表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/152

43 剣の道

 マニーの膝枕から抜け出したボクは、ベンチに腰かけなおした。

 隣のウサギとマニーは、まだお休み中。


 マニーはうつむいたまま、水飲み鳥みたいにこっくりこっくりしている。

 そのたびに、膝で寝ているウサギの顔面にキスの雨を降らせていた。


 ああっ!? う、うらやま……! あ、いや、違う……危ないところだった……!

 抜け出すのがあとちょっと遅かったら、あのキスの雨の恵みを……あ、いや……餌食になっていたところだった……!


 ボクは複雑な気持ちで胸をなでおろす。

 ウサギが悪夢を見ているみたいにうなされはじめたけど、途中で起こすのも何だと思い、そのままにしておく。


 ふたりが目覚めるのを待つあいだ、ステータスウインドウを開いてみた。

 ヒマつぶしがわりに、ステータスを確認してみることにしたんだ。


 ボクのレベルはいま13。

 3階のボスフロアでモンスター軍団と戦う前はレベル10だったのに、一気に3もあがってしまった。


 ボクはなにもしてないのに……。

 どうやら『降臨術』で召喚した妖精や英霊がモンスターを倒した場合、何分の一かの経験値が召喚主にも入るようだ。


 それにしても……ムサシの一撃はスゴかったなぁ……。

 斬馬刀をひと振りしただけで、あんな簡単にカマイタチを出すなんて……。


 しかも、そのサイズも規格外。

 野球場みたいな広い場所の、端から端まで埋め尽くすほどの超巨大なヤツだった……。


 あ、ちなみに野球場ってのは、『野球』っていうスポーツをするためのグラウンドのこと。


 こっちの世界にはないスポーツなんだけど、他の世界では盛んなんだ。

 国家間の紛争を、戦争のかわりに『野球』で決着をつける世界もあるほど。


 野球をするチームには熱狂的なファンがついていて、まるで信者みたいに……。


 ……あ、そんなことは今どうでもいいんだった。

 それよりも気になるのは、あんなカマイタチを出したムサシがボクのことを、『師匠』って呼んでいたことだ。


 ムサシは生涯を通して、どんな権力者に対しても(こうべ)を垂れなかったという。

 ただひとり、彼を負かした人間を除いて……。


 それをボクにあてはめた妄想なら、イヤっていうくらいしてきたけど……まさか本当にムサシに会えて、しかも師匠って呼んでもらえるなんて……まだ夢のなかにいるみたいだ……。


 まぁ、人違いだとは思うけど……もしかしたらボクって、剣術の才能を秘めているのかもしれない。

 ひとりチャンバラごっこなら、木の枝にぶらさげた薪を相手に、それこそ毎日のようにしてたし。


 今までは『必殺技』のスキルを活かすために、敢えてナックルを使ってたけど……これからは剣の道を進むのもアリかもしれない。


 ……よし、決めた! これからは剣術だ……!

 レベルアップで獲得したスキルポイントを、剣術よりの割り振りにしてみよう……!


 ボクは30あるスキルポイントを、『強靭』に10、『敏捷』に4、『器用』に14、『精神』に2を振ってみた。

挿絵(By みてみん)

 これでよし、っと……!


 ムサシは著書である『五輪書(ごりんのしょ)』で、こう記している。


 『武士道とは死ぬ事と見つけたり、と云われるが、剣士道は生きる事を見出すものである。そして感情にくみしない強靭な肉体があってこそ、生きるための剣が振れる。これは我が師に教わった言葉で、私が生涯にわたって守ってきたことである』


 ムサシは『強靭』さこそが、活きた剣……すなわち強力な剣を振るうために必要なものだと言ってるんだ……!


 しかしボクはふと、違和感を抱いた。


 いまボクは、ムサシの言葉に習っている。

 仮にボクがムサシの師匠だったとして、『強靭』さの大事さをムサシに説いたんだとしたら……ボクが教えたことを、ムサシを通してまたボクが習ってるってことになるよね……。


 なんだか頭がこんがらがってきたので、それ以上考えるのはやめにした。


 よし、ステータスはこれでいいとして……次はスキルポイントだ。

 3レベルあがったおかげで、残しておいたポイントとあわせて7ポイントもある。


 なにか剣術に役立ちそうなスキルでも……と思っていたら、『英霊召喚』の項目がグレーアウトしていることに気づいた。


 あっ……!

 これは『クールダウン』だ……!


 スキルはそれぞれに決められたMPを消費して使うんだけど、それとは別に、再使用するための休み時間のようなものも設けられている。


 強いスキルほど多くのMPを消費し、さらには長い休み時間を必要とするんだ。


 強力なスキルになると、1日に1回とかしか使えない。

 超強力なスキルになると、次の満月の夜を経るまで使えない、なんてのもある。


 『英霊召喚』はたしかに強力だった。

 なんたって、戦闘能力1万相当のモンスター軍団を軽々とやっつけちゃったんだから。


 ボクは軽く落ち込む。


 ああ……次の戦いでもまたムサシを召喚しようと思ってたのに……。

 再び使えるようになるのは、いつになるんだろうなぁ……。


 またしても悩みそうになっちゃったので、それ以上考えるのはやめにした。

 スキルツリーに注意を戻す。


 なにか、いいスキルはないかなぁ……と眺めていると、新たなるスキルが目に入った。


 『ミュータント』の『アニマル』……!

 これはたしか、第81世界のやつだ……!


 第81世界では普通の人間が、あるきっかけによって突然変異を起こし、ミュータント化することがある世界。


 きっかけというのは遺伝だったり、科学の実験だったり、放射能だったり……理由は様々なんだけど、ミュータント化した人間は、常人にはありえない身体能力を得るんだ。


 スキルツリーには、『エレファント』『ドルフィン』『イーグル』の3つがある。

 おそらくそれぞれ、嗅覚の強化、聴覚の強化、視覚の強化だと思う。


 こうして見ると、『超感覚』スキルの『味覚』『音感』『声帯』似てるんだけど、微妙に違う。


 『ミュータント』は感じとる能力を強化する。

 たとえば『ドルフィン』だと耳がよく聞こえるようになり、遠くのヒソヒソ話とかでもハッキリ聴きとれるようになるんだ。


 『超感覚』は感じ取ったあとの能力を強化する。

 たとえば『音感』だと、耳で聞いた音をすべて音階で感じとれるようになるんだ。


 なんにしても、『ミュータント』スキルはぜんぶこれからの冒険に役立ちそうだったので、さっそく1ポイントずつ振ってみた。


 これでよし……!

 さぁて、他にもいいスキルはないかなぁ……とスキルツリーを流していると、さらなる新スキルを発見する。


 その名も『五輪書(ごりんのしょ)』……!


 ムサシの著書と同名の、このスキル……!

 間違いない……『第5世界』の剣術スキルだ……!


 『五輪書』は5つの巻から構成されている。

 『地の巻』『水の巻』『火の巻』『風の巻』『空の巻』。


 でも今回追加されたのは、剣術の基礎である『地の巻』だ。

 きっとボクの剣術がまだまだだから、コレひとつだけなんだろう。


 ボクは剣に興味を持ちはじめていたんだけど、その気持ちがさらに膨らんでいくのを感じていた。


 ……よぉし!

 こうなったら、剣の道を極めて……ムサシみたいになってやるぞっ!


 『地の巻』にある項目は、『大地の型』『不動峰巒剣(ふどうほうらんけん)』『(ペケ)刀流』のみっつ。


 さっそくそれぞれにポイントを振ってみる。


 なかでも憧れだったのは『x刀流』……!

 これは剣聖となったムサシが創った八刀流剣術である、『八天一流』の基礎となるスキルだ。


 かけたスキルポイントの数だけ、使いこなせる剣の数が増えていく。

 たとえば2ポイントなら二刀流、3ポイントなら三刀流といったふうに。


 ボクは1ポイントだけを残し、『地の巻』のスキルをすべて取得した。


 よし、これでまた一歩、ムサシに近づいたぞ……!

 この調子でいつかきっと、モンスター軍団をひと太刀で倒せるほど強くなってやるんだ……!


 静かな大広間で、ボクはひとり熱い思いを燃え上がらせる。

 すると水をさすように横から、「うにゃぁぁぁ」と緊張感のない悲鳴が聞こえてきた。


 目覚めたウサギが、顔をキスマークだらけにさせられながら……じたばたともがいていたんだ。

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:4階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は『エレファント』と『ドルフィン』と『イーグル』と『大地の型』と『不動峰巒剣』と『x刀流』に1ポイントずつ割り振りました。

未使用ポイントが1あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●五輪書

 地の巻

  (1) LV1  … 大地の型

  (1) LV2  … 不動峰巒剣

  (1) LV3  … x刀流


●ミュータント

 アニマル

  (1) LV1  … エレファント

  (1) LV2  … ドルフィン

  (1) LV3  … イーグル


●サイキック

 ニュートラル

  (4) LV1  … テレキネシス

  (1) LV2  … クロスレイ

  (1) LV3  … テレパシー

 ダークサイド

  (1) LV1  … ダークチョーカー

  (0) LV2  … エナジードレイン

  (0) LV3  … マインドコントロール


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 打撃必殺技

  (1) LV1  … xカウンター

  (1) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴


●超感覚

 モーメント

  (1) LV1  … 思考

  (0) LV2  … 記憶

  (0) LV3  … 直感

 パーフェクト

  (0) LV1  … 味覚

  (0) LV2  … 音感

  (0) LV3  … 声帯


●降臨術

 妖精降臨

  (1) LV1  … 戦闘妖精

  (1) LV2  … 補助妖精

  (1) LV3  … 生産妖精

 英霊降臨

  (1) LV1  … 戦闘英霊

  (0) LV2  … 補助英霊

  (0) LV3  … 生産英霊


●リバイバー

 カオツルテクト

  (0) LV1  … 蝸

  (0) LV2  … 蛞

  (0) LV3  … 蛭


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (1) LV1  … 盛り付け

  (1) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (1) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (1) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★新作小説
『駄犬』と呼ばれパーティも職場も追放されたオッサン、『金狼』となって勇者一族に牙を剥く!!
追放されたオッサンが、冒険者として、商売人として、勇者一族を見返す話です!


★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=369162275&s script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ