第153話 利害の一致
sideワンコ
ボーダー王国 王城
『父上! 勇者おれが倒す!ドラゴン、お前はどっかに隠れてろ!』
『むむ、ジュニアこそおれの後ろに隠れていろ!お前じゃ敵わん!』
ジュニアとドラゴンが言い争いしていた。どちらが勇者を倒しにいくかで揉めていたようだが。
「まてまて、お前たち単独で勇者に敵うわけないだろ。とりあえず一緒にいくぞ。」
ジュニアはまだ生まれて間もない。鳳凰の息子なので、既に相当強いが、勇者に単独で勝てるかと言われると微妙だ。ドラゴンなんて以ての外である。それにジュニアになにかあったらおれが鳳凰にぶっ殺される。
「とりあえず一旦遠目から戦況を確認するぞ。」
『『りょーかい!』』
オークがドラゴンに乗り、おれはジュニアに乗って、ドンパチ戦っている方向へと向かうことにした。
◇
そろー。
「お、ここなら見えるぞ。」
『おー、おお!闘ってますね!聖騎士達は・・・』
おれたちは戦況が見えるギリギリの位置までやってきた。オークが気になっている聖騎士達だったが、1人の勇者と渡り合っていた。あれは・・・。ナツか。ナツには黒い光が漂っている。
あれは・・・。封印石で操られていたケルベロスにそっくりだな。ということは、操られているな。
『いくぞー、お前たち!勇者を無力化せよ!』
騎士団長と思われる人物が的確に聖騎士達に指示を出していた。極魔法の応酬、レベルの高い剣術。話に聞いていた通り、互角に勇者と渡り合っていた。
『おお、噂に聞いていた聖騎士!なかなかやりますね。』
オークがそれを見て感激している。確かになかなかカッコいいものがある。恐らく、オークもシバでこんなのを作りたいんだろう。
だが、一つ引っかかる。ニャンコ丸は勇者1人くらいなら抑え込めると言っていた。今回攻めてきているのは勇者2人だ。勇者タツヤも抑え込めるのだろうか。タツヤはと・・・。
おれがタツヤの方をみると・・・
「そんなばかな。オークあれって。」
『あれは・・・。九尾ですね・・・。あれ?ニャンコ丸さんはさっき・・・。』
タツヤの方を見ると九尾が単独でタツヤを抑え込んでいた。九尾って2匹もいるのか。
「ふむ。まぁ色々気になるが、とりあえずおれたちはこのまま様子を見よう。助けが入りそうなら参戦するぞ。」
『『りょーかい!』』
少し混乱したが、とりあえず様子を見る事とした。
◇
sideケルベロス、聖騎士達
『ワッハッハ。ボーダーに来てよかったぞ!ニャンコ丸に感謝だな。勇者と戦えるとは。ぬはははは』
ケルベロスは勇者タツヤと戦っていた。その姿を九尾に変えて。九尾に変えたのは、ニャンコ丸が戦っていると思わせるためだ。突然ケルベロスの姿になって戦おうものなら、味方であるはずの聖騎士達にも襲われかねない。事前に聖騎士達にケルベロスの正体をバラしても良かったが、余計な波風は立たせたくないとのニャンコ丸の配慮であった。
そのほかにも、ニャンコ丸は自身が大規模転移魔法を使うことになるのを見越し、ケルベロスに代役として戦ってもらうように頼んだのだ。大規模転移魔法を発動すると、自身は疲労で戦えない。ニャンコ丸が戦えないとなると、聖騎士達の士気に影響が出る。
ボーダーに行きたいケルベロスと自身の代わりに戦ってくれる強者を探していたニャンコ丸、完全に利害が一致したのである。
『ほれ! ヘルファイア!』
『・・・。極魔法サンダーバレット』
ケルベロスとタツヤの魔法がぶつかり合い物凄い衝撃が辺りを劈く。お互いの魔法はほぼ互角である。
『ふはははは。ダークバインド!』
『グラビティ・・・。』
間髪入れずに極魔法の応酬が始まる。
『う・・・。うぉぉ。サチ様・・・。何という強さ。それに新たな力まで・・・。』
ナツと戦闘中の聖騎士達が九尾を見て思わずうなる。ちなみに新たな力というのは、ケルベロスの本来持っている力である。固有スキル完全変化で九尾が持っているスキルや魔法まで本当は使えるのだが、流石のケルベロス。その辺は全然気にせず戦っている。
『ぬはははは。勇者よ。その程度か。固有スキルを使ってこい!』
『・・・。』
ケルベロスは勝負が楽しすぎて、のりにのっている。その声は辺りに響き渡る。タツヤはその挑発には応じない。
『サチ様・・・。なんか言葉遣いがオッサンになってしまった。新たな力の代償か・・・。』
聖騎士達が少し残念がっている。そしてその時・・・
『サイレントモーション 一式・・・。』
『が・・・。なんだ。急に・・・。残像・・・じゃない?』
ナツが固有スキルを使用した。ナツの体がスローモーションの様に動き出す。ナツが動いた後は、ナツの残像が残る。そして、一式へと切り替えたことによって・・・。
その残像が実態となって動き出す。ワンコのダブルの簡易版のようなものだ。急にナツが分身したことにより聖騎士達は驚き動きがとまる。その隙をついて分身達が捨て身の攻撃を繰り出す。
『ぐ・・・し、しまったぁぁぁ・・・。ぐ・・・。』
聖騎士達は全力で防御に回るが、それがナツの狙いであった。ナツ分身の捨て身の攻撃によって、聖騎士達が一箇所に固められる。
『万華鏡ホーリーバースト、ファイアバースト、ウインドバースト』
『ぐ・・・。ぐぁぁぁあ』
ナツは無慈悲にもどんどんスキルを積み重ねていく。万華鏡によって竜巻のような空間が出来、その中を属性3種類の魔法が荒れ狂う。そして・・・
『ぐ・・・。王様・・・サチ様。も・・・申し訳ありません。私達だけでは。あとは頼みます。』
聖騎士達はナツによって倒された。これによって戦況は大きく変化する。ナツがタツヤに合流したのだ。勇者2人対ケルベロスの戦いが始まった。
次回へ続く。
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