38 選択の行く末
ボクはこのボスフロアで、多数のモンスターを見たときから……ずっと悩んでいた。
その選択肢は、大人たちに屈して『冒険者ギルド』に入るかどうかじゃなかった。
ボクが考えていたのは……どうやって手持ちのスキルで、この窮地を脱するかどうかだったんだ……!
掲げていた指は、すでに空中に錬金術の陣を描き終えていた。
それを床に向かって叩きつけると、
……ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!
激しい音とともに、地面が揺れはじめる。
「な……なんだっ!? じ、地震かっ!?」
「と……塔の中にいるのに、こんな揺れるなんて……!?」
「い、いや、見て! モンスターたちは揺れてない……! 私たちの足元だけが揺れてるのよっ!」
「なっ……なんで!? なんで俺たちの所だけ揺れてるんだよぉぉぉぉっ!?」
「しっ……知らないわ……きゃああああああああーっ!?」
悲鳴をあげながら、崩れ落ちるクラスメイトたち。
仲良しグループは手をとりあい、お互いを支え合っている。
しかし誰からの手助けもなく、そのままへたり込んだり、尻もちをつく者もいた。
続けざまに、突き上げるような振動が迫ってくる。
石の床に、稲妻のような亀裂が走った。
……ビキィィィィッ……!
足元がひび割れたので、クラスメイトたちはついに我を忘れてしまう。
「ひゃあああああっ!?」
「や……やべえっ!? つ、ついに、ヒビまで入りやがったぁ!?」
「じ……地割れよっ! 地割れが起こってるんだわっ!」
「ど、どうすりゃいいんだよぉっ!?」
「こ、このままだと、裂け目できてみんな落ちちゃう! だから、今すぐ逃げ……!」
あるクラスメイトの扇動を、ボクは大声で遮った。
「ダメだっ!! みんな、この場所から動かないでっ!!」
ぴしゃりとした声に、みんなの動きが固まる。
ボクにはわかっていたんだ。これから何が起こるかが……!
ヒビ割れの次に現れるのは、地割れなんかじゃない……!
ビシッ! ビシビシビシ……! ミシィィィィッッ……!
……ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!
氷の大地を、流氷が突き破るような音とともに……床から巨大な石柱が顔を出した。
ボクらはちょうど、その真上にいる。
石柱のてっぺんはデコボコしていたけど、ちょっとしたステージくらいの広さがあって……クラスメイト全員をギリギリながらも持ち上げていた。
ボクが、マニーが、ウサギが……そしてみんなが立っている床が……地殻変動するように盛り上がりはじめたんだ……!
「わあああっ!? なんなんだ!? なんなんだよぉっ!?」
「なっ……なにっ!? なにが起こってるの!?」
「せ、石柱が、床を突き破って出てきた……!?」
「お、俺たちを、持ち上げようとしてるのか……!?」
お釈迦様の手のひらにいるように、空に向かって運ばれていくボクたち。
天変地異のような光景に、見下ろす大人たちも我が目を疑っていた。
「うおっ!? な、なんだありゃあっ!?」
「なんか、エレベーターみたいにこっちにあがってきてるぞ!?」
「あんなにデカい石柱が、この塔に埋まってたなんて……!?」
「じ、地震でも起こってるのか!?」
「いや、この塔は地震の影響をほとんど受けないはずだぞ!?」
「じゃ、じゃあ何か!? 外で今までにないくらいの大地震が起こってるってことか!?」
「いや、違う……! 大地震なんだったら、俺たちの立っている場所も揺れるはずだろ!? こっちは全然揺れてねぇぞ!」
「そ、そう言えばそうだ! 下のモンスターたちを見てみろ! どいつもこいつも、ポカンとした顔で見上げてやがるぞ!?」
「ってことは……あのガキどもの所だけが、揺れたってことなのか!?」
「ま……まさか……!? い、いやっ、いくらなんでも……!?」
「な、なんだよ!? もったいつけてないで、早く言えよっ!?」
「あのガキ……アンノウンがやったんじゃ……!?」
「バカ言うなっ! 地震を起こせるスキルなんて、あってたまるかよっ!」
「仮にあったとしても、地震を起こすだけじゃなくて、地形まで変えてるんだぞっ!? ありえねぇだろっ!?」
「そんなスキルが使えるのは……大地の神様くらいなんじゃねぇーか!? それとも何か!? あのガキが神様だとでも言うのかよっ!?」
天然のエレベーターで上昇していたボクは、みんなの疑問に心の中で答える。
そう……! やったのは他でもない、ボクだ……!
ボクはずっと悩んでいた。
このフロアにいるモンスターの大軍を、どうやったら撃破できるか……そしてどうやったら、逃げられるかを……!
そして思いついたのが、『錬金術』のひとつ……『隆起』……!
ありったけの力を込めて、床を隆起させたんだ……!
クラスメイト全員を乗せるために、広範囲を範囲指定したせいか……地形が変わるほどの隆起が起こっちゃったけど、うまくいった……!
このまま石柱に乗って、部屋の入口まで戻れれば……ボス戦をやりなおせる……!
特別に教えてもらった、ボスフロア攻略のコツ……3人ひと組で入るというやり方で、再挑戦できるんだ……!
しかしボクの願いも虚しく、隆起は半分くらいの高さ……3階建てくらいの家の高さで止まってしまった。
し……しまったぁ……!
スキルポイントが足りなかったんだ……!
ボクは唇を噛んだ。
クラスメイトたちは、キツネにつままれた様子であたりを見回してる。
「あ、あれ? 揺れが止まった……?」
「どうやら、地震がおさまったみたいだぞ……」
「石柱がせり上がるのも、ここで終わりみたいね……」
「おいおい、こんな中途半端なところで止まってんじゃねぇーよ!」
「使えねぇ~! どーせだったら一番上まで行きゃいいのに……!」
「でもさ、ひとまずモンスターからは逃げられたから、いいんじゃね?」
「そうだけどさ……うわあっ、お、落ちるっ!?」
「おい、狭いんだから、あんまり動くんじゃねぇよっ!?」
ボクは、おしくらまんじゅうのように身を寄せ合うクラスメイトたちに向かって言った。
「あの……この石柱は錬金術で出したやつだから、あんまり頑丈じゃないんだ。ちょっと人数が多いから、暴れると崩れちゃうかもしれない。だから、じっとして……わあっ!?」
ボクの注意は、途中で遮られてしまう。
何者かに襟首を掴まれ、後ろに引きずり倒されちゃったんだ。
そのまま引きずられ、石柱の上から落とされそうになる。
落ちる寸前でヘリにつかまって、なんとか抵抗した。
「い……いきなり何するんだっ!?」
ボクは這い上がろうとしたんだけど、サンダルの裏で頭を踏みつけられる。
「人数が多くて崩れるんだったら、お前が落ちりゃいいだけだろ」
そう言ってツバを吐きかけてきたのは、レツだった……!
レツは、ネズミを狙う猛禽類のような視線でボクを見下ろしながら、石のハンマーを振り上げていたんだ……!
「おら、手ぇ離さねぇと、ぐしゃぐしゃになっちまうぞぉ!?」
そして何のためらいもなく振り下ろされる、石の槌。
ハンマーで他人の手の骨を砕くなんて、普通はやらない……!
でも……レツは……レツならやる……!
相手がボクともなれば、アリを踏み潰すくらいの感覚で……やるヤツなんだ……!
これは、脅しじゃない……!
直感したボクは、咄嗟に手を離していた。
かつてボクの手があった場所が、穿たれた瞬間、
「うわああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
まっさかさまに、落ちていた。
■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)
□■□■スキルツリー■□■□
今回は割り振ったポイントはありません。
未使用ポイントが1あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●サイキック
ニュートラル
(4) LV1 … テレキネシス
(1) LV2 … クロスレイ
(1) LV3 … テレパシー
ダークサイド
(1) LV1 … ダークチョーカー
(0) LV2 … エナジードレイン
(0) LV3 … マインドコントロール
●潜在能力
必殺技
(1) LV1 … 波動弾
(1) LV2 … 烈蹴斬
(1) LV3 … 龍昇撃
打撃必殺技
(1) LV1 … xカウンター
(1) LV2 … 爆裂拳
(0) LV3 … 点穴
●超感覚
モーメント
(1) LV1 … 思考
(0) LV2 … 記憶
(0) LV3 … 直感
パーフェクト
(0) LV1 … 味覚
(0) LV2 … 音感
(0) LV3 … 声帯
●降臨術
妖精降臨
(1) LV1 … 戦闘妖精
(1) LV2 … 補助妖精
(1) LV3 … 生産妖精
英霊降臨
(1) LV1 … 戦闘英霊
(0) LV2 … 補助英霊
(0) LV3 … 生産英霊
●リバイバー
カオツルテクト
(0) LV1 … 蝸
(0) LV2 … 蛞
(0) LV3 … 蛭
●料理
見習い
(1) LV1 … 下ごしらえ
(1) LV2 … 焼く・炒める
(1) LV3 … 茹でる・煮る
コック
(1) LV1 … 盛り付け
(1) LV2 … 揚げる・漬ける
(0) LV3 … 燻す・焙煎
●錬金術
風錬
(1) LV1 … 抽出
(0) LV2 … 風薬
(0) LV3 … 旋風
火錬
(1) LV1 … 変形
(0) LV2 … 火薬
(0) LV3 … 噴火
地錬
(1) LV1 … 隆起
(0) LV2 … 地薬
(0) LV3 … 地震
水錬
(1) LV1 … 陥没
(0) LV2 … 水薬
(0) LV3 … 奔流
●彩魔法
灰
(0) LV1 … フリントストーン
(0) LV2 … プラシーボ
(0) LV3 … ウイッシュ




