第154話 無駄遣い
side ワンコ
ボーダー王国 近郊
「まずいな・・・。あの九尾に勇者2人が倒せるだろうか。」
戦況が大きく動いた。予想通りではあるが、ボーダー軍の聖騎士達が勇者にやられた。ナツがタツヤに加勢しニャンコ丸対勇者2人の構図となっている。流石にニャンコ丸1人で勇者2人の相手は荷が重いだろう。というかそもそも、あの九尾がニャンコ丸なのかどうかも怪しい。なぜか、ステータスにはないスキル使うし。ニャンコ丸であれば加勢は必須だが・・・。
「加勢にいくか、どうするか・・・。」
『犬様、もし行かれるなら私は後方支援に徹します!』
うーむ。判断に迷う。オークは勇者には敵わないとみて、後方支援をかって出た。オークのスキルは後方支援向きだ。自分のことをよくわかっている。だがまず、あの九尾をもう少し見極めたい。おれたちが隠れて見ている場所だと、声が聞き取れない。もう少し近づいてみる必要がある。
『おい、ドラゴン。仕方ないからココはお前に譲る、行ってこい! 』
『んなっ。いや、ここはジュニア。先輩の実力を見せれ。』
ジュニアとドラゴンが言い争っていた。2匹とも勇者の戦いを見てまだ敵わないと悟ってブルってしまったようだ。どちらも行きたくないらしい。
「とりあえずおれとオークでもう少し近づく。お前たちは聖騎士達を助けろ。」
『『りょーかい!』』
2匹ともやたらと素直に聖騎士を救助しに行った。
さて、おれたちも九尾の近くに移動だ。移動前にファントムを使い、今日だけのスキルを獲得する事にした。
◇
「オーク。そこでストップだ。ここで様子を見よう。」
『りょーかいです!』
おれとオークは、九尾対勇者2人がよく見える場所まで来た。この位置であれば会話も良く聞こえる。
『ワッハッハ。勇者よ。本気でこい!』
『・・・。』
『・・・』
九尾はおっさんみたいな喋り方をしていた。勇者2人は反応しない。操られてるからか日常会話は難しいようだ。勇者からは黒い光が漂っている。勇者を操っているものが何処かにあるに違いない。黒い光が漂っていても固有スキルが使えるということは以前のものとは少し違うようだ。
「あれ・・・。ニャンコ丸じゃないよな?」
『ですね。なんかあの喋り方・・・どこかで。』
オークも違和感に気づいたようだ。おれも薄々そんな気はしていたのだが、そんなはずはないと思いたい。だってヤツがボーダーに行くことは会議で却下したのだ。
『ガッハッハ。効かんぞー。それ、グラビティクロウ!』
九尾がどっかで見たようなフォームで爪のスキルを繰り出す。勇者達はそれを交わし反撃に出る。ナツが固有スキルから万華鏡を発動し、タツヤはそれに向かって極魔法を連発する。魔法が万華鏡のように乱反射し竜巻となって九尾を襲う。九尾は避けきれずもろにそれをくらった。聖騎士がやられたものの倍くらいの威力がありそうなやつだ。
『うぉ、うぉぉ、うほぉぉぉお。これはすごい!やるな勇者!』
九尾はナツの固有スキルを受けても平然としていた。これはもう確定だ。なんてヤツだ。さっきまで心配してたのに、心配して損した。これはお仕置きしなければ。
◇
『ワッハッハ。楽しいぞ勇者!』
『・・・。』
『・・・。』
九尾がバカ笑いしている。いや、九尾では無い。ケルベロスだ。実際今のところ余裕そうなケルベロスだが、攻撃スキルはそこまで強力なものを持っていないため、勝負は平行線であった。さて・・・
『じゃぁ、いくぞー。』
「おうよ、来てみろよ。ケルベロス!」
『おうよ、いくぞー!』
ケルベロスが一人で盛り上がっていたので、話に割って入ってやった。
『んお? 。ケルベロス?』
ケルベロスは急に返答が返ってきた事にびっくりし、辺りをキョロキョロしている。
『んー、どっからだ?』
「よう!」
『・・・・・・。』
「久しぶりだな。なにやってんだ?」
ケルベロスのやつがおれに気づいた。おれを見た瞬間、目が泳ぎ始める。
『ハ・・・ハジメマシテ。どちら様でしょうか。』
ケルベロスのヤツしらを切る作戦に出たようだ。そうはさせるか。
「・・・。元気そうだなぁ。ケルベロス。しかしまぁびっくりしちゃったぞー。まさかこんなところにいるとは。」
『は・・・はて。なんのことやら。私は九尾デスよ。』
九尾の9本ある尻尾のうち半分くらい垂れ下がってきた。あくまで、しらを切り通す作戦らしい。こうなれば・・・
『そ・・・そんなことより勇者を倒しま、あ!一緒にヤリマショ・・・!』
「うるせー、このやろぉぉぉぉ。"天上天下"!」
ノリでさっきファントムで得たばかりのスキルを使ってしまった。九尾がおれの目線より下になるように押しつぶされる。天上天下は、対象にこうべを垂れさせるスキル。くらったものは、使用者の目線より下となる。ただでさえ目線の低い犬のおれが使えば割と最強である。ケルベロスは床に這いつくばっている。
『ぬ・・・ぬぉぉぉぉぉお。ぐおー。なんじゃこりゃー。すまん!いぬちゃーん。』
ケルベロスがようやく白状した。
「バカヤロー! ハウスだ、ハウス!」
こうして、渋々ながらおれとケルベロスで勇者を倒すこととなった。勇者2人を前に貴重なスキルを無駄遣いしたのであった。
次回へ続く。
読んで頂きありがとうごさいます。ちょっとばたついてて話は出来ていたのですがアップできてませんでした。ケルベロス合流ですね笑
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