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76 くるくるまわる

関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


★『…マジで消すよ? 俺の愧術がチートすぎて、クラスのヤツらを一方的に縛ったり消したりします!』


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女の子を緊縛して奴隷にする、嫌なヤツを消す、お金を出す…これ全て、異世界最強の、愧術…!



★『チートゴーレムに引きこもった俺は、急に美少女たちから懐かれはじめました。キスしながら一緒に風呂やベッドに入るって聞かないんです!』


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引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!

 ボクたちはそれからも、塔の4階を探索し、モンスターと戦い続けた。


 パン作りの材料は順調に手に入ったし、鶏肉や豚肉、そして牛肉などもゲットした。

 今日のお昼は、これでごちそうを作ろうと思う。


 ウサギやマニーも期待しているらしく、早くお昼にならないかな、なんて言っていた。


 つい心が弾んで、スキップしながら塔の廊下を歩いていると、遠巻きにボクらを見つめている大人たちの視線に気づいた。


 ボクは気にしないフリをしながら、『ドルフィン』で聞き耳をたててみる。



「……アイツが、『アンノウン』とかいうヤツか?」



「3階の『力だめしの間』でミノタウロスロワーを素手で、しかもたったひとりでヤッたんだろ?」



「ああ、最高記録もぶっちぎりで塗り替えたらしいぞ」



「しかも、ボスフロアでも大勢のモンスターを倒したらしいが……」



「どう見ても、そんな風には見えねぇなぁ」



「たしか今日、『ゴンギルド』とかいう新しいギルドができたらしいが……そのメンバーも一緒にボスフロアにいたんだろ?」



「ああ、リーダーのゴンとかいうヤツのほうが、まだ強そうだから……もしかしてソイツらがヤッたのかな」



「多分そうだろ。あんな小さいガキにボスフロアが抜けられるわけがねぇ。ゴンがやったんだろ。3階のヤツらが見間違えたんだ」



「そうそう、3階のヤツら、ボスにどやされてたよなぁ、だからとっさにウソついたんじゃないかって話だぜ」



「ああ、ガキどもを勧誘できなかったのは、『アンノウン』とかいうバケモノじみたガキがいたから、って必死になって言い訳してたなぁ」



「ボスはそれを信じたのか?」



「まさか。そんなガキがいるわけねぇだろ、って3階のヤツらをブン殴ってたな」



「そりゃそうか、アンノウンを今こうして見てる俺ですら信じられねーもん」



「そのうちモンスターにボコボコにされて、逃げ出すだろうからほっときゃいいさ、あんなガキ」



「しかし……あの女だけはほっときたくねぇーなぁ」



「ああ、それは同感だ。ステータスは、っと……。キャルルって名前なのか」



「いい身体してやがるぜ、まったく……あのキャルルちゃんだけは助けてやるとすっか」



「そのあとは、みんなで……ヒヒヒ……」



 嫌らしい視線でキャルルを見つめ、舌なめずりをする大人たち。

 ボクは嫌な気持ちになって、キャルルの身体を見せないように大人たちとの間に割って入る。


 舌打ちを聞きながら、大人たちの前を通り過ぎていると……ふと、脇道からいくつもの悲鳴が聞こえてきた。


 声のする方に向かうと、ゴンたちがいた。

 大きな部屋の中にいるクラスメイトたちは、『コボルト』との戦闘の真っ最中だった。


 コボルトは二足歩行する犬のようなモンスター。

 姿形や大きさは犬と同じくバリエーションに富んでいるのだが、今戦っているのは中型犬くらいの小さめのコボルトだ。


 しかし小さいとはいえ動きは素早い。

 手や足に飛びかかってきて、鋭い牙の生えた口吻で噛み付いてくるので油断ならない相手なんだ。


 しかもかなりの数がいるので、クラスメイトたちは噛みつかれまくっている。

 みんな血まみれだ。



「い、いたい! いたたたたっ!?」



「こ、コイツら、ゴブリンよりずっと強い……!」



「それに、敵の数が多すぎる……! ご、ゴンくん! このままじゃまずいよ!」



「俺様のことは隊長と呼べと言っただろう! このくらいなんだ! お前ら全員、気合が足らんぞっ! うおおおーーーっ!」



 石のハンマーをハンマー投げのように振り回し、メチャクチャに暴れるゴン。

 しかしコボルトたちはひらりとかわし、逆に仲間たちを巻き込んでいた。



「うわあっ!? や、やめてゴン……隊長っ!」



「ぎゃあっ! ほ、骨が! 骨が折れたあっ!」



「こ、このままじゃ、みんなやられちゃう……! キャアッ!?」



 クラスメイトの女子の顔に飛びかかろうとしていたコボルトが霧散する。

 ボクがとっさに、棒手裏剣を投げて助けたからだ。



「よし行こう、マニー! みんなを助けるんだ! キャルルは白魔法でみんなのケガを治して! ウサギはキャルルの援護!」



 ボクは駆け出そうとしたんだけど、仲間たちはなぜか渋い顔だった。



「……助けるのか?」



「ほっとけばぁ? 自業自得なんだから」



 棒立ちのまま、そう言い捨てるマニーとキャルル。

 ふたりの間に挟まれたウサギはおろおろしている。


 ボクはその言葉がとても信じられなくて、仲間たちに向かって叫んだ。



「助けるのは当たり前だろ!? クラスメイトじゃないか!」



「アンノウン。お前はそのクラスメイトたちに、今までさんざんひどい目に遭わされてきたんじゃないのか?」



「そーそー、アンノウンってば昔からそーだったよねー。いじめられてるクセにしゃしゃり出ては痛い目にあって……さんざんウザがられてきたじゃない。だからもう助けてやる必要なんかないって! それに助けたところで、感謝なんかしねーよアイツら。もう見捨てちゃって、ウチらだけで楽しくやろーよ!」



「……もういいっ! ボクだけでやるっ!」



 ボクは話を途中で打ち切って、ひとり部屋に踊り込んでいった。


 弱いクラスメイトたちはもうコボルトに押し倒され、いいように噛みつかれている。



「……ハッ!」



 まとわりついたコボルトたちを、積年のホコリを払うように居合斬りで薙ぐ。

 何匹もいたコボルトたちが、光の中で舞うチリのように消え去った。


 傷だらけのクラスメイトは、しばらくバタバタもがいていたけど、モンスターたちが消え去ったことに気づくと、



「あ、あれ……? 助かっ……た?」



 上体を起こし、キツネにつままれたようにキョトンとしていた。


 ボクは流れ作業のように居合いを放ち、クラスメイトをタヌキに化かされたような表情に変えていく。


 するとコボルトたちのターゲットがボクに移った。



「ウォォォーーーンッ!」



 遠吠え一下、ボクめがけて飛びかかってくる犬のバケモノたち。


 向かってきてくれるのは好都合だった。

 だってそのほうが、クラスメイトたちへの被害が少なくてすむから……!


 ボクは待ってましたとばかりにジャンプで迎え撃つ。



「 (レッ) (シュウ) (ザン) ッッッ……!!」



 全方位を覆う、鋭い回し蹴り。

 飛びかかってきていたコボルトたちは、空中で時が止まったかのように動かなくなる。


 303240353136423337383240303142333832


 数え切れないほどの数字が連なり、円環のようになったあと、


 ……バシュゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーンッ!!


 霧の輪へと姿を変えた。


 フィギュアスケートのように、クルクル回りながら着地しようとするボク。

 ちょうど第二陣がやって来たので、



「セイッ!」



 回転の勢いを利用して、『ローリング居合い』を放つ。


 さっきよりも大きい数字が踊り、部屋の中の霧をさらに濃くしていく。


 まるでボクが熱した石で、ゴブリンたちはそれに触れてしまった雫のようだった。


 焼けた石に雫が当たれば、ジュッという音とともに一瞬で蒸発する。


 これぞ、焼け石に水……!

 水滴がいくらかかってきたところで、石はびくともしない……!


 それと同じことが、今まさに起こっている。

 ボクの前では、コボルトもただの水滴でしかなかった。


 まぁ、そんな例え話はどうでもいい。

 それよりも……ボクは新たな発見をして嬉しくてしょうがなかったんだ。


 回るのって便利だなぁ、って。


 回れば居合いの範囲も広くなるし、周囲の状況も見ながら戦える。


 ピンチのクラスメイトがいたら、こうして……!


 ボクは何度目かの烈蹴斬を放ちながら、まわりに棒手裏剣をバラ撒く。

 八方向に拡散した手裏剣は、


 ……ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスゥッ!


 今まさに八人のクラスメイトに襲いかかろうとしていた、八匹の犬の頭を正確に貫いていた。


 そして、気づいてしまう。


 クラスメイトたちが全員……いや、遠巻きに見ていた大人たちまでもが、唖然とボクに注目していることに……。

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