第106話 ただの犬
ブルテリア王国 王城
『じゃぁこれは?』
「知ってる。」
『これも?』
「知ってる。」
『・・・。あー、もう。苦労して調べたのにー。』
「すまんすまん」
『まぁ良いんですが、手紙に"ゴメンね"とだけ書いて肉球押印するのはひどいですよー』
おれは調印式の打ち合わせのためにコボルトと一緒にブルテリアまで来ていた。コボルトに通訳をしてもらっている。
ブルテリア王のバーナードにはおれが死んだ事にしていたのもあって詫びも兼ねての訪問だ。
バーナードにはおれが狙われた理由を探ってもらっていたのだが、結局のところ、シュナウザーを捕らえ、バンドッグ女王プードルからも話が聞けたので必要なかった。
バーナードが不貞腐れている。
オークに渡した手紙も詫び状のつもりだったが適当すぎたようだ。
『それで、今日はそれだけじゃないですよね?』
バーナードが聞いてくる。やはりなかなか察しが良い。
「あぁ、実は調印式とあわせて武闘大会を開きたいと思っている。強いやつが見つかってかこえれば、お互いの国力の増加にも繋がるだろうし」
『なるほど・・・。それは良いアイデアですね。調印式も盛り上がるだろうし。わかりました。我が国のオークション情報網を通じて各地に宣伝しましょう。』
バーナードも二つ返事で賛同してくれた。ちなみに優勝商品は「剣王の書」SRにする事を伝えたら、人が凄いことになるだろうと言われた。
◇
バンドッグ王国 王城前
『んー?なんだこのちっこいモンスターは。』
「女王様に用事があって来たんですが。シバから来たと言ってもらえたらわかると思います。」
バンドッグ王国にはじめて来た。ちょっくら観光をした後、王城に着くと2人の衛兵が話しかけて来た。コボルトに対応してもらうが。
『はぁぁぁぁあ。シバから王様が来ると聞いたが、ちっこいのが2匹なわけないだろうが』
「いえ、言ってくださればわかると思いますが」
『はぁ?・・・ブフッ。おい、見てみろよ。鑑定玉でみたらコイツ・・・。』
『なになに・・・。ブフッ。なんだコイツ。クッソ弱い。』
「いえ、一度話を通していただければ・・・」
『さぁ、帰った帰った。子どものお遊びじゃないんだぞ』
・・・
・・・・・・ステータスをただの犬同然にしてあったんだった。鑑定玉では見える範囲が少ないしおれが隠蔽しているのだって全くわからないだろう。
コボルトが粘りをみせるが、おれもだんだんイラついてきた。
ここは威圧でもかまして・・・
『おい!・・・これはこれは・・・!大変失礼しました!』
騒ぎを聞きつけて城のお偉いさんっぽい人が出てきた。おれの見た目とかも聞いていたのだろうか。平謝りしている。
『おい、お前たち!こちらはシバ王国国王であらせられるぞ。図が高い!ひかえろー!』
お偉いさんはどっかで聞いたようなセリフを口にする。ちなみに紋所は出てこなかった。
『んな!では本当に・・・。た、大変失礼しました!』
『も、申し訳ありません!とんだご無礼を!』
衛兵2人は土下座している。コボルトは気分が良さそうにニヤニヤしていた。
その後、大事にはせず、おれたちは女王のもとに案内されたのであった。とんだ茶番を見せられた気分だった。
次回へ続く。
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