カエル取りの少年
春になると田んぼでカエル取って、バケツにほりこんで持って帰ってたな。エサ?やらないよ。翌日にはいなくなってたし。だからまた取りに行ってたんだ。
客先での仕事が一区切りついたので、近くの居酒屋に上がり込み料理をつつきながら子どもの頃何をしていたかで盛り上がっていました。
蛇の尻尾を持って振り回し、どこまで飛ぶか競ったとか、次々と武勇伝が語られました。
「先輩は結婚とかしないんですか」
話題が現在のものに変わりました。元カエル取りの少年は仕事ができる有望株。私から見てもイケメンです。
「そう言うなよ。。。こないだ別れようって一方的に振られて。。。」
「忙しいからな。俺の時も大変だった。今でも喧嘩が絶えないよ」
フォローしたのは気遣いや面倒見の良さで慕われる先輩でした。残業がなきゃ俺にも彼女ができるかな。いや、無理だろ。と笑い合う後輩たちを見ながら、気になったことを元少年に質問しました。
「ところで、彼女にプレゼントしてた?」
ええっと、付き合う前はしたかも、、、壁のシミに向かって話す元少年に、生温かい視線が集まりました。
「おでんお待ちどうさま!」
店員さんがおでんの盛り合わせを置くと共に、すじ肉の奪い合いが始まりました。普段なら、すじ肉だけ人数分頼めないか交渉する先輩も奪い合いに参戦していたのは優しさからでしょう。
そして夜は更けていきました。