っていた。おれもよく見ると・・・ケルベロスがいない。
「ケルベロスがいない、非常にまずい」
まずい事態になった。頼みの綱だったケルベロスがいない。ジュニアとドラゴンが心配になってきた。加勢に行きたいがヨークシャー王がおれを逃すとは思えない。
・・・。ヨークシャー王を早く倒さねば。
次回へ続く。
読んで頂きありがとうごさいます。次回はドラゴン達です。
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