第124話 容赦ない攻撃
シバ王国 闘技場
『いやー、ついに決勝ですね。犬殿』
『とても良かったですわ。ジンに頼りきりで人材の確保を怠っているのに気づけましたし』
いよいよ決勝戦だ。バーナードとプードルもテンション高めである。ニャンコ丸・コーギー・ナツが臨戦態勢にはいる。オークの掛け声とともに試合が始まった。
『よろしく。2人とも。』
『よろしくね。お二人さん』
『よろしくだワン』
挨拶も束の間、最初にナツがニャンコ丸に斬りかかる。ニャンコ丸は杖を取り出しそれをいなす。
『あら、せっかちはモテないわよ』
『僕はタツヤのように甘くはない』
『す・・・すごい速度だワン』
2人が猛攻を繰り広げている。コーギーは暇そうだ。
『さぁ、そのフードをとってもらおうかな。・・・瞬剣 桜吹雪。』
『ピットブルの脳筋とはちがうようね』
『うひゃー、凄いワン』
ナツの構える聖剣の刀身がブレて消えたかと思うと、同時にニャンコ丸の視界から無数の剣戟が現れる。スキルの猛攻に徐々にニャンコ丸が劣勢になってきた。ナツは魔法を使う気配すら見せない。
コーギーは正座にて2人を見守っている。
それからしばらくナツが攻め続けた結果、遂に均衡が崩れた。
『さぁニャンコ丸、姿を見せてもらおうか。瞬剣 五月雨』
『く・・・。はやすぎる・・・。』
『流石勇者だワン。』
剣戟のこれまで描いていた軌道が、ニャンコ丸に降りかかるように急激に変化する。ニャンコ丸はその変化に対応できずその羽織っていたものがナツによって剥ぎ取られた。その瞬間
『チェックメイト・・・極魔法ファイアバレット。』
『ぐ・・・ぐふ。流石ですね。流石は勇者』
『魔法が効いたワン。ビックリだワン。』
ニャンコ丸に初めて魔法がヒットした。魔法が効かなかった理由は、やはり羽織っていたアイテムの効果だった。そしてその姿が露わになる。その姿は・・・ナツと同い年くらいのショートヘア丸顔の可愛らしい女の子だった。
『君は・・・どこかで』
『顔を見られてしまいましたね。あまり人前に出るのは好きではないのですが。』
『かわい子ちゃんだワン！』
『君はたしか、ボーダーの召喚者だね。一度遠くから見た記憶があるよ』
『あら。覚えられていましたか。それもあって隠していたかったのですが。』
『ボーダー！私の村の近くだワン！』
ニャンコ丸は自身の髪を整えながら応える。
コーギーはいちいちうるさい。
『さて、魔法も当てたし、タツヤに何を言ったのか教えてもらえるかい？』
『そうねえ。約束だったしねえ』
『そうだそうだ。約束守るワン』
ニャンコ丸は少し迷っていたが・・・
『いえ、ピットブル王国の心配をしただけです。』
『ピットブルの？なにかあったのか？』
『気になるワン』
ニャンコ丸がなかなか核心を言わない。
『そうですねぇ。それならあなたの固有スキルを見せてくれたら全部言ってもよいですよ』
『僕の固有スキル？ここでは使いたくないが・・・』
『仕方ないワン。出し惜しみ無しだワン。私も出し惜しみしないワン。』
ナツが迷っている。奥の手を隠したい気持ちもわかるがどうするだろうか。
『あら、私は別にどちらでもかまわないけど』
『ああ、わかったよ』
『行くワン。ビーストモード』
ナツは固有スキルを見せる気になったようだ。
ニャンコ丸とナツがお互い納得したその時、コーギーの姿が犬から狼に変貌した。狼獣人だ。
はなからコーギーをなめてかかっていた2人は、急な変貌に気づいていない。
『では参るワン！』
『な！』
コーギーが目にも留まらぬ速さでナツの背後に回る。ナツはそれに辛うじて反応し背後を振り向くが、
『ここだワン！』
『がはっ・・・』
ナツの背後に回り込んだかに見えたが、コーギーは気づいたら正面でナツにボディーブローを叩き込んでいた。ナツが倒れこむ。そして
『ニャンコ丸も覚悟だワン！』
『なっ・・・かは・・・。』
ナツにボディーを叩き込んだのも束の間、気づいたらニャンコ丸の正面に立っていた。同じくボディーに1発ぶち込む。ニャンコ丸もその威力に膝をつく。
『やったワン！しばらく立たないで欲しいワン！』
まさかのコーギー無双に会場が総立ちになっていた。
次回へ続く
読んで頂きありがとうごさいます。鳥さんは待機中です。
新作の少し書きましたが、ちょっと題材的にアップを迷ってます。もしアップした際は読んでいただけると幸いです。
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