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関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


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 二度目のスライハンドを見破ったので、ボクの手駒はさらに一枚増えて、二枚となった。

 しかし、どちらも将棋の歩に相当する『息』の駒……まだまだ戦力差はかなりある。


 ボクは二手目もパスをする。

 世界チャンピオン、シルバーの三手目は、自陣の陣形から外れているある駒を斜めに三マスほど移動させた。


 あの動きができるのは、『足』。将棋でいうところの角行だ。

 「また、シルバーさんが仕掛けたぞ……!」と観客のひとりがささやく。



「またしても、定石外の動きだ……!」



「堅実なシルバーさんが、あんな差し筋をするだなんて……初めて見たぜ……!」



「あの少年が型破りすぎるんだよ! だからシルバーさんもあてられちまったんじゃねぇか?」



「また……あれもフェイクなのか?」



「いや、二度も見破られてるんだから、三度目はさすがにねぇだろ……!」



「いやいや、わかんねぇぞ、三度目のウソって言葉もあるくらいだからな……!」



「うぅ~ん、序盤でこんなに意見が分かれる対局なんて、いままでになかったぞ……!」



「ああ……こうなってくると、もう全然わからねぇな……!」



 まわりで見ている観客からは、裏返しのあの駒がなんなのかはわからない。

 この場で知るのはシルバーのみ……と誰もが思っているだろう。


 だがボクは『クロスレイ』のスキルを使っているので、あの駒の素性が手にとるようにわかる。

 あの駒は、たしかに『足』……だったので、ボクは「パス」を宣言。


 するとシルバーは、くるんと曲がったヒゲを伸ばしながら、品定めするような視線を向けてきた。



「おやおや……少年、お得意のスライハンド宣言はどうしたんだい?」



「……その駒は、『足』だからね。今回はしないよ」



 シルバーは「フフ~ン?」と唸る。



「そうか、やっと己の立場をわきまえたというわけだね。結構結構」



「……そんな風に挑発しても、ボクは乗らないよ」



 続けざまに、ボクはやり返す。



「そうだシルバー、もっと手応えが欲しいから、ひとつ教えておいてあげる。ボクからの特別サービスだよ。シルバーのフェイクはわかりやすいんだ。だって、顔に書いてあるからね。『これはホンモノです』とか『これはニセモノです』とか……だから、もっとポーカーフェイスになったほうがいいよ」



 バッ! ととっさに顔を覆うシルバー。

 額にほんの少し青みがさしている。


 軽く仕掛けたつもりだったんだけど、効果てきめんだったようだ。

 「ウソだろ!?」と観客までもが反応する。



「シルバーさんは、対局中の感情を読ませないことでも有名なんだぞ……!?」



「それなのに、あの少年は読み取ったというのか……!?」



「でも、たしかにそうかもしれん! だって、二度もシルバーさんのフェイクを見破ったんだから……!」



「いったい顔のどこに書いてあるっていうんだ……!?」



 観客たちの視線が、シルバーに集中する。

 シルバーは恥ずかしがる乙女のように顔を隠していた。


 ……顔に書いてあるだなんてのは、もちろんウソだ。

 だってボクは彼の顔じゃなくて、駒そのものを透視してるんだから。


 でも……この揺さぶりは良かったようだ。

 シルバーが仮面のように貼りつかせていた薄ら笑いが、完全に消え去ったから。


 この『ケルパー』勝負、心理戦の天秤は確実にボクのほうに傾いてきている。


 ……しかし……ふと別の問題に気づいてしまった。


 ボクのMP(マジック・ポイント)は最大で135あるんだけど、それが35まで減っているということに……!


 『クロスレイ』をずっと使っているせいだ……。

 このスキルをこんなに長い時間使うのは初めてだから、ぜんぜん気づかなかった……。


 このままじゃ、絶対に最後まで持たない……!


 ボクはそんな内なる焦りを悟らせないよう、平静を装いつつ言った。



「ボクはパスしたから、次はシルバーの番だよ。その間に、ちょっとトイレに行ってくるね。みんな、ちょっとごめん」



 まわりにいる女の子たちに断ってから椅子から立ち上がり、観客をきわけてステージから降りる。


 シルバーはどんな表情をしていたかは見なかったけど、観客達は「友達の家で遊んでいるような緊張感のなさだな……」みたいに呆れたような感心したような反応だった。


 広いカジノのすみっこにある、男性用トイレに入る。

 見られたら良くないかなと思い、念のため個室に入った。


 ボクは便座に腰掛けるなりスキルウインドウを開く。

 トイレに入った目的としては、MP問題を解決するための新しいスキルを得るためだったんだ。


 まず、『超感覚』ツリーにある『記憶』スキルに1ポイントを振る。


 これは、『瞬間記憶モーメント・メモライズ』というスキル。

 ドライブレコーダーのように、オンにしている間は見たものを自動的に、しかも鮮明に記憶してくれるんだ。


 意識してそれを見る必要もない。何気なく視界の隅に入ったものまで全部覚えられる。

 MP消費はもちろんあるんだけど、『クロスレイ』よりはずっと少ない。


 このスキルで、『クロスレイ』で透視した駒の配置を覚えておけば、MPはだいぶ持つはず。

 対局がどのくらい続くかはわからないけど……それはいま気にしてもしょうがないか。


 ボクはさらにスキルウインドウを送る。

 『心』の駒に触れたときに出現したであろう、新しいスキルを探すために。


 ……あった!

 『ゲーム』のスキル……!



 ●ゲーム

  将棋

   (0) LV1  … 千手千眼

   (0) LV2  … 修羅の気迫

   (0) LV3  … 神の一手



 これは、『第2世界』のスキルだ。


『第2世界』はゲームが支配する世界。

 ゲームがうまい者こそが偉いとされる、ちょっとかわった世界なんだ。


 学校の成績や進学、就職もゲームによって決められる。

 会社の社長どころか、国家元首もゲームによって選出される。


 人間性よりも、ゲームのうまさ優先。

 ゲームのうまい人間こそがモテモテになり、人気者になれるんだ。


 司法も同様で、すべての法律はゲームによって超越される。

 命を賭けたゲームに勝てば、相手を殺したって罪にはならない。


 さらには国家間の戦争だって、ゲームで決着をつけるんだ……!


 ぜんぶで108ある世界のなかでも、かなりぶっとんでいる世界のスキルをボクは得た。

 いまは『将棋』のひとつだけだけど、他にもゲームはいろいろとある。


 ボールやサイコロを転がすものや、トランプやボードを使うもの……そしてこの世界にはないけど、テレビという映像を出す機械につなげて遊ぶ、テレビゲームなんてのもあるんだ。


 それらすべてのゲームのスキルを集約したものが、この『ゲーム』ツリーとなる。


 ちなみにボクが得た『将棋』スキルだけど、これは他の駒を動かして戦うゲーム……たとえばチェスなんかとも共通のスキルになっているんだ。


 もちろん『ケルパー』にだって応用はきくはず。

 なのでここはケチらず、全部のスキルを取っておくことにした。


 よし、っと……! これで準備万端……!

 さぁて、対局に戻ろっと……!


 ボクは便座から立ち上がり、弾むような気持ちで個室のドアをあける。


 すると、そこには……タキシードを着たごついオジサンたちが五人ほど立っていたんだ。


 さっきまではいなかったのに……と思いつつ、ボクは間をすり抜けてトイレから出ようとしたんだけど、立ちはだかられてしまった。



「……悪いな坊主、お前をステージに帰すわけにはいかないんだ」



 ボクを通せんぼしているオジサンは、アリンコでも見下ろすかのようにしている。

 そのオジサンは髪の毛がぜんぜんなかったので、ボクよりもずっと坊主だと思ってしまった。



「……どうして? どうしてステージに戻っちゃいけないの?」



「対局は中止になるからだ」



「……でも、まだ勝負はついてないよ?」



「うちのチャンピオンをあそこまでコケにしといて、勝負もクソもあるかよ」



 坊主のオジサンはそう言いながら、指をぽきぽき鳴らしはじめた。



「坊主、お前は今から誰かもわからなくなるほどにボコボコにされて、カジノの裏に捨てられちまうんだ」



「……それはやだなぁ、だって、みんなが待ってるし」



「お友達には伝えといてやるよ。お前はトイレに行くフリをして、尻尾を巻いて逃げ帰ったってな」



「……そっかぁ、じゃあさ、もうひとつ伝言をお願いしてもいい?」



「なんだ、言ってみな?」



「これはみんなにじゃなくて、オジサンたちを雇ってる人に伝えてほしいんだ。次からは、もっと強い用心棒を雇ったほうがいいよ、って」



 すると、オジサンたちは顔を見合わせあったあと……弾けるように笑った。

 ボクもつられて、一緒になって大笑いした。

□■□■スキルツリー■□■□


今回は『記憶』と『千手千眼』と『修羅の気迫』と『神の一手』に1ポイントずつ割り振りました。

未使用ポイントが3あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●ゲーム

 将棋

  (1) LV1  … 千手千眼

  (1) LV2  … 修羅の気迫

  (1) LV3  … 神の一手


●超感覚

 モーメント

  (1) LV1  … 思考

  (1) LV2  … 記憶

  (0) LV3  … 直感

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