第120話 接戦
シバ王国 闘技場
『行きます・・・。瞬剣・・・』
ラグの持っている剣の刀身がブレたと思った瞬間、ナツの死角から襲いかかった。
『ふっ・・・、危ない危ない。この剣技。何故君がC級なのかな。・・・極魔法ファイアバレット。』
ナツはラグの攻撃をかわし、極魔法を放つ。
『シバに来て冒険者ギルドとは切れてしまったからですよ。あと、私がここまで強くなれたのは犬様のお陰です。ここに来る前までは普通でした。』
ラグもナツの攻撃をかわし、素早い動きでナツに迫る。ラグの剣技が冴え渡る。剣技だけ見ればラグの方が優勢のようだ。ナツの体は少しずつ切り傷がついていく。
「うぉ。ラグのやつやばいな」
『犬殿、彼はC級とは思えないですね。彼の言っていることが本当ならうちのチワワも鍛えてもらいたいところだ。』
『・・・。うちに来てもらえないかしら。彼。』
バーナードとプードルも驚いていた。プードルに引き抜かれないようにこの大会が終わったらギルドマスターにして据えることにしたい。
『僕が剣で傷をつけられるのは久しぶりだよ。』
ナツはズレたメガネをかけ直す。観客は殆どラグの声援、にもかかわらず焦った様子はない。
『おい、ナツ! 約束守れよ』
ラグへの声援に紛れてタツヤの声がした。
『うん。大丈夫。奥の手は使わないよ』
ナツがタツヤの声にそう呟く。恐らく固有スキルは使わないとかそんなところだろう。
『この観客の中、僕が勝つのはしのびないけどね。さあいくよ、極魔法ファイアバレット』
『それは効かないよ』
ラグがファイアバレットに備え、かわす姿勢をとるが
『どうかな。追加で極魔法ブリザードバレット』
『なに・・・!』
ナツがもう一つ魔法を発動させた。魔法の同時発動は初めてみた。おれは魔法が使えないからわからなかったがラグの反応を見るに、難しい事らしい。
炎と氷の弾丸が混ざり合い、打ち消し合わずに弾けて威力を増していく。凄い技術だ。
『ぐ・・・。い・・・犬様。すいません・・・』
ラグは逃げ場を失い、極魔法の直撃を受け倒れた。
『しょ・・・勝者ナツ!』
オークがナツの勝利を宣言した。
観客は残念そうにしていたが、両者の健闘をたたえて拍手が巻き起こった。
◇
シバ王国 闘技場
『次の試合、コーギー対コリー』
歓声が湧き上がる。犬獣人はコーギー、S級冒険者がコリーというらしい。鑑定眼で見てしまうと大体の強さがわかってしまうので、今回は極力見ていない。どうなるか。
『ボーダーのS級だね。よろしくだワン。』
犬獣人のコーギーが一礼する。・・・凄い語尾だ。恥ずかしくないんかな。
『ええ。よろしく頼むわ。あなたは見たことがないわね。コボルトっぽい獣人かしら。女性同士仲良くやりましょ』
S級冒険者コリーも一礼する。試合が始まった。
今の会話で判明した事だが、どうやら獣人は獣人で一括りらしい。そもそもこの世界に犬とかいないのをすっかり忘れていた。だがコーギーはどっからどう見ても犬っぽい。可愛らしい犬獣人だ。
『では、先手必勝だワン!』
コーギーが両手になにも持たず、コリーに襲いかかる。拳闘士のようだ。動物特有の素早くよめない攻撃でコリーを翻弄する。
『へぇ。やるじゃないか。まだこんなのがいただなんて。ふっ!』
コリーは攻撃をしのぎながら反撃にでる。お互い魔法・スキルを使わず肉弾戦となっている。
『S級さん、潔いだワン』
『あんたもね、このまま殴り負けた方が負けといきましょうか』
両者全く譲る気がない。鑑定していないので憶測でしかないが、恐らくスキル・魔法有りであればとっくにS級冒険者コリーの勝利で終わっていただろう。
コリーは敢えて、コーギーの土俵で勝負した形だ。
しばらく肉弾戦が続き遂に・・・
『ぐ・・・。私の負けね。』
『なんだか申し訳ないワン。』
コリーが膝をつく。勝負は獣人コーギーの勝利で幕を閉じたのであった。
会場は女性同士のまさかの肉弾戦に、今日1番の盛り上がりをみせた。
コーギーは照れながら歓声に応えていた。
「いやー、凄かったなー」
『ええ、素晴らしかったです。』
『コリー。あの心意気はうちの国に欲しい』
・・・
・・・・・・プードルがスカウトの目になっていた。さっきからそのコメントしかしていない。本気で気をつけなければ。
次回へ続く
読んで頂きありがとうごさいます。次回はもう1人の勇者がやらかします(´ω`
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