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83 幻のモンスター

関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


★『…マジで消すよ? 俺の愧術がチートすぎて、クラスのヤツらを一方的に縛ったり消したりします!』


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女の子を緊縛して奴隷にする、嫌なヤツを消す、お金を出す…これ全て、異世界最強の、愧術…!



★『チートゴーレムに引きこもった俺は、急に美少女たちから懐かれはじめました。キスしながら一緒に風呂やベッドに入るって聞かないんです!』


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引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!

 ……なにもしていないのに、『キュア』に2ポイント振られた……!?

 ……それも、ボクの目の前で……!


 ボクは嫌なことを思い出し、ブルッと身震いする。



「これでよーしっ、と! おまたせー! ……ってどったのアンノウン? 顔色悪いよ?」



 ご機嫌でスキルウインドウを閉じたキャルルは、ボクの変化に目ざとく気づいた。



「あの……キャルル……もしかして今、『キュア』に2ポイント振った……?」



 ボクの問いに、キャルルは不思議そうにアイシャドウの瞼をパチパチっとしたあと、



「うん! どうしてわかったの? でも嬉しい! ウチのことをそこまでわかってくれるなんて!」



 子供のような無邪気な笑顔を浮かべ、ギュッと抱きついてくる。


 ボクの鼻はキャルルの胸の谷間に挟まって、むせかえるような肌のニオイを嗅いでいた。


 しかし新たな発見をしたボクは、ドギマギするのも忘れて考え込む。


 ……キスをすると、その子にスキルを与えられるのはなんとなくわかっていた。

 でも、その与えたスキルにポイントが振られると、ボクのほうのスキルもパワーアップするだんて、知らなかった……!


 と、いうことは、もしかして……!


 ボクは鼻息を荒くしながらスキルウインドウを改めて開いた。

 フガフガした鼻息を受けた胸の谷間がふるるるっと波打ち、くすぐったそうに身をよじらせるキャルル。



「あんっ、アンノウンってばダイタン!」



 でもそれどころじゃない。

 水枕みたいな物体に顔を埋めたまま、ボクは横目でスキルウインドウを送る。


 すると、『料理』ツリーもいつの間にかスキルポイントが増えていたんだ……!


 昨日の夜、ルルンがボクにキスをしてきて、『料理』のスキルがルルンに与えられた。

 スキルポイントが増えてるってことは……ルルンがポイントを振ったに違いない……!


 夢中になるあまり、呼吸を忘れていることに気づいた。

 息を吸い込もうとすると、柔肌が張りついてくる。



「んふふ、アンノウン、アンノウン。ウチの胸に夢中になっちゃって……かわいい!」



「んむぅーっ!?」



 今更なから、とんでもないことをしていることに気づいたボクは、慌ててキャルルから離れた。

 しかし顔は胸から離せたものの、いつの間にか腰をしっかり抱きしめられており、身体はくっついたままだ。



「あん、待ってアンノウン。ウチは全部アンノウンのものだから、逃げなくてもいいんだよ? ほら、ここも……」



 キャルルはそう言いながら、桜色のローブの襟をぐいと下に引っ張る。


 彼女の着ている『桜のローブ改』は、ウサギのデザインによって前バージョンよりは露出が控えめになってるんだけど、それでも肌色の割合は多い。


 胸なんて常に谷間が見えているくらいなんだけど、その切れ込みの入った襟を、そんな風に引っ張ったりしたら……!


 窮屈そうに揺れ、収まっているところからはみ出だそうとするふたつの水風船。

 このままじゃ、ボクの目の前で……ポロンって出ちゃうよ……!?


 しかしキャルルはそうなるのを望んでいるかのように、さらに引っ張る。


 はやく外に出せとばかりに、のたうつふたつの物体。

 そしてついに、薄いピンクの先っちょが、片鱗を覗かせた瞬間……!


 キャルルは固まってしまった。

 視線をボクの肩越しに固定したまま、瞳孔がギュウッと大きくなっている。


 ボクはふと、違和感に気づく。

 そういえば……マニーはどうしたんだろう?


 キャルルがこうしてふざけていると、マニーはいつも止めに入るのに……。

 そばにいるはずなのに、衣擦れの音すらしない。


 首を捻ってマニーのほうを見ると、石にされたみたいに固まっている。

 近くにいるウサギまでもが、同じように制止している。


 みんな、どうしちゃったんだろう……?

 限界まで身体を捻って背後を確認する。


 途端、ボクの身体も強張った。


 青白いオーラを放つ、巨大な馬……レインジングホースのふたまわりくらい大きな馬が、そこに佇んでいたからだ……!


 引き締まった馬体に、ロバのような太い足。蹄には、ギラリ輝く蹄鉄。

 青白い炎のように燃え上がるたてがみから、人魂のようなものが飛び出し、まわりでゆらゆら揺れている。


 伝説のモンスターにふさわしい、全ての者を平伏させるような厳格な顔つき。

 草食動物特有のやさしさや弱さは、そこには微塵もなかった。


 百獣の王ですらも猫になってしまいそうな、圧倒的な存在がそこにいたんだ……!



「ぶ……ブルー……ゲイル……!」



 絞り出したボクの言葉に、魔法が解けたように動きを取り戻す仲間たち。



「せ……千載一遇のチャンスだ! やるぞっ!」



 マニーが腰の剣を引き抜き、果敢に斬りかかっていく。

 しかし、あと一歩というところで、


 ……ガツン!


 ブルーゲイルの頭に、石が当たった。


 青白い馬体が翻った拍子に風圧のようなものが発生し、マニーは吹き飛ばされてしまう。


 デジャヴのような光景……!

 また、横取りか……!


 ブルーゲイルが向かっていく先を、苦々しく視線で追うと……そこにはクラスメイトたちがいた。

 いや、今や『ゴンギルド』のメンバーか……!



「アンノウン! 今度こそ邪魔すんじゃねぇぞ! コイツをやるから引っ込んでな!」



 ゴンの二投目であろう石が、ボクの足元に転がった。



「よぉし、この青い馬をブッ殺せば、『ゴンギルド』の名は不動のものとなるぞ! 者ども、かかれっ! 死ぬ気でやるんだっ!!」



「おおーっ!!」



 ゴンの号令とともに、ブルーゲイルに挑みかかっていくクラスメイトたち。

 みんな包帯を巻いていて痛々しい姿だったが、幻のレアモンスターを前にして高揚しているのか、痛みなど忘れているようだ。


 吹っ飛ばされて倒れたマニーは床を殴って悔しがっている。

 キャルルはあらん限りの罵声を浴びせていた。


 まわりにはすでに大人たちが集まってきていて、輪のように戦いの場を囲んでいる。

 幻のモンスターを目の当たりにして、驚く者、悔しがる者、舌なめずりをする者、様々だ。


 しかし誰もが手出しをすることはなく、遠巻きに戦いの行く末を見守っていた。



「まさか、マジでブルーゲイルが現れるだなんて……! 俺、初めて見たぜ……!」



「俺だってそうだ! こんなデケエ馬だったとはな……!」



「くそっ、なんであんなヒヨッコどもが戦ってやがんだ……!」



「まぁ、そう焦んなって。あのガキどもじゃ相手にもならねぇよ。今までマトモに戦って倒したギルドはねぇんだ」



「それどころか、その階にいたヤツらが次々とかかっていったのに、みんな全滅させられて、ゆうゆうと逃げられちまったこともあるんだろ?」



「なに!? そんなに強えのか!? だったら俺たちでも勝てんのかよ!?」



「だからだよ、だからこそあのガキどもにブルーゲイルを疲れさせるんだ。ヤツらが全滅した瞬間、一斉に石をブン投げるぞ!」



 よく見ると、どの大人たちも石を手にしており、いつでも投げられるよう準備している。

 横取りの横取りをするつもりなんだろう。


 肝心の戦いのほうは一方的だった。


 ブルーゲイルはゴンをはじめとする力自慢たちの石のハンマー攻撃を受けても、一切怯まず反撃してくる。

 その反撃は目に見えないほど早く、透明なツララのように身体を突き刺す。


 しかもブルーゲイルの向きや状態とは関係なく、正面だろうが背後だろうが何の前触れもなく飛んでくるので防ぎようがない。


 ザク! ザク! ザク! と三人続けて突き立てられ、穴のあいたワイン樽のように血が吹き出る。


 大人たちはどよめいた。



「な……なんだ、ありゃ……!」



「ブルーゲイルは攻撃してるように見えねぇ……! 暴れまわってるだけなのに、なんでガキどもは突き刺されてんだよ……!?」



「あんな攻撃、避けようがねぇじゃねぇか……!」



「近づくだけで穴だらけにされるなんて、ヤバ過ぎるだろ……!」



「それに、あれだけ攻撃をくらってんのに、まったく怯んでねぇぞ……!」



「ガキどもとはいえ、石のハンマーだ! それをたて続けにくらって何ともないモンスターなんて、初めて見た……!」



「あんなのと戦うなんて、俺、やだよ……!」



「でも、やるしかねぇんだっ! ブルーゲイルが出たのに俺たちが何もしなかったってバレたら、ボスからどやされるだけじゃすまねぇぞ……! それに逃げ出したなんてわかってみろ! 二度と冒険者として生活できなくなっちまう……!」



 さっきまでは顔を紅潮させていたはずの大人たちは、すっかり青ざめていた。

 恐怖に震え、石をとり落としている。


 ボクは、そんなに嫌なら戦わなきゃいいのに……。と思っていた。

 それと、クラスメイトたちのことが心配で心配で、加勢したくてウズウズしていた。


 自然と身体は前のめりになって、いつのまにか観客の一番前で応援していたんだ。

 応援している人なんて、ボク以外には誰もいなかったけど。


 あ、いや、ウサギがいた。

 ウサギだけはプラカードのようにスケッチブックを掲げ、応援メッセージを送っている。


 ボクは夢中になるあまり、もっと戦いをよく見ようと『ミュータント』のスキルである『イーグル』を使って拡大した。


 そして、気づいたんだ……!

 恐るべき事実に……!

□■□■スキルツリー■□■□


今回は『下ごしらえ』と『焼く・炒める』と『茹でる・煮る』に1ポイントずつ、『キュア』に2ポイントが割り振られました。

未使用ポイントが3あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●料理

 見習い

  (2) LV1  … 下ごしらえ

  (2) LV2  … 焼く・炒める

  (2) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (1) LV1  … 盛り付け

  (1) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

 白

  (3) LV1  … キュア

  (0) LV2  … リムーブ

  (0) LV3  … エクステンション

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