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30 巨大モンスター、登場!

 いきなり金網に詰め寄ってきた、『冒険者ギルド』のスカウトの大人たち。

 何事かと思う間もなく、口々にまくしたててくる。



「さっきから、お前っ……! いい加減にしろおっ!」



「グレムリンロワーを一発の蹴りだけで……しかも3匹まとめて倒すガキが、いてたまるかよぉっ!?」



「俺だってたまに苦戦させられるのに、なんでテメェみたいなガキが……!? ありえねぇんだよぉっ!?」



「さっきから本当になんなんだっ!? 俺たちが用意した仕掛けを、全部あっさり突破しやがってぇ……!」



「ガキのクセに力も強くて、頭も良くて、ケンカも強いなんて……! 生意気なんだよぉっ!」



 あまりにも理不尽な言われようだった。


 でも、そんな扱いにも慣れているつもりだった。

 ボクは何をやってもダメだったので、これまでにもいろんな理不尽な扱いを受けてきたから。


 学校の廊下を歩いているときに、邪魔だという理由でゴンとレツから女子トイレに放りこまれ、中にいたギャル軍団に袋叩きにあったりした。


 さんざんモップで殴られ、靴のカカトで踏みつけられ、ボロボロになってクラスに戻ると……黒板一面に『女子トイレ覗きの犯人、変態アンノウン』なんて書かれていたんだ。


 それだけならまだしも、ボクの机は窓の外に捨てられていて、「変態の席はねぇーから!」なんてクラスメイトたちから爆笑されたりした。


 それ以降、少々のことをされても驚かなくなった……変な話だけど、理不尽慣れしてしまったんだ。

 でも今回の扱いは、今までのとだいぶ毛色が違う気がする。


 ボクがダメなヤツだからじゃない……いつもとは逆で、ボクがあまりにもダメじゃなかったから、気に入らなかったんだ……!


 いままでは明らかに下だと思っていたヤツが、自分より明らかに上だとわかったから……嫉妬してるんだ……!


 『出る杭は打たれる』なんて言うけれど……まさかボクがその対象になっちゃうなんて……!


 初めて向けられる感情に、ボクは今までにない戸惑いを感じていた。

 しかし大人たちにとっては、それがますます気に障ったようだ。



「チクショウ……! あのガキ、『まだ全力を出し切ってないのに、なに驚いてんの?』みてぇなツラしやがる……!」



 ボクの何もかもが気に入らないらしい。

 もはや、完全な言いがかりだった。



「くそっ……! このまま進ませたら……『新人冒険者』のランキングどころか、『ベテラン冒険者』の記録まで、ぶっちぎりで塗り替えられちまうぞっ!」



「そうなったら、『冒険者ギルド』のメンツはまるつぶれ……! ……おいっ! かまわねぇ! このガキに、最大級のサービスしてやんなっ!」



 下から怒鳴るように命令され、飛び込み台にいるオジサンは「ええっ!?」となっていた。



「最大級って……いちばん強いモンスターを出すってことですかい!? そりゃ、いくらなんでも、やり過ぎじゃ……!? ベテラン冒険者のパーティにも出したことがないのに……! 少し強いくらいのガキひとりじゃ、死んじまいまさぁ!」



「うるせえっ! こんなガキにナメられてたまるかよっ! 殺しちまってもかまわねぇ……さっさとやれっ!」



「も……もう! 知りませんよっ!」



 オジサンは渋々と、飛び込み台から引っ込んでいく。

 それと入れ替わるかのように……飛び込み台の上を、大きな足音が揺らした。


 ……ズン! ズン! ズズン!


 衝撃のあまり、石の飛び込み台にはヒビが入り……石片がパラパラと降ってくる。

 少しして……ぬうっ、と巨大な影が現れた。


 で……でかい……! と度肝を抜かれるボクに、影が覆い被さってくる。

 あ……あぶないっ! ボクは咄嗟に転がり逃げた。



 ……ズズゥゥゥン……!!



 影が着地した瞬間、地響きの衝撃があたりを揺らす。


 ボクを踏み潰そうと、降ってきた影の正体は……!?



 【ミノタウロスロワー】(戦闘力:250)



 二本足で立って歩く、巨大な牛のモンスターだった……!



「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?!?」



 観客のクラスメイトたちが、一斉に後ずさる。


 金網があり、さらに距離もだいぶ離れているというのに、みんなは解き放たれた猛獣を前にしているかのように驚愕していた。



「みっ……ミノタウロスロワー!?」



「でっ……デカイ……! 2メートル以上あるぞ!」



「戦闘能力……250っ!? いままで見た最高って、レイジングブルだったよな!?」



「ああ、レイジングブルよりも、70も高い……!」



「こっ……こんなの……! 勝てるわけがねぇ! プロの冒険者でも、ひとりじゃ勝てねぇぞっ!?」



「アンノウンなんかじゃ、あっという間にペチャンコにされちゃう!」



「いや……! ペチャンコならいいほうだ! ミノタウロスは残忍な性格らしいから、弱いヤツを見つけたら、すぐには殺さず……手足を引きちぎって、なぶり殺しにするそうだ……!」



「ええっ!? 待って待って待って! それ、超グロくない!?」



「でも、アンノウンがそうなっちゃうんだよね? それはちょっと興味あるかも!」



「手足をもがれた虫みたいになって、地面をモゾモゾ這いつくばるんだよね!? 他のヤツなら見てらんないけど……アンノウンだったら逆に見てみたくね!?」



「でもさ、でもさ、アンノウンをそんな風にしたあと……アイツ、金網を破ってこっちに来るんじゃない!?」



 ボクがやられる様は見たいけど、やられた後は襲いかかってくるんじゃ……と、近づこうか今のうちに逃げようか、迷っている様子のクラスメイトたち。


 大人たちも、気が気でない様子だった。



「おい……ついカッとなって最強モンスターを出しちまったけど……後始末のほうは大丈夫か?」



「そうだな……ミノタウロスロワーともなると、俺たち全員で戦っても勝てるかどうかわからんぞ」



「しょうがねぇ……あのガキが八つ裂きにされそうになったら、一斉に突入するんだ。ミノタウロスロワーはガキの腕をもぐのに夢中になるはずだから、その間に後ろから攻撃しよう」



「あのガキは腕か足、最悪四肢がぜんぶなくなっちまうかもしれねぇが……別にいいよな」



 大人たちのヒソヒソ話を聞きながら、ボクは問題の『ミノタウロスロワー』と対峙していた。



「……ブモォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーンッ!!」



 ボクに覆いかぶさるように両腕を掲げ、大声でいななくミノタウロスロワー。


 まるですぐそばで汽笛が鳴らされたかのような、鼓膜が破れそうなほどの大音響がビリビリと空気を震わせる。


 大人たちは耳を押さえ、よろめくように後ずさった。

 離れた場所にいるクラスメイトたちは、



「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?!?」



 爆風を受けたみたいに、頭を押さえてしゃがみこんでいる。


 ボクも同じように縮こまりたかったけど、それをしたらスキだらけになっちゃうと、懸命にこらえた。


 誰もが爆心地から離れようとする中、何者かが金網に体当たりしてくる。


 ……ガシャーンッ!



「逃げろっ、アンノウン! こんなバカげた競技に、これ以上つきあう必要はないっ!」



 端正な顔が崩れるのもかまわず、金網にめり込ませて叫んでいたのは……マニーだった。



「怖くて動けないのか!? よしっ、待ってろ! いますぐにこの網を壊して……!」



 マニーは腰のレイピアを抜き、金網に突きたてようとしていたが、直前で大人たちに取り押さえられてしまう。



「おい、コラ、やめろっ!」



「お前、なに考えてんだっ!? モンスターが外に出ちまうだろうが!」



 クラスメイトたちも、とんでもないヤツだとばかりにマニーを責め立てていた。



「ちょっとマニー! なんてことすんだよっ!? モンスターが外に出ちまったらどうすんだっ!?」



「やられるのはアンノウンひとりで十分なのに、俺たちまで巻き込もうとするんじゃねぇーよっ!」



「せっかくいい所なのに、邪魔するなんて……空気読めよなっ!」



「金持ちだから言わなかったけど、お前KYなんだよっ!」



「そうだそうだ! ちょっと人気があるからって、いい顔しようとするんじゃねぇーよっ!」



「ひっこめ! 間近でアンノウンがなぶり殺しにあうところを、指でもくわえて見てろっ!」



 クラスメイトから非難されても、マニーはあきらめようとしなかった。

 でも、多勢に無勢。大人たちからよってたかって小突かれたあと、武器を奪われ、地面に取り押さえられていた。



「くそっ……離せ! 離せえっ! 俺はアンノウンと……塔の頂上を目指すって決めたんだ……! ホンモノの太陽を……ホンモノの太陽を見つけるって、決めたんだ……! こんな所で……こんな所で終わるわけにはいかないんだっ……!」



 身体をよじらせながら、声を限りに絶叫するマニー。



「ハァ? 何言ってんだコイツ」



「お前らみたいなガキが塔の頂上なんて、行けるわけねぇだろ!」



「ちょっといい成績だからって、調子乗ってんじゃねぇぞ!」



「塔の頂上を目指すって、アンノウンが? なにそれ、超ウケるんですけど!」



「マニーのヤツ、アンノウンとつるむようになって、頭おかしくなったんじゃねぇーの?」



「だよね、ホンモノの太陽とか、マジ意味わかんないんですけど!」



「頭ん中、御臨終~! キャハハハハハハハ!」



 大人たちとクラスメイトが、まるでひとつになったかのようにマニーを嘲る。


 しかし……ボクはかつてないほどの勇気が、やる気が、沸き起こるのを感じていた。


 ボクを心配し、信じてくれる……。

 たったそれだけのことなのに……それに、たったひとりだけなのに……なぜ、こんなに嬉しく感じるんだろう……。


 よぉしっ……! ボクはやる……やるぞっ……!



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーっ!!」



 ボクは、ミノタウルスロワーの威嚇に負けないほどの……腹の底からの雄叫びを絞り出した。

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は割り振ったポイントはありません。

未使用ポイントが2あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●超感覚

 モーメント

  (1) LV1  … 思考

  (0) LV2  … 記憶

  (0) LV3  … 直感

 パーフェクト

  (0) LV1  … 味覚

  (0) LV2  … 音感

  (0) LV3  … 声帯


●サイキック

 ニュートラル

  (4) LV1  … テレキネシス

  (1) LV2  … クロスレイ

  (1) LV3  … テレパシー

 選択:ライトサイド

  (0) LV1  … テレポート

  (0) LV2  … タイムストップ

  (0) LV3  … プリサイエンス

 選択:ダークサイド

  (0) LV1  … ダークチョーカー

  (0) LV2  … エナジードレイン

  (0) LV3  … マインドコントロール


●降臨術

 妖精降臨

  (1) LV1  … 戦闘妖精

  (1) LV2  … 補助妖精

  (1) LV3  … 生産妖精

 英霊降臨

  (1) LV1  … 戦闘英霊

  (0) LV2  … 補助英霊

  (0) LV3  … 生産英霊


●リバイバー

 カオツルテクト

  (0) LV1  … 蝸

  (0) LV2  … 蛞

  (0) LV3  … 蛭


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (1) LV1  … 盛り付け

  (1) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (1) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (1) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 選択:打撃必殺技

  (0) LV1  … xカウンター

  (0) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴

 選択:投げ必殺技

  (0) LV1  … 当て身投げ

  (0) LV2  … イズナ落とし

  (0) LV3  … 真空投げ


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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