95 小休止
関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。
★『…マジで消すよ? 俺の愧術がチートすぎて、クラスのヤツらを一方的に縛ったり消したりします!』
https://ncode.syosetu.com/n3047es/
女の子を緊縛して奴隷にする、嫌なヤツを消す、お金を出す…これ全て、異世界最強の、愧術…!
★『チートゴーレムに引きこもった俺は、急に美少女たちから懐かれはじめました。キスしながら一緒に風呂やベッドに入るって聞かないんです!』
https://ncode.syosetu.com/n0930eq/
引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!
二度目のスライハンドを見破ったので、ボクの手駒はさらに一枚増えて、二枚となった。
しかし、どちらも将棋の歩に相当する『息』の駒……まだまだ戦力差はかなりある。
ボクは二手目もパスをする。
世界チャンピオン、シルバーの三手目は、自陣の陣形から外れているある駒を斜めに三マスほど移動させた。
あの動きができるのは、『足』。将棋でいうところの角行だ。
「また、シルバーさんが仕掛けたぞ……!」と観客のひとりがささやく。
「またしても、定石外の動きだ……!」
「堅実なシルバーさんが、あんな差し筋をするだなんて……初めて見たぜ……!」
「あの少年が型破りすぎるんだよ! だからシルバーさんもあてられちまったんじゃねぇか?」
「また……あれもフェイクなのか?」
「いや、二度も見破られてるんだから、三度目はさすがにねぇだろ……!」
「いやいや、わかんねぇぞ、三度目のウソって言葉もあるくらいだからな……!」
「うぅ~ん、序盤でこんなに意見が分かれる対局なんて、いままでになかったぞ……!」
「ああ……こうなってくると、もう全然わからねぇな……!」
まわりで見ている観客からは、裏返しのあの駒がなんなのかはわからない。
この場で知るのはシルバーのみ……と誰もが思っているだろう。
だがボクは『クロスレイ』のスキルを使っているので、あの駒の素性が手にとるようにわかる。
あの駒は、たしかに『足』……だったので、ボクは「パス」を宣言。
するとシルバーは、くるんと曲がったヒゲを伸ばしながら、品定めするような視線を向けてきた。
「おやおや……少年、お得意のスライハンド宣言はどうしたんだい?」
「……その駒は、『足』だからね。今回はしないよ」
シルバーは「フフ~ン?」と唸る。
「そうか、やっと己の立場をわきまえたというわけだね。結構結構」
「……そんな風に挑発しても、ボクは乗らないよ」
続けざまに、ボクはやり返す。
「そうだシルバー、もっと手応えが欲しいから、ひとつ教えておいてあげる。ボクからの特別サービスだよ。シルバーのフェイクはわかりやすいんだ。だって、顔に書いてあるからね。『これはホンモノです』とか『これはニセモノです』とか……だから、もっとポーカーフェイスになったほうがいいよ」
バッ! ととっさに顔を覆うシルバー。
額にほんの少し青みがさしている。
軽く仕掛けたつもりだったんだけど、効果てきめんだったようだ。
「ウソだろ!?」と観客までもが反応する。
「シルバーさんは、対局中の感情を読ませないことでも有名なんだぞ……!?」
「それなのに、あの少年は読み取ったというのか……!?」
「でも、たしかにそうかもしれん! だって、二度もシルバーさんのフェイクを見破ったんだから……!」
「いったい顔のどこに書いてあるっていうんだ……!?」
観客たちの視線が、シルバーに集中する。
シルバーは恥ずかしがる乙女のように顔を隠していた。
……顔に書いてあるだなんてのは、もちろんウソだ。
だってボクは彼の顔じゃなくて、駒そのものを透視してるんだから。
でも……この揺さぶりは良かったようだ。
シルバーが仮面のように貼りつかせていた薄ら笑いが、完全に消え去ったから。
この『ケルパー』勝負、心理戦の天秤は確実にボクのほうに傾いてきている。
……しかし……ふと別の問題に気づいてしまった。
ボクのMPは最大で135あるんだけど、それが35まで減っているということに……!
『クロスレイ』をずっと使っているせいだ……。
このスキルをこんなに長い時間使うのは初めてだから、ぜんぜん気づかなかった……。
このままじゃ、絶対に最後まで持たない……!
ボクはそんな内なる焦りを悟らせないよう、平静を装いつつ言った。
「ボクはパスしたから、次はシルバーの番だよ。その間に、ちょっとトイレに行ってくるね。みんな、ちょっとごめん」
まわりにいる女の子たちに断ってから椅子から立ち上がり、観客をきわけてステージから降りる。
シルバーはどんな表情をしていたかは見なかったけど、観客達は「友達の家で遊んでいるような緊張感のなさだな……」みたいに呆れたような感心したような反応だった。
広いカジノのすみっこにある、男性用トイレに入る。
見られたら良くないかなと思い、念のため個室に入った。
ボクは便座に腰掛けるなりスキルウインドウを開く。
トイレに入った目的としては、MP問題を解決するための新しいスキルを得るためだったんだ。
まず、『超感覚』ツリーにある『記憶』スキルに1ポイントを振る。
これは、『瞬間記憶』というスキル。
ドライブレコーダーのように、オンにしている間は見たものを自動的に、しかも鮮明に記憶してくれるんだ。
意識してそれを見る必要もない。何気なく視界の隅に入ったものまで全部覚えられる。
MP消費はもちろんあるんだけど、『クロスレイ』よりはずっと少ない。
このスキルで、『クロスレイ』で透視した駒の配置を覚えておけば、MPはだいぶ持つはず。
対局がどのくらい続くかはわからないけど……それはいま気にしてもしょうがないか。
ボクはさらにスキルウインドウを送る。
『心』の駒に触れたときに出現したであろう、新しいスキルを探すために。
……あった!
『ゲーム』のスキル……!
●ゲーム
将棋
(0) LV1 … 千手千眼
(0) LV2 … 修羅の気迫
(0) LV3 … 神の一手
これは、『第2世界』のスキルだ。
『第2世界』はゲームが支配する世界。
ゲームがうまい者こそが偉いとされる、ちょっとかわった世界なんだ。
学校の成績や進学、就職もゲームによって決められる。
会社の社長どころか、国家元首もゲームによって選出される。
人間性よりも、ゲームのうまさ優先。
ゲームのうまい人間こそがモテモテになり、人気者になれるんだ。
司法も同様で、すべての法律はゲームによって超越される。
命を賭けたゲームに勝てば、相手を殺したって罪にはならない。
さらには国家間の戦争だって、ゲームで決着をつけるんだ……!
ぜんぶで108ある世界のなかでも、かなりぶっとんでいる世界のスキルをボクは得た。
いまは『将棋』のひとつだけだけど、他にもゲームはいろいろとある。
ボールやサイコロを転がすものや、トランプやボードを使うもの……そしてこの世界にはないけど、テレビという映像を出す機械につなげて遊ぶ、テレビゲームなんてのもあるんだ。
それらすべてのゲームのスキルを集約したものが、この『ゲーム』ツリーとなる。
ちなみにボクが得た『将棋』スキルだけど、これは他の駒を動かして戦うゲーム……たとえばチェスなんかとも共通のスキルになっているんだ。
もちろん『ケルパー』にだって応用はきくはず。
なのでここはケチらず、全部のスキルを取っておくことにした。
よし、っと……! これで準備万端……!
さぁて、対局に戻ろっと……!
ボクは便座から立ち上がり、弾むような気持ちで個室のドアをあける。
すると、そこには……タキシードを着たごついオジサンたちが五人ほど立っていたんだ。
さっきまではいなかったのに……と思いつつ、ボクは間をすり抜けてトイレから出ようとしたんだけど、立ちはだかられてしまった。
「……悪いな坊主、お前をステージに帰すわけにはいかないんだ」
ボクを通せんぼしているオジサンは、アリンコでも見下ろすかのようにしている。
そのオジサンは髪の毛がぜんぜんなかったので、ボクよりもずっと坊主だと思ってしまった。
「……どうして? どうしてステージに戻っちゃいけないの?」
「対局は中止になるからだ」
「……でも、まだ勝負はついてないよ?」
「うちのチャンピオンをあそこまでコケにしといて、勝負もクソもあるかよ」
坊主のオジサンはそう言いながら、指をぽきぽき鳴らしはじめた。
「坊主、お前は今から誰かもわからなくなるほどにボコボコにされて、カジノの裏に捨てられちまうんだ」
「……それはやだなぁ、だって、みんなが待ってるし」
「お友達には伝えといてやるよ。お前はトイレに行くフリをして、尻尾を巻いて逃げ帰ったってな」
「……そっかぁ、じゃあさ、もうひとつ伝言をお願いしてもいい?」
「なんだ、言ってみな?」
「これはみんなにじゃなくて、オジサンたちを雇ってる人に伝えてほしいんだ。次からは、もっと強い用心棒を雇ったほうがいいよ、って」
すると、オジサンたちは顔を見合わせあったあと……弾けるように笑った。
ボクもつられて、一緒になって大笑いした。
□■□■スキルツリー■□■□
今回は『記憶』と『千手千眼』と『修羅の気迫』と『神の一手』に1ポイントずつ割り振りました。
未使用ポイントが3あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●ゲーム
将棋
(1) LV1 … 千手千眼
(1) LV2 … 修羅の気迫
(1) LV3 … 神の一手
●超感覚
モーメント
(1) LV1 … 思考
(1) LV2 … 記憶
(0) LV3 … 直感




