75 戦闘ダメージ
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引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!
種族の垣根、そして戦いの垣根がボクらとニワトリを分かつ。
さっきまで戦っていたレイジングチキンと、再び相対する仲間たち。
ボクは居合斬りのおかげですでに担当分を沈めていたので、みんなの援護に回ることにした。
マニーはひとりでも大丈夫っぽいから、ウサギとキャルルの元へと向かう。
「コケッ、コケッ、コケェーッ!」
レイジングチキンは狂ったようにクチバシの雨を振らせていた。
それを懸命に盾で受け止めるウサギ。
時折スキを見ては盾の隙間から剣を出し、「えいえい」とニワトリの胴体をつんつん突いている。
たいして効いてなさそうな攻撃だなぁ……なんて思っていると、妙なことに気づいた。
ウサギの突きがヒットするたびに、何かが出ている。
血とか抜けた毛とかそんなんじゃなくて、なんか記号みたいな変なやつ。
目を凝らしてよーく見てみると……レイジングチキンの胴体に剣の切っ先が刺さった瞬間、
1
という数字が浮かんでは消えていた。
……あの数字、なんだろう? と思っていたら、レイジングチキンの後ろにそーっと忍びよっていたキャルルが、
「くらえーっ!」
勇ましいかけ声とともに、ニワトリの白いお尻をこれでもかと蹴り上げていたんだ。
すると、
3
という数字が浮かんだ。
背後からの不意討ちに、「コケェーッ!?」と激怒しながら振り向くレイジングチキン。
ダチョウのようなクチバシ攻撃が薄着のキャルルを襲う。
「……あぶないっ!」
ボクはとっさに手を振り払い、袖に忍ばせていた棒手裏剣を投げた。
……ドスッ!
レイジングチキンの目玉に突き立った瞬間、
35
という少し大きめの数字が出たあと、ヤツはバシュゥと霧散する。
「サンキュー!」『ありがとう!』と嬉しそうに駆け寄ってくるキャルルとウサギ。
ボクはそれよりも、数字のことが気になって気になって……さっきまで「35」が浮かんでいた虚空を凝視していた。
「……どったのアンノウン? 天井の隅をじーっと見つめたりして、ウチのクロみたいじゃん」
クロというのは『キャルルルン』で飼っている黒猫のこと。
いや、そんなことは今はどうでもいいんだ。
それよりも……あの数値は何だったんだろう?
攻撃が当たった瞬間に見えたということは……もしかして……与えたダメージなんだろうか?
「……あんっ!」
女の子みたいな悲鳴がしたので、ボクは思考を中断する。
マニーがレイジングチキンの攻撃をバックステップでかわしていたのだが、足がもつれてしまったようで、今まさに後ろに転倒するところだった。
ボクはとっさにテレキネシスで助けようとしたんだけど、寸前で思いとどまる。
マニーが背中をしたたかに打ち付けた瞬間、
1
という数値が床からたちのぼった。
「コケェーッ!」
デジャヴのような鋭いクチバシ攻撃が、倒れているマニーを襲う。
そろそろ助けないとマズそうだ。
ボクはこれまたさっきのリプレイのように、手裏剣でニワトリの目玉を貫いた。
その時の数値は「32」だった。
「しっかりしなって、マニー! 女みたいな声出しちゃって、マジキモいんですけど!」
なんてことを言いながらも、キャルルはウサギとともにマニーの手を引っ張って、助け起こしてあげている。
「う、うるさいな」と気まずそうなマニー。
その肩に浮かんでいるステータスウインドウのHPは、1減って34になっていた。
ボクは確信する。
……やっぱり……!
浮かび上がる数字は、ダメージの数値だったんだ……!
今まではそんな数字、見えなかったはずなのに……なんで急に見えるようになったんだ……?
その答えはすぐに出た。
リバイバーのスキル……!
『蝸』『蛞』『蛭』のどれかが、ダメージ値を見えるようにする効果があるんだ……!
たぶんだけど、『蛞』じゃないかと思う。
『蛞』にはステータスウインドウを詳細にする効果があるから、イメージ的にはいちばん近い。
いずれにせよ、これはかなり便利だ……!
なんてことをボクが考えている間に、仲間たちはレイジングチキンのドロップアイテムを拾い終えていた。
キャルルが嬉しそうに、両手いっぱいに抱えた卵を見せてくれる。
「へへー! 見て見てアンノウン! 卵、こんなにいっぱい取れちった!」
白い花束のような卵たち。その中に、茶色い卵がひとつだけあるのに気づいた。
「あっ、『ブラウンエッグ』があるね!」
……ぶらうんえっぐ? と揃って首を傾げる仲間たち。
「あ……こっちの世界にはない言葉か……。『ブラウンエッグ』っていうのは見てのとおり茶色の卵のことだよ。ニワトリは普通白い卵を産むんだけど、たまに茶色いやつを産むことがあるんだ。といっても殻の色が違うだけで、味や栄養価は変わらないんだけどね。でも異世界では『幸運のきざし』とも呼ばれていて、飼っているニワトリが茶色い卵を産んだらいいことがある、って言われてるんだ」
言い終えてから「しまった!」と後悔する。
つい、調子に乗ってしゃべっちゃった……。
ボクの悪いクセだ……妄想をこんな感じで、さもあるみたいにしたり顔で語るから、みんなから嫌われちゃうんだ……。
しかし、仲間たちの反応はボクが想像していたのとは真逆だった。
「なるほど……『幸運のきざし』か……! 今の俺たちにとっては、何よりも心強いじゃないか……!」
「いーこと言うじゃん、マニー! コレ持って帰ったら、お姉ちゃんも喜ぶぞぉー!」
ウサギは茶色い卵のまわりで、笑顔を浮かべているみんなのイラストを描いていた。
ボクは驚いた。そして、今更ながらに気づいた。
そうだ……そうだったんだ……!
彼女たちはもう、ボクをバカにしない……!
ボクのことを信じてくれる、仲間だったんだ……!
今に限った話じゃない。
これまでも彼女たちはボクの言うことを信じて、ついてきてくれたじゃないか……!
ずっと切羽詰まってた状況が続いてたから、ボク自身が気づいてなかっただけ……!
……嬉しい。すっごく嬉しい……!
自分の言葉が受け入れられるのって、こんなに嬉しいことだったんだ……!
ボクは目頭と、胸の奥が熱くなっていくのを感じていた。
「……よぉし、みんなっ! 幸運のきざしはボクらにあるんだ! この調子で、ガンガン狩っていこう!」
「「「おおーっ!」」」
仲間たちは揃って拳を突き上げ、元気いっぱいに賛同してくれた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ボクたちは塔の4階を歩きながら、探索と戦闘を続ける。
それでいくつか気づいたことがあった。
まず、ボクの新しい相棒である『名刀・桜花』について。
これはアイテムが持つステータスが示すとおり、居合い斬りに特化した刀だった。
居合斬りをすれば抜群に切れ味があり、かなりのダメージを叩き出すんだけど、問題はそのあと。
刀を抜いたまま……いわば居合い斬りの効果が無いままで使うと、すぐ刃こぼれしちゃうんだ。
繊細な見た目のとおり、かなり耐久力の低い刀だった。
だからボクは抜刀したあとは、すぐに鞘に納めることにした。
敵が固まっているときはそれでも問題なかったんだけど、四方を敵に囲まれたときは大変だった。
刀を抜いては戻し、抜いては戻しして攻撃しないといけないので、忙しいったらありゃしない。
しかも居合い斬りというのは、精神統一していないと威力が出ないんだ。
乱戦になると気持ちが乱されてしまうので、そういう意味でも大変だった。
でも……自分の静かなる気持ちを研ぎ澄まし、刃に変えるようなこの攻撃方法は、新鮮で楽しくもあった。
この『桜花』は「真の力を発揮するとき、桜の花びらが舞い散る」という効果がある。
たまにその「真の力」が発揮されるのか、振り抜いた後の刀身から、桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちることがあるんだ。
これがまた、カッコよくて……!
どうやったらたくさん花びらが出てくれるのか、いろいろ研究したくなってしまった。
……「剣の道とは、静かなる日々の鍛錬と、騒がしいほどの好奇心によって磨かれる」とムサシは言っていた。
今までは「フーン」って感じだったんだけど……『桜花』を手にしてから、その言葉の意味がよくわかったような気がする。
「……あっ! 『レイジングホース』がいんじゃん!」
「よし、まわりには誰もいないようだし、やってみるか!」
手つかずの『レイジングホース』を見つけ、さっそく挑みかかっていく仲間たち。
しかし背後から石が飛んできて、ガツン! とレイジングホースの頭に当たった。
怒り狂ったレイジングホースは、仲間たちには目もくれず走り出す。
ボクの背後には、ニヤニヤしながら手のひらで石を弾ませる大人たちがいた。
その大人たちに向かって、猛然と抗議するマニーとキャルル。
「おいっ!? なにをするんだ! レイジングホースを先に見つけたのは俺たちだぞ!?」
「横取りしてんじゃねぇーよっ!」
すると大人たちは、悪びれもせずこう言ったんだ。
「見つけたのはお前らが先かもしんねぇが、先に攻撃したのは俺たちだ。だからそのレイジングホースは俺たちのモンだ」
「悪いねぇ。でもこれが『大人の世界』ってヤツなんだ。勉強になったなぁ、坊っちゃん、お嬢ちゃん」
「お前らみたいなヒヨッコは、帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな! さぁ、戦いの邪魔だ、あっちへ行った行った!」
マニーとキャルルは大人たちの詭弁にプリプリと怒っていたが、当の大人たちは無視してレイジングホースと戦いはじめる。
ちなみにボクはというと、なんとも思わなかった。
これも、居合い斬りで精神が鍛えられたせいかもしれない。
ボクは戦いの渦中に歩み寄っていき、声をかける。
「でも、手伝うくらいは別にいいんでしょ?」
「ああん? まだいやがったのか! ガキが邪魔すんじゃねぇよ! 蹴り飛ばされたくなかったら、あっちへ行って……」
……キンッ!
甲高い金属音と、「462」という数値、そして桜の花びらを残しながら、ボクは背を向ける。
背後で響く、ばしゅーんという爆音と、情けない悲鳴を聞きながら……ボクは唖然とする仲間たちに向かって言った。
「……これでもう、あの人たちはボクらの獲物を横取りしないと思うよ。さっ、行こうか」




