第152話 昇天
ボーダー王国 宿屋
「おい、オーク。なにがあった!」
『い・・・犬様。それが、急に他の者たちの床に魔法陣が現れまして、殆どが何処かに消えてしまいました!私たちは全員無事ですが。』
宿屋に戻ると直ぐに安否確認をした。どうやらおれたちは全員無事らしい。というより、敢えておれたちを巻き込まなかった・・・と言った方が正しいのだろうか。
もしヨークシャーが攻めてきていたとしたら、おれたちが残された意味は・・・。無事だったというよりは、おれたちだけ無事じゃなかったといった表現の方がしっくりくる。
「とりあえず情報収集だ。なにかが攻めてきた事には間違いないだろう。ジュニアとドラゴンだと目立ちすぎるな。よし、オーク!」
『はい、どうしましょうか!』
オークが直ぐに返事した。準備万端なようだ。流石はオーク。いい返事だ。では・・・
「オーク、とりあえず様子を見てこい!全力肉球パンチ!」
『ぐふぅぉぉぉぉお』
オークがおれのパンチによって空中に高々と打ち上げられる。咄嗟に考えた作戦だ。オークに空高くから状況を俯瞰してもらう作戦だ。
『うわぁぁぁぁぁあ』
オークが落っこちてきた。オークは華麗に着地を・・・決めない。地面に頭からめり込んでいった。1日に2回めり込むやつも珍しいだろう。しばらくしてオークが復活してきた。
「オーク、どうだったよ。」
『はぇ? 申し訳ありません。ちょっと良く見えなかったのでもう一回お願いします!』
オークがおかわりをご所望してきた。なんてやつだ。全く見てなかったらしい。仕方ないのでもう一回ぶん殴る。
「どうだ?」
『はひ、なんかボーダーの軍が2人の人間と戦いを繰り広げておりました。』フンフン
なるほど。敵は2人か。オークは昇天(興奮)しながらも今度はしっかりと見てきたようだ。
「よ・・・よし、とりあえずボーダー城まで行くぞ。」
『はひ!』
オークが気の抜けた返事で応えた。・・・こいつおれの肉球を凝視してくる。さっさと移動する事にした。
◇
ボーダー城
「ボーダー王、何事だ。」
『おお、シバ王。』
おれたちが城に着くとボーダー王は少し悩んだ表情をしていた。コボルトに通訳してもらう。敵が攻めてきたにしても、浮かない表情だ。
「どうした。」
『いや・・・。ふむ。どうしたもんか』
ボーダー王は何故か煮え切らない。
『いや、攻めてきたのが、勇者2人であった。倒せるかはわからないが、もし倒せたとしても、我が国が勇者を討ち取ったと言うことになってしまう・・・。』
・・・。なんてことだ。まさか勇者を戦争の特攻隊でぶっ混んでくるとは。2人の勇者。以前にリンがナツとタツヤの姿が見えないと言っていた。タイミング的にほぼ間違いなく、その2人だろう。
「ピットブルとシェパードの勇者か?」
『・・・察しが良いな。その通りだ。勇者と同等くらいの戦力は持っていると自負していたが、まさか勇者が攻めてくるとは。なんとか攻撃を凌いではいるものの・・・。』
確かに。相手が勇者とあっては対処に困る。来たる魔王の為に、勇者は貴重だ。普通の国にとっては、そう簡単に討ち取ってしまって良い存在ではない。
「とりあえず無力化はむりなのか?」
『ああ、今それを試みている。生かして捕えるしか手はない。魔王がいない今の世の勇者の力は強くはあるが、莫大ではない。』
「助けがいるか?」
『とりあえずは今互角に渡り合っている。戦況を見て参戦をお願いしたい。』
「承知した。」
状況はある程度掴めた。しかも勇者の強さは魔王がいるのといないのでは変わるとしった。勉強になった。あとは戦況の確認だ。おれたちがボーダー城を後にしようとすると・・・
『いぬさん・・・。もしもの時は頼みましたよ。』
ニャンコ丸が物凄い体調が悪そうにして出てきた。
「どうした?勇者にやられたか?」
『いえ、大規模転移魔法を使用したので少し疲れました。』
そういうことか。領民を移動させたのはニャンコ丸だったのか。
『私はしばらく戦うのが厳しそうです。なんとか、勇者の無力化を・・・。うう・・・。』
そう言うとニャンコ丸はその場に倒れ込んだ。だいぶ無理をしたようなので、コボルトとコーギーに後は頼んでおいた。
さてと・・・
「とりあえずオーク。お前はドラゴンに乗れ。おれはジュニアに乗る。戦場までいくぞ。」
『りょうかひしました!』
まだ半分天に召され気味のオークにも伝わったようだ。なるべく急がないと。ボーダー軍である聖騎士達が全滅するのも時間の問題かもしれない。
次回へ続く。
読んで頂きありがとうごさいます。次回はケルベロス大活躍です。
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