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07 2階へ

 ウサギを介抱し、気がついたところで、ボクはウサギの初勝利をお祝いした。

 彼女もとても喜んでいたんだけど、捨て身の特攻で全力を使い果たしたのか、精魂尽きたような顔をしている。


 ボクはウサギを休ませてあげて、その間にレイジングチキンのドロップアイテムを拾い集めることにした。


 【鶏モモ肉】

 【鶏卵】


 やった……肉と卵だ……!

 しかも鶏肉のほうは、切り身のもも肉……!


 他の世界じゃニワトリを倒してもこうはいかない。


 鶏肉を手にするためには、毛をむしって血抜きをして皮を剥いで切り分けて……とやらないといけないんだけど、こっちの世界じゃすでにそれらを終えた形で、食べやすい肉としてドロップしてくれるようだ。


 こっちの世界の、数少ない良いところだ……!


 鶏肉を手にした途端、ボクのステータスウインドウが反応する。

 ウインドウを開いてみると……『料理』のスキルが増えていた。


 『料理』……! 『第59世界』のスキルだ……!


 料理なんてどの異世界にもあるものだけど、『第59世界』では特別な意味を持つ。

 食材は豊富、調理技術もどの異世界よりも発達していて、味はもちろん絶品。


 そしてそれは、政治や軍事にまで影響を及ぼすほど。

 おいしい料理で民の心を掴んでやる気を出させたり、滋養強壮のある料理で兵士をパワーアップさせたり……富国強兵には欠かせない。


 国宝級の料理人が作るものは、その威力のすさまじさに『凌理』とも呼ばれているほどなんだ……!


 ボクが得たのはまだ見習いのスキルだけど、さっそくポイントを振ってみよう……!


 と思ったら、残り1だったスキルポイントが、3に増えていることに気づいた。


 よく見たら、レベルがあがって2になっている。

 レイジングチキンを倒したおかげで、経験値がいっぱいになったんだろう。


 レベルアップで、新しいスキルポイントがもらえたようだ。


 でも……待てよ。

 スキルポイントがもらえるのは普通、5レベルごとに1ポイントのはずなのに……ボクは1レベルあがっただけなのに2ポイントも増えている。


 初期のスキルポイントもそうだったけど、ボクは人より多くポイントが得られるようだ。

 まぁ……多い分には別にいいか。ありがたくもらっておこう。


 そうだ。レベルアップしたということは、ステータスポイントも増えているはず。

 1レベルアップすると、好きなステータスに割り振ることができる『ステータスポイント』が1もらえるんだ。


 ……ちなみにこの世界でステータスを成長させるには、ふたつの方法がある。


 ひとつ目は『鍛錬成長』。

 これは身体を鍛えたり、勉強したりすると自然に増えていく。

 逆に怠けてたりすると、下がっちゃうこともあるんだ。


 そして、ふたつ目は『レベルアップ成長』。

 成人の儀式を終えると、この成長ができるようになる。


 これはモンスターを倒したり、珍しいアイテムを見つけたり、クエストをクリアしたり……ようは冒険の功績を残すことにより『経験値』がたまっていき、一定値になるとレベルアップする。


 レベルアップすると、さっき言ったみたいに『ステータスポイント』をもらうことができる。

 そのポイントを、好きなステータスに割り振ることができるんだ。


 ポイントを振りさえすれば、一切鍛えてなくてもステータスが成長し、しかも怠けていても下がることがないので、いいことずくめだったりする。


 ボクも2レベルになったので、その嬉しいステータスポイントがもらえているはず……!


 ちょっとワクワクしながら確認してみる。

 すると……ステータスポイントは1ポイントどころではなく、なんと10ポイントも入っていた。


 ええっ!? すごい……! 1レベルあがっただけなのに、10ポイントも!?

 いくらなんでも、ちょっともらえすぎなんじゃない!?


 女神様が間違って、多く振り込んじゃったりしてるんだろうか?

 後で返せなんて、言われたりしないよね……?


 さっさと使っちゃったほうがいいかもと思い、ボクは『強靭』と『精神』に5ポイントずつ振った。


 『強靭』が高いとHPがあがり、『精神』が高いとMPがあがる。

 HPが高いとやられにくくなり、MPが高いとスキルをたくさん使える。


 特に『錬金術』はMPをたくさん使うので、なるべく多く振っておきたかったんだ。


 ステータスのほうは、これでよし……と。

 さぁて、次はスキルだ。


 ボクは『料理』の『下ごしらえ』『焼く・炒める』『茹でる・煮る』にそれぞれ1ポイントずつ振る。


 持ってるスキルポイント、ぜんぶ『料理』に振っちゃったけど……まぁいいよね。


 作業をひととおり終えたところで、ウサギが回復したようだ。


 ボクは彼女の身体を気づかって、「今日はもう帰る?」と尋ねたんだけど……『わたしはもう大丈夫だから、先に進もう!』と笑顔のイラストつきで、やる気をみせてくれた。


 本人にやる気があるなら、もう言うことはなにもない。

 ボクはウサギを引き連れ、さらに奥へと進むことにした。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 ボクらは多岐に渡る分かれ道のひとつを選び、進んでいったんだけど……それらは通路の最後でまたひとつにまとまっていた。


 いったい何だったんだ……と肩透かしをくらっちゃったけど、通路の最後には螺旋階段があった。


 これは……二階へあがる階段……!?

 やっと……一階を踏破したんだ……!


 階段はかなりの段数があったんだけど、ボクらは二階にあがれる嬉しさから一気に駆けあがる。


 そしてついに……二階の大広間へとたどり着いたんだ……!


 『太陽の塔』は各階にある階段をのぼると、エレベーターホールがある大広間へと出るようになっている。

 ここでエレベーターに乗って降りれば、一階の大広間に戻ることができる。


 そして次からは、一階の通路をわざわざ通ってこなくても、エレベータを使って一気にここまであがってこれるようになるんだ。


 でもそのためには、この二階に到達したという証拠となる、スタンプを身分証に押してもらわなくちゃならない。

 ボクらも二階に着いて、何よりもまず先にやったのが、身分証にスタンプを押してもらうこと。


 大広間の隅に立っているスタンプ係のおじさんに身分証を差し出すと、「はい、ご苦労さん」と、スタンプを押してくれた。


 スタンプは目に見えないので、外見からは押されたかどうかわからないんだけど……身分証のステータスウインドウを開くと、


 【アンノウンの身分証】(2階まで到達)


 としっかり押されていることが確認できた。

 ウサギもスタンプを押してもらって、なんだか嬉しそうだ。


 ボクらは「エヘヘ……」とお互いを見合わせ、健闘を称え合った。


 その後、二階の大広間を散策してみることにした。


 三階までは「観光階」なので、この二階には観光客相手の売店などが多くある。

 でも、平日の今日は人の姿はほぼなくて、閑散としていた。


 そしてこの二階からは、キャンプスペースがあるんだ。

 次の階にチャレンジする前にひと休みでき、商人もいるのでちょっとした取引もできる。


 売店からキャンプスペースに行ってみると、ひと足早くクラスメイトたちが休憩していた。


 スペースの中央には、大きなキャンプファイヤーが焚かれている。

 まわりには小さな火焚き場がいくつもあるので、そこでキャンプができるようだ。


 中央のキャンプファイヤーにはゴンとレツのグループが陣取り、おにぎりを頬張っている。


 まわりの小さな火焚き場には仲良しグループが輪になって、焚き火を囲んでおにぎりを食べていた。


 ボクとウサギは誰もいない火焚き場を見つけ、そこに座り込む。

 その時ちょうど鐘が鳴り渡って、ボクはお昼であることを知った。



「もうお昼かぁ……でもなんで、みんな同じようなおにぎりを食べてるんだろう……? ウサギ、なぜだか知ってる?」



 するとウサギまでもが、いかにもおにぎりが入っていそうな包みをリュックから取り出していた。



『成人の儀式がおわったあと、聖堂主様がみんなにお小遣いと傷薬と、お弁当をくれたの』



 そ……そうだったのかっ……!

 ボクはお小遣いも傷薬もお弁当ももらってないよ……!


 そりゃそうだ……!

 成人の儀式を途中で抜け出してきちゃったんだから……!


 そんなオマケがあるんだったら、最初に教えといてくれればよかったのに……!

 おにぎりってことは、あの聖堂主のお姉さんが握ってくれたんだよね……!?


 お……お姉さんのおにぎり……食べたかったぁーーーっ!!


 ボクは心の叫びをあげながら、頭を抱えて悶絶する。

 自分の愚かさに、床に頭を叩きつけそうになっていると……すっとおにぎりが差し出された。


 【聖なる塩おにぎり】

  疲労回復5%



『こんなにいっぱい食べられないから、半分あげるよ』



 右手におにぎり、左手にスケッチブックを持つウサギ。

 この時ばかりは彼女のことが、天使に見えてしまった。


 ううっ……ありがとうウサギ……!

 あ……いや、でも……それじゃウサギの食べる分が減っちゃう……!


 ボクのうっかりで、ウサギにひもじい思いをさせるわけにはいかない……!

 おにぎりは死ぬほど食べたいけど、ここは我慢だ……!


 と心を鬼にしようかと思ったんだけど……その時ボクの脳裏に、天啓のような素晴らしいアイデアが閃いたんだ。


 そうだ……! こんな時こそ『料理』だ……!

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:2階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は『下ごしらえ』と『焼く・炒める』と『茹でる・煮る』に1ポイントずつ割り振りました。

未使用ポイントはありません。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (0) LV2  … 烈蹴斬

  (0) LV3  … 龍昇撃


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (0) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (0) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●サイキック

 ニュートラル

  (1) LV1  … テレキネシス

  (0) LV2  … クロスレイ

  (0) LV3  … テレパシー


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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