第125話 三つ巴
シバ王国 闘技場
「ほ・・・ほげー。」
『すごいですね・・・。』
決勝戦、ニャンコ丸と勇者ナツの一騎打ちかと思われたが、まさかのコーギー無双、観客も唖然として開いた口が塞がらない様子だ。まぁこうなった要因は"油断"であるのは一目瞭然だが。
『油断大敵だワン。降参するワン。』
コーギーはダウンした2人の周りを走り回る。その間に攻撃しろと言いたい。
ビーストモードによって見た目は狼獣人となっているにもかかわらず、語尾はワンだし。色々とツッコミどころ満載で違和感しかない。
『・・・ふう。驚いたよ。正直油断した。僕の鑑定でも、見えなかったからね』
『・・・ッ。私もちょっと反省です。』
『まだ変身しただけだワン』
ナツとニャンコ丸は顔をしかめながらも立ち上がる。
倒れたのに追い打ちをかけて、勇者をボコボコにしてもらいたかった。
『これは悠長にはしていられないね。いいだろう。僕の固有スキルを見せよう。』
『ええ、私も手抜きはやめた。』
『出し惜しみ無しだワン』
ナツの固有スキルが見れそうだ。ニャンコ丸も何かありそうだ。どんなものか楽しみだ。
「勇者の固有スキルがでるな。」
『はい、どんなものでしょうか』ペタン
おれはコボルト含む周りに気を張る。コボルトは緊張して尻尾がたれてしまっている。何かあればおれがなんとかしなければならない。
『ではいくぞ・・・。"サイレントモーション零式"』
ナツの体が突然スローモーションのように動き出す。時間の流れが変わったわけではない。ナツの動いた後にはいくつもの残像が残される。
『これは・・・。どういうことでしょう』
『すごいワン。トリックだワン。』
2人とも突然の現象に困惑している。かなり汎用性の高そうなスキルだ。
『さて・・・ここからだ。二式・・・』
残像達がそれぞれの意思があるように動き出した。
『な・・・。』
『なんだこれだワン』
『さて、君たちも奥の手があるなら出さないと、終わってしまうかもしれないよ。これで最低条件は整った。』
動き出したナツの残像が闘技場を取り囲む。
『さぁ、お二人さん防げるかな・・・"万華鏡 ホーリーバースト"』
残像達が聖属性の魔法をお互いの残像に向けて放った。放った魔法は残像ではないようで、それは互いに乱反射し速度・威力をあげていく。以前に見た竜巻っぽい。
『さらに・・・"ファイアバースト"』
その中に炎属性の魔法も加わる。どんどん強化されていく。おそらく、放った魔法によって威力をあげていくのだろう。
『ぐ・・・、これが勇者か。今の私の力がどれだけ通じるか。・・・"降臨"』
ニャンコ丸が万華鏡内の魔法の荒波に耐えきれず、固有スキルを使用したようだ。スキル名を口にした瞬間、
「なんだー? うおー! あいつどっかで・・・」
『で・・・出たー! 』
ニャンコ丸は九尾に姿を変えた。
おれもビックリしたが、隣のコボルトは尻尾が萎びてきている。
『きゅ・・・九尾だワン!大変だワン!倒すワン!』
『九尾!モンスターだった?いや、モンスターを呼んだのか・・・!』
ナツは一瞬動揺したものの直ぐに気を持ち直す。コーギーは突然現れた九尾を倒す気満々だ。ちなみに観客は大混乱である。
にしてもあの九尾。シュナウザーの時にいたやつだ。
『では行きます。"狐火"』
『九尾がニャンコ丸の声だワン!』
九尾を守るようにして数百の炎が現れる。狐火はナツの万華鏡に少しづつ乗り移って数を増やしていく。なかなかに美しい。あとコーギーは雰囲気がダレるからやめてほしい。
『私もいくだワン。』
コーギーも必殺技を出すようだ。
『グールグルグル』
コーギーがその場で回転し始めた。物理的に竜巻を起こしている。何気にこいつが1番すごい気がしてきた。
スキル同士がぶつかり合う。
万華鏡・狐火・グルグルがぶつかり合って観客席をも吹っ飛ばし始める。
『い・・・犬殿。これはまずいのでは。』
『観客に被害が出そうですわね。』
バーナードとプードルが座席に踏ん張りながら状況分析する。確かにまずい。大混乱が悪化している。更にまずい事も起こりそうだ。
『あ、時間切れだワン。まずいワン。』
やっぱりか。URスキルは条件付きが多い。
スキルのぶつかり合いの真っ只中にいるコーギーのビーストモードが切れるらしい。おれは咄嗟に闘技場に踏み込んだ。
「おい、コーギー!そのままじっとしてろ。」
『わかったワン。これ食らったら死ぬワン』
コーギーのビーストモードが解ける。ここしかない。
「今だ! "鳳凰眼"」
おれは視界にうつる全てのスキル・魔法を強制解除した。
『すごいワン。助かったワン。』
コーギーをなんとか無事に救出した。
次回へ続く
読んで頂きありがとうごさいます。皆さまわかってたと思いますが、結局大荒れになるのです。
ブックマーク・評価いただけると大変やる気が上がりますので、よろしくお願いします
⋀_⋀
(・ω・)
/ U ∽U\
│* ブ *│
│* ッ *│
│* ク *│
│* マ *│
│* │ *│
│* ク *│
│* 評 *│
│* 価 *│
│* し *│
│* て *│
│* ね *│