35 キャルルの誘惑
揉み合い寸前のマニーと、『冒険者ギルド』のスカウトのオジサン。
ふたりの間に挟まれている、ボクとウサギ。
ただでさえややこしい状況なのに……さらに新たな乱入者が現れる。
衝立からすっと顔を出して覗き込んできたのは……ギャルグループのリーダー、キャルルだった。
「アンノウンが賞金いらないんだったら、ウチにちょうだい! ウチがかわりにギルドに入るからさ!」
かわりに申し出るように手を挙げながら、応接スペースに入ってくるキャルル。
背後には取り巻きのギャルたちがいて、彼女の背中を虎穴に入っていくかのように不安そうに見つめていた。
取り巻きの心配をよそに、キャルルはボクらが座っていたソファにぼふっと腰掛ける。
「これに名前書けばいいんっしょ?」
「いや、ダメだ。賞金はギルドに入れば誰でもいいってわけじゃない。あくまでランキングに入ったアンノウン君がサインしないと渡せない」
スカウトのオジサンにピシャリと断られ、ふくれっ面になるキャルル。
「えーっ、マジぃー?」
しかし懲りない様子で立ち上がると、ボクの前までやって来た。
「じゃあさ、じゃあさ、冒険者ギルドに入んなよ、アンノウン。でさ、賞金をウチにちょーだい!」
まるでそれが当然のようにおねだりされたので、ボクはつい「うん」って返事しそうになっちゃった。
でも、よく考えたら……いや、よく考えなくても……今までボクやウサギをいじめてきた女の子に、なんで賞金をあげなきゃいけないんだろうと思い直す。
「い、嫌だよ……ボクは冒険者ギルドには入らないって決めたんだ」
「えーっ、いーじゃん!? 入んなって! ウチに賞金くれたら、特別にいーことしてあげるよ!?」
「いいことって……ええっ!?」
ボクの腕が掴まれたかと思うと、強く引っ張られる。
キャルルはマニーの元から、ボクを奪い去ったんだ。
ボクの身体は、盗賊にさらわれる村娘のように翻弄され……キャルルに抱き寄せられる。
キャルルはボクよりだいぶ背が高い。
だから文字どおり、胸に飛び込む形となって、
むにゅっ
顔全体が、やわらかい感触に包まれたんだ……!
これと似た感触は、マニーに抱き寄せられたときも感じた。
でも今回は鎧ごしじゃない。しかも服ごしでもない。
キャルルはブラウスの胸元を大きく開けてるから、まともに素肌どうしがくっついちゃったんだ……!
息が詰まるような甘い匂いとあたたかさ、そしてめり込むほどの柔らかさ……さらに吸い付いてくるような、しっとりした肌の感触……!
まるで、つきたてのお餅に顔を突っ込んでいるみたい……!
あまりの触り心地の良さに、ボクは腰くだけになりそうだった。
でも……とんでもないものに触れていると、それは簡単に触れちゃダメなものなんだと、理性が鳴らした警報で正気を取り戻す。
ボクはなんとかして離れようとしたんだけど、キャルルは抱きしめて離してくれない。
「ほらほら、きもちーっしょ? こんな風に、毎日したげるよ? ほら、ぎゅーって!」
腕に力を入れられ、顔がさらに谷間に埋没した。
ついに最深部である鳩尾に、ボクの鼻先がこつんと当たる。
女の子の、大切な場所のひとつ……。
本来、触れていいのは恋人か、赤ちゃんだけの場所……。
そんな女の子の中心部ともいえる場所に、今まさにボクはいるんだ再認識し……ついにガマンの限界を越えてしまった。
全身がカアッと熱くなって、ピンクの霧に脳が包まれる。
前後不覚となり、完全にパニックになってしまったんだ……!
「んむぅーっ!?!?」
「ああ、暴れんなって、ほら、ぱふぱふ~!」
ボクの顔は、耳まで柔らかいものに覆われていた。
それだけでもヤバイのに、さらに両側からサンドイッチにするみたいに圧迫してくるんだ……!
目、鼻、口、耳、そして肌……!
五感がすべて、気持ちいい物体に支配されてしまった……!
ボクはなにが何だかわからなくなって、もうオーバーヒート。
サウナの中で倒れてしまったかのように、すっかりのぼせきっていた。
ばたつかせていた手を、だらんと降ろし……母なる身体に寄り掛かる。
スライムに全身を取り込まれてしまったかのように、なすがままに身を任せていた。
「あっ、よーやく大人しくなったし。よしよし」
抱き寄せたまま、頭をナデナデしてくれるキャルル。
「ふわぁ……」とボクはとろけた。
頭を撫でられるのって、こんなに気持ちいいんだ……。
こんなに女の子にやさしくされたのは、生まれて初めてのことだった。
ボクに尻尾があったなら、たぶんちぎれんばかりに振っていたと思う。
「ねぇ、アンノウン……? 冒険者ギルドに入ろうよ。そして賞金を、ウチにちょうだい……? ねっ?」
梵天で愛撫されているような、ゾクゾクする声が耳をくすぐる。
「ふぁ……ふぁ……」
ボクは、くしゃみが出そうで出なさそうな……そんな感じのうわごとを、繰り返していた。
ああ、ダメだ……気持ちよすぎて、呂律がまわらない……。
でも、ちゃんと答えなきゃ……。
『はい』って……。
「は……わあっ!?」
ボクの身体は再び翻弄され、淫夢から現実に引き戻される。
気がつくと、マニーとウサギが鼻息を荒くして、ボクの手を引っ張っていたんだ。
「しっかりしろ! アンノウン! 色香に惑わされるな! 胸だけの女の言いなりになるだなんて……見損なったぞっ!」
『デレデレしちゃ、ダメーっ!』
ふたりとも顔を赤くし、頭から蒸気が噴出してるんじゃないかと思うほどに怒っていた。
女の子には紳士のはずのマニーが「胸だけの女」とキャルルを批難している。
ウサギに至っては、プンスカしているイラスト付きで不機嫌さを露わにしていた。
「チッ、邪魔すんなし。せっかくあとチョットだったのに……」
舌打ちするキャルル。
見かねた取り巻きたちが、ブラウスの袖を引っ張っていた。
「ねぇ、キャルル、もうやめなって」
「アンノウンに関わるのは、もうよそうよ」
「壁をへこませた時、あんなにビビってたじゃん。なのになんでまたチョッカイなんて……」
「立ち直りが早いのはキャルルのいーとこだけど、今回ばかりは相手が悪いって!」
……そう、そうなんだ。
キャルルって気まぐれでワガママで、自分が思い通りにならないことは許せない……クラスでは女王様みたいな女の子。
それで他人にひどいことをしたり、たまにひどい目に遭わされたりもしてるようなんだけど……でも、したこともされたこともすぐ忘れちゃうんだ。
ボクやウサギみたいな一方的にやられるだけの人間にとっては、たまったもんじゃないけど……強い立場の人間、たとえばゴンやレツ、そしてマニーとかといがみ合っても、数時間後には何もなかったかのようにケロっとしている。
ようは後に引きずらない、サッパリした性格なんだ。
だからボクに錬金術で脅されても、懲りずにこうやって絡んできたんだろう。
キャルルはイラついたように爪を噛んでいたけど、取り巻きから説得されて、とうとう諦めたようだ。
「はぁ……うっぜぇ……行くよ!」
ボクを横目で睨みつけたあと、ミニスカートを翻して去っていくギャルグループ。
ボクらも揃って応接スペースを出る。
スカウトのオジサンはもう引き止めてくることもなく、呆然と見送ってくれた。
■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)
□■□■スキルツリー■□■□
今回は割り振ったポイントはありません。
未使用ポイントが1あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●サイキック
ニュートラル
(4) LV1 … テレキネシス
(1) LV2 … クロスレイ
(1) LV3 … テレパシー
ダークサイド
(1) LV1 … ダークチョーカー
(0) LV2 … エナジードレイン
(0) LV3 … マインドコントロール
●潜在能力
必殺技
(1) LV1 … 波動弾
(1) LV2 … 烈蹴斬
(1) LV3 … 龍昇撃
打撃必殺技
(1) LV1 … xカウンター
(1) LV2 … 爆裂拳
(0) LV3 … 点穴
●超感覚
モーメント
(1) LV1 … 思考
(0) LV2 … 記憶
(0) LV3 … 直感
パーフェクト
(0) LV1 … 味覚
(0) LV2 … 音感
(0) LV3 … 声帯
●降臨術
妖精降臨
(1) LV1 … 戦闘妖精
(1) LV2 … 補助妖精
(1) LV3 … 生産妖精
英霊降臨
(1) LV1 … 戦闘英霊
(0) LV2 … 補助英霊
(0) LV3 … 生産英霊
●リバイバー
カオツルテクト
(0) LV1 … 蝸
(0) LV2 … 蛞
(0) LV3 … 蛭
●料理
見習い
(1) LV1 … 下ごしらえ
(1) LV2 … 焼く・炒める
(1) LV3 … 茹でる・煮る
コック
(1) LV1 … 盛り付け
(1) LV2 … 揚げる・漬ける
(0) LV3 … 燻す・焙煎
●錬金術
風錬
(1) LV1 … 抽出
(0) LV2 … 風薬
(0) LV3 … 旋風
火錬
(1) LV1 … 変形
(0) LV2 … 火薬
(0) LV3 … 噴火
地錬
(1) LV1 … 隆起
(0) LV2 … 地薬
(0) LV3 … 地震
水錬
(1) LV1 … 陥没
(0) LV2 … 水薬
(0) LV3 … 奔流
●彩魔法
灰
(0) LV1 … フリントストーン
(0) LV2 … プラシーボ
(0) LV3 … ウイッシュ




