第144話 決意
シバ王国 シバ城 side 相棒ワンコ
『おい、お前。我をがっかりさせるなよ』
うぉ、鳳凰のプレッシャーが跳ね上がった。リンに向けていたものをおれに全振りしたようだ。おれの尻尾は今にも萎びそうだ。逃げ出したい。
「いくぞ、こんにゃろー」
おれは自分を鼓舞して一歩を踏み出した。
『ほう、我の威圧をものともせんか。面白い。』
「大丈夫なわけないだろ。いくぞ・・・疾風迅雷」
風と雷をその身に纏う。
『はっはっは。それを使う奴は久しぶりだな。面白い、こい!』
おれは鳳凰に向かって突進する。鳳凰は例の如く羽根でガードするが
「うぉぉぉぉぉお!いまだ、巨大化」
『ほぅ。面白い! ふん!』
鳳凰は巨大化して突進したおれに笑みを浮かべ踏ん張る。おれが突進しても余裕で防御している。
「さらに、メテオ!」
『な、なんだぁ? ぐ・・・ぐぉぉぉぉお。負けんぞぉぉお!』
おれはその身にメテオを受け止める。落下してきた隕石の衝撃はおれの疾風迅雷の糧となる。
「このくそー、更にメテオ追加ぁぁぁあ!」
『う、うぉぉぉぉぉお。わ・・・我のガードが。ぐぉぉぉお』
ついに鳳凰のガードをぶち破り突撃に成功した。この機を逃さない。
「こんにゃろ、こんにゃろー!」ベシベシ!
『ぐっふぅぅぅぅぅう』
ガードが空いた隙をついて突撃しまくる。鳳凰が少し効いてる感じの声を出す。そして・・・
「ち・・・。疾風迅雷が・・・。」
『はっはっは。面白いぞ。我が普通にダメージを受けるとは驚いたぞ。』
残念なことに7分間があっという間に経過してしまった。疾風迅雷が解除される。鳳凰にはそこそこダメージを与えたが、全然余裕そうだ。これで納得してくれればありがたいが・・・。
『面白いぞ。この感覚! どれ、我も少し本気になろう。』
・・・いかん。むしろ逆にやる気を出してた。
『さて、いくぞ。フェニックスフレイム・・・。』
鳳凰がその喉を膨らませたかと思うと、その巨体からまるで生きているかのような炎の鳥のブレスが放たれた。
「うわぁぁぁぁあ。逃げろー」
猛ダッシュで逃げまわるもそのブレスはおれを狙って追跡してくる。逃げ切れる気がしない。
「仕方ない、こい、このやろー」
このまま逃げ続けてもキリがない。トロピカルボディがあるので試しに炎に少し触れてみて、大丈夫そうなら面倒なので全て受け切ることにする。防御の姿勢をとり恐る恐る炎に触れる。
『お、諦めて受けるのか。面白い。やってみろ。』
「こい、このくそー。!! わ、あっちゃっちゃっちゃ。うぉぉぉ。」
『わっはっは。我の炎は簡単には防げんよ。心意気は褒めてやろう。』
「フー、フー!」
ちょっと炎に触ってみたが、おれの素晴らしい毛並みの一部が黒焦げになってしまった。触るのちょっとにしておいてよかった。この炎は直接触れてはいけないやつだ。おれのトロピカルボディと超回復のコンボでも少しずつダメージが蓄積しそうだ。仕方ない。
「いくぞ、天衣無縫。」
おれは金色の闘気を纏い、フェニックスフレイムに突撃し相殺した。天衣無縫は通常、ダメージを無効化する効果を持つが・・・
『ほう、当たって相殺するとは。普通は当たるだけで黒焦げだがな。その闘気も使えるやつは久しぶりだ! では次だ。』
「ゲホゲホ・・・。うるさい! こっちはお陰で半焼けだ。げっ・・・。」プスプス
おれが炎を相殺した煙をかき分け、鳳凰と対峙すると、鳳凰は次の攻撃に移っていた。まじで勘弁してほしい。全身の毛もチリチリだし。
『さぁ、防いでみせよ!次元穿』
鳳凰が鉤爪を一点に集中して、超速の牙突を放ってきた。正直これは食らったら死ぬやつだと思う。
「殺す気か、このやろー。ほ・・・鳳凰眼!」
とっさに鳳凰眼でスキルを解除する。牙突は通常の突きに戻り、ギリギリ躱す事ができた。
『わっはっは。我と同じ目も使えるとはやるな。次だ次! バーニングエクスプロージョン!』
鳳凰のその身に纏った炎が唸りを上げおれに襲いかかる。炎は爆発を繰り返して激流のように押し寄せる。
「く、こんにゃろー。いくぞ、ぶっつけ本番、唯我独尊!」
おれはとっさに、ファントムにて今日だけ使えるスキルを使用した。相棒には申し訳ないが、どうこう言ってられる状況ではない。
「おお・・・。これは・・・」
『おお、我の炎が。』
激流にて押し寄せてきた炎だが、おれが飲まれる直前、唯我独尊によってその殆どがピタリと止まる。鳳凰の炎をおれの支配下に置いたのだ。制限時間は1分、もうおれにはほぼカードが残されていない。
「いくぞ! 自らの炎をくらえー!」
『ぐ・・・ぐぉぉお。久しぶりに楽しいぞ。ふはは。』
鳳凰は自らの炎によって行く手を阻まれる。これがおれに残された最後の一手だ。
「さぁ、鳳凰。おれの最後の一手だ。くらえ、ドラゴニックスタンプ!」
上空が雲に覆われる。それを見た鳳凰は目を見開いた。
『む、この気配。待て、はっ!』
鳳凰がここまでで一番の真剣な表情になり、自身の炎を振り払い上空に飛ぶ。
『ふむ、そのスキルまであるとは我も予想しなかったぞ。それは少し困る。今ヤツには会う気がしない。勝負はこれまでだ。・・・鳳凰眼。』
鳳凰がおれのドラゴニックスタンプをかき消した。最後の一手も完膚無きまでに封じられた。上空の雲間がかき消える瞬間、舌打ちが聞こえた気がした。
鳳凰眼によって、上空は先程までの晴天に戻り、おれたちが暴れまわり荒れ果てた大地は何事もなかったかのように、元の姿を取り戻した。・・・鳳凰眼にここまでの力があっただろうか。
とりあえず、もう一度ドラゴニックスタンプを使うことも考えたが、鳳凰を怒らせてしまいそうな感じがしたので、大人しく従うことにした。
◇
『わっはっは。我とここまで戦えるとは。久しぶりに楽しかったぞ。』
「急に現れてなんなんだ。お前の子どもならここにはいないぞ。」
『む、我の目的もわかっておったか。頭もそれなりにまわるようだな。よし、合格だ!』
鳳凰との勝負がおわった。なんとかおれも鳳凰のお眼鏡に叶うことが出来たらしい。合格とのことだ。
『おい、ワンコといったな。お前の存在はじじいから少し聞いておる。お前なら我の息子も預けられるな。しばらく預けるぞ。』
「おい、まてまてワンコ? んー、じじい?」
鳳凰はおれのことをワンコとよんだ。しかもじじいときた。まさかのじじい(神さま)絡みとは。じじいが絡むとほんとロクなことがない。次会ったら何かの刑に処さねば。
『今日の我は機嫌が良い。少しアドバイスをくれてやろう。まずはリンとかいったな。お前はまだまだだ。大精霊の力は我と近いものがある。もう少し頑張れ。まずは精霊界に行くべきだな。』
『はん、あんたなんかすぐにリンちゃんがボッコボコにするんだからね。あと私のがすごいんだから。みてなさふぐぐぐぐ。』
鳳凰が律儀にリンにアドバイスを送っていた。大精霊がまた突っかかり始めたのでリンが口を塞いでいた。
『次はそこのコボルト達、お前たちは上位の精霊になれればもっと強くなるぞ。お前たちも精霊界だ。ちなみに行きかたは知らん!』
『上位! が・・・がんばりますです!』
コボルト達はペコペコしてお礼を言っていた。
『最後にワンコ。お前はほっといても強くなる。特にない。』
「えー、お前の子どもの面倒をみてやるんだぞ。なんかないのか。」
『む、そうだったな。それならば、1つ教えてやろう。世の中にはさっきお前が使っていたスキルの更に上がある。我らの領域に踏み込んでこい。』
・・・。なるほど。URスキルの上があったのか。通りで殆どのURスキルに制限がついていると思った。
『では、我はいく。さらばだ。息子を頼んだぞ。』
鳳凰はそう言うと、飛び立っていった。もう来ないでほしい。
『いぬさーん。無事で良かったです。』
『お犬様ー。すごかったです!』
『ま、まぁアンタならなんとかすると思ってたわ。』
鳳凰がその場から居なくなるとリン、コボルト達、大精霊がおれの元に駆け寄ってきた。
「な・・・なんとかなったな。」
みんなで今回の頑張りを労いあう。これにて一件落着である。今回はなんとかギリギリ乗り切ることが出来た。そして良い経験になった。
せっかくシバの建国をここまで頑張ったんだ。もっと強くならなければ国を守れない。強くなることを心に誓い、おれは犬小屋に戻ることにした。
次回へ続く。
読んで頂きありがとうごさいます。鳳凰強かったですねぇ。
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⋀_⋀
(・ω・)
/ U ∽U\
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