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36 ボスの部屋

 ぞろぞろと『力だめしの間』を出ていくクラスメイトたち。

 少し離れてボクらもついていくと、また広い部屋に出た。


 『注意! ここから先、3階のボスが待ち構えています!』


 危険色の横断幕の先には、ボスがいるらしい部屋が続いている。

 途中から壁の明かりが無く、薄暗くなっていて……いかにも何か待ち構えていそうな雰囲気いっぱいの空間が広がっていた。


 暗い部屋の手前には、冒険者らしき大人たちがたむろしていて、


 『ボス戦同行します! 1名あたり100,000(エンダー)

  ※冒険者ギルドに同時加入の場合、90%OFF!』


 という看板を掲げてアピールしている。



「フン、『力だめしの間』でギルドに加入しなかったヤツを、ここで拾い上げる……二段構えというヤツか。ボスがいるとわかると、誰もが手助けのひとつも欲しくなるというもの……その弱みにつけこんだ、あさましいやり方だ」



 ボクの隣りにいるマニーが、忌々しそうにつぶやいた。


 ボスがいる部屋ということは、それを突破すれば4階に行けるということだ。

 ここまで来たなら、4階に行きたくなるのが人情というもの。


 それに、ひとり10万¥と言われると高い気もするけど、冒険者ギルドに加入すれば1万¥になる……。

 何も知らないボクだったら、一も二もなく入っていたかもしれない。


 しかもスカウトの人たちはボクを冒険者ギルドに入れるのに夢中で、クラスメイトたちを誰も勧誘しなかったようだ。

 今になって、激しい勧誘ピーアールをしている。



「ボスはかなりの強敵だ! 生きて帰れないかもしれないよ!?」



「その若さでまだ死にたくないよな!? そんな時こそ冒険者ギルドだ!」



「冒険者ギルドはキミたちのような新人冒険者を、強力にバックアップするぞ!」



「塔の構造も知り尽くしてるから、スムーズな冒険が可能になる!」



「どんな強力なボスも、俺たちが協力して撃破してやる! さっそく加入して、ここのボスを俺たちと共に戦えば……その頼もしさがすぐにわかるはずだ!」



「さぁ、いらっしゃいいらっしゃい! ギルドに加入すれば、ひとりたったの1万¥だよ!」



 「たった」と言われても、成人の儀式を終えたばかりのボクらにとって、1万¥というのは大金だ。


 昨日のボクの稼ぎは、絶好調で8千¥だった。

 しかも食費や宿代に遣っちゃったから、今の手持ちはゼロに近い。


 たぶん、前にいるクラスメイトたちも同じような(ふところ)具合なんだろう。

 顔を見合わせあって、ざわざわと話し合っている。


 しかし……その迷いを断ち切るかのように、先頭にいるゴンが叫んだ。



「……よぉしっ! 俺様たちはギルドの助けなしで、ボスに挑むぞっ! これまでもギルドの助けなしでやってきたんだ! それにこれだけいれば、いくらボスだって怖くねぇ! 袋だたきにしてやろうぜ!」



 石のハンマーを掲げ、鼓舞するように叫ぶゴン。



「フッ、ゴンのヤツ……きっと、冒険者ギルドからスカウトされなかったことを根に持っているんだろうな。動機はともかく……ギルドに頼らない考えは賛成だ」



 独り言のように言って、少し嬉しそうに髪をかきあげるマニー。

 彼はどうやら、冒険者ギルドのことが嫌いでしょうがないんだろう。


 ゴンのやる気に、クラスメイトたちの士気もあがっていく。

 自分たちだけでボスを倒そうという雰囲気になりつつあったけど、大人たちが脅かすように口を挟んできた。



「あーあ、やめといたほうがいいよぉ? ボスは強いから、キミらだけじゃ無理だと思うなぁ」



「そう言って乗り込んでいったヤツほど、返り討ちにあっちゃうんだ」



「ボスを見たら絶対後悔するよ。大人しくギルドに入って、1万¥払っておけばよかったって」



 しかし……それがゴンの気持ちにさらに火をつけたようだ。



「うるせぇっ! 俺様がいる以上、負けは絶対にありえねぇ! そんなに冒険者ギルドに入ってほしけりゃ、入ってやるよ! ボスをブチのめしてからな! 俺様たちだけでボスを倒せたら……特待扱いにしろ! いいなっ!?」



 大人たちはニヤニヤしながら肩をすくめる。



「キミたちだけの力で、ボスを倒せたなら……いいよ。全員、特待扱いで冒険者ギルドに入れてあげよう。ま、無理だと思うけどね」



「言ったなぁっ!? 吐いたツバ飲むんじゃねぇぞっ!? よぉし、野郎ども、いくぞぉっ!!」



「おおーーーっ!!」



 クラスメイトたちはゴンをリーダーにして、いつの間にか一致団結していた。

 (とき)の声をあげ、統率のとれた軍隊のようにザッザッと進んでいく。


 ボスがいるという真っ暗な穴に、次々と吸い込まれていくクラスメイトたち。

 取り残されたボクらは迷ったけど、後を追うことにした。


 ボスが待ち構えているという部屋は、広いけど天井はかなり低かった。

 といっても「この塔の中では」という意味で……普通の家くらいの高さはある。


 最後尾のボクたちが部屋に入った瞬間、微振動とともにガクンと床が沈んだ。

 まるで床がスイッチになっていたかのように、壁の松明が一斉に灯って部屋中が明るく照らされた。


 それまでは暗くて、部屋の広さがよくわからなかったんだけど……今はわかる。

 野球場みたいにだだっ広い。でも天井は低いから、なんか妙なカンジだ……。


 と思っていたら、天井が少し高くなっているのに気づいた。



「……天井が、あがってる……?」



「いや、違う。床が少しずつ沈み込んでいるんだ……!」



 マニーから言われて、動いているのはボクらのほうなんだと理解する。


 ゴゴゴゴゴと石が擦れるような音とともに……ボクたちが立っている床が、少しずつ下がっていたんだ……!


 クラスメイトたちは部屋に入るまでは勇ましかったのに、床が沈みはじめたとたん取り乱しはじめた。



「えっ……!? なに、なんなの……!?」



「ゆっ、揺れてる……!? じ……地震!?」



「いや、床がエレベーターみたいに下がってるんだ……!」



「み……見て! 段差になっちゃってる……!」



 あるクラスメイトが、ボクらの背後を示す。

 振り向くと、大人たちのいる入口のほうは動いていなかった。


 ボクらのいる、ボス部屋の床だけが……まるで底なし沼みたいに沈み込んでいたんだ……!


 「地獄の一丁目に、いってらっしゃーい!」とニヤケ顔で手を振る大人たち。

 それだけで、クラスメイトたちの足並みは簡単に乱されてしまった。



「どっ……どうしよう!? このまま沈みこんだら、どうなっちゃうの!?」



「たぶんこのいちばん下で、ボスが待ち構えてるんだよ……!」



「だろうな! 多分だけど、この段差になっている壁を背にして……反対側にボスが現れるんじゃねぇか!?」



 クラスメイトのひとりが、部屋の奥のほうにいる広大な空間を指さした。



「ええっ、ってことは、壁際に追い詰められた状態で戦うってこと!?」



「そっ……そういうことになるじゃねぇか! 今のうちに、ここから移動しとかねぇと……!」



 まだ何も現れていないのに、恐慌状態になるクラスメイトたち。

 固まっている状態から散開しようとしていたんだけど、



「お前らっ! 下手に動くんじゃねぇ! 散り散りになったら、それこそ簡単にやられちまうぞっ! いいからここでじっとしてろっ!!」



 ゴンに一喝され、みんなはピタリと逃げ出すのをやめた。

 小魚の群れのように、再びひとつになるクラスメイトたち。


 ゴンは乱暴者だけど、こういう時は頼りになるなぁ……なんてボクは思っていた。


 やがて、底まで辿り着いたのか……ズズン、とひときわ大きな揺れをもって、床の沈下が止まった。


 ボクらが入ってきた入口は、遥か上空のほうにある。

 もはや何をやっても戻れそうもないほどに、高低差がついていた。


 この部屋に初めて入って来た時、天井が低いなぁなんて思ったけど……とんでもない。

 今やこの部屋は、いままで見たどの部屋よりも天井が高くなっていたんだ……!


 これから何が起こるのか、どんなボスが出てくるのか……みんなは落ち着かない様子であたりを見回している。


 すると、またしても石が擦れるような音がした。

 それも、かなり遠くのほうから。


 ボクらがいる場所の、ちょうど反対側の壁が震えだし……倉庫のシャッターのように持ち上がっていたんだ……。


 そしてついに、『ボス』が現れる。

 それはまだ、片鱗でしかなかったんだけど……ひと目みた瞬間、



「ひえええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?」



 クラスメイトだけでなく、マニーも、ウサギも……そしてボクまでもが、絶望の悲鳴をあげていたんだ……!

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は割り振ったポイントはありません。

未使用ポイントが1あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●サイキック

 ニュートラル

  (4) LV1  … テレキネシス

  (1) LV2  … クロスレイ

  (1) LV3  … テレパシー

 ダークサイド

  (1) LV1  … ダークチョーカー

  (0) LV2  … エナジードレイン

  (0) LV3  … マインドコントロール


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 打撃必殺技

  (1) LV1  … xカウンター

  (1) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴


●超感覚

 モーメント

  (1) LV1  … 思考

  (0) LV2  … 記憶

  (0) LV3  … 直感

 パーフェクト

  (0) LV1  … 味覚

  (0) LV2  … 音感

  (0) LV3  … 声帯


●降臨術

 妖精降臨

  (1) LV1  … 戦闘妖精

  (1) LV2  … 補助妖精

  (1) LV3  … 生産妖精

 英霊降臨

  (1) LV1  … 戦闘英霊

  (0) LV2  … 補助英霊

  (0) LV3  … 生産英霊


●リバイバー

 カオツルテクト

  (0) LV1  … 蝸

  (0) LV2  … 蛞

  (0) LV3  … 蛭


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (1) LV1  … 盛り付け

  (1) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (1) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (1) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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