第149話 荷物
ボーダー王国 玉座の間
『よくぞ参られた。シバ王よ』
「こちらこそ遅くなって申し訳ない。」ゲッフ
城下町でたらふく食べたおれたちは、ようやくボーダー城までたどり着いた。お腹いっぱいだ。
美味しいものがいっぱいで限界を超えて食べてしまった。
『いぬ様。いつもより重量が・・・。』
通訳のコボルトがいつも通りおれを抱えているが、重そうにしている。とりあえず頑張ってみる。
にしても、異世界召喚者のニャンコ丸が居心地が良いと感じている理由がわかった気がする。食べ物も美味しいし城下町も結構発展している。飲食店や露店が立ち並び、雑貨屋、武器屋・服屋なども充実している。ニャンコ丸の知恵が入っている気もする。ニャンコ丸が言ったように、勇者が召喚出来ていれば大陸一の大国になっていたというのもあながち間違っていないかもしれない。
そして・・・、今おれの目の前にはボーダーの王様。じいさんを想像していたが、中年のオヤジといった感じである。貫禄がある。しかも鑑定眼で見てみると割と強い。今まで会ってきた王達とは一味違うようだ。
『さて、シバ王よ。ご存知だとは思うが、今我が国はヨークシャー王国から狙われている。本来は礼をもってもてなすのが筋だとは思うが、それはまたの機会に。』
「ああ、わかっている。問題ない。それにしてもこの国は良いな。とてもよい発展の仕方をしている。」
喋りにも王としての威厳が感じられる。まだわからないが、印象としてはなかなか良い王だ。
『お褒めの言葉と受け取っておこう。さて、これからどうされる?遅かれ早かれヨークシャーが攻めてくると思うが。』
ふむ。これからどうするか。他の皆はどう言うだろうか。まぁ考えるまでもないか。
「おれたちはしばらく滞在させてもらおうと思う。なにかあれば力になろう。」
『それはありがたい。だがまずは自国でなんとかする事にしよう。勇者1人くらいであればなんとかできる自信はある。』
「それは心強いな。わかった。」
凄い自信を感じる。これは本当にそれなりの戦力を有しているのかもしれない。聖騎士か。騎士団長がどんなやつか少し気になるな。それはそれとして1つボーダー王に気になっていることを聞いてみよう。
「ひとつ、知ってたら教えてもらいたい。」
『うむ、知っていることなら教えよう。』
王は快く応じてくれた。
「ヨークシャーに勇者がいるのかを教えてほしい。」
『ふむ・・・。いると聞いている。先代から今の王に変わったタイミングで勇者召喚を行ったようだ。だが勇者の顔を見たものはいない。』
なるほど。おれの読みは外れていたのか。ヨークシャーは他国の情報を得るために、勇者がいると騙っているのだと思っていた。勇者が召喚出来ていないと会議には出席できないときいている。それならもう一つ・・・。
「そうか。ちなみにボーダーには勇者はいるのか?」
『いや、いない。以前はいたが今はな・・・。貴殿も知っていると思うが勇者が召喚出来ていなければ会議に出席できない。我が国が会議に出席出来ているのは特例だ。』
なるほど。色々辻褄が合わないと思っていたが、ニャンコ丸の前に勇者がいたのか。それにこんな数年で、立派な城下町が出来るわけない。それにしてもニャンコ丸はその事をなにも言ってなかったな。その特例とやらが、勇者を失った事となにか関係してるのかもしれないな。
「ふむ。質問に答えていただきありがとう。ではしばらくこの国でゆっくりさせてもらう。」
『いやいや、またなにかあれば城によってくれ。もてなせずに申し訳ない。』
こうしてボーダー王との初対面は終わった。なかなか良い王であった。勇者の件は嘘をついているとは思えなかった。まぁヨークシャーに勇者がいるつもりで構えていた方がよいだろう。とりあえず皆が滞在している宿に戻ることにした。
◇
side ニャンコ丸
『失礼します。王様、いかがでしたか?』
『おお、サチ。ふむ。アレは敵にまわさないほうが良いな。私の読み通りであったわ。』
『そうですね。バケモノ級の強さです。』
ニャンコ丸が王と談笑している。そう、この国の発展はニャンコ丸の功績によるところも大きい。ニャンコ丸が召喚される以前も国としては大成していたが、ニャンコ丸を召喚したことによって、異世界の知恵を更に取り入れた国づくりが行われているのだ。
『とりあえずサチよ。シバ王達をよく連れてきた。なにかあれば戦力になる。』
『ええ、その為に連れてきました。それにもう一つ奥の手をシバから持ってきました。』
ニャンコ丸がシバから持ってきた大きな荷物も開ける。
『おお、んー、コレは?』
『ええ・・・。道中で悪さした時もありましたが、安全ではあります。性格には難ありですが強さは本物です。協力してくれます。』
ニャンコ丸の荷物が開けられる。そこには・・・
『いやー、やっとついたな。日差しが眩しい! おお。ボーダーの王よ。任せておけ。ワシにかかれば、ヨークシャーなんかイチコロよ。ワッハッハ!』
ケルちゃんがそういいながら、元気そうに出てきたのであった。ワンコが居たらブチ切れるに違いない。
『ケルちゃん。ヨークシャーが攻めてくるまでは城から出ちゃだめですよ。連れてきたからには協力する約束は忘れないでくださいね。』
『ん?ああ。ニャンコ丸。問題ない!ではワシはゆっくり過ごさせてもらう!またな。ワッハッハッハッハ』
そう言い残してケルちゃんは城のどこかへと走っていった。残された王とニャンコ丸は・・・
『大丈夫なのか?』
『ええ、強さは本物です。』
『そうか。ではヨークシャーを迎え撃った後は、攻め入るぞ。いよいよか。』
『・・・では私は私の目的を果たします。それ以外は協力を惜しみません。ボーダー王国には本当に感謝しています。』
『すまないなサチ。利害は一致している。よろしく頼む。』
『ええ。承知しました。』
2人は誰にも聞こえないように言葉を交わすのであった。
次回へ続く。
読んで頂きありがとうごさいます。まさかのケルちゃんが・・・。まぁわかってたと思いますが。
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