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29 天才アンノウン

 計算式を目にした途端、ボクの頭に降ってわいた新たなるスキル……。


 それは、『超感覚』……!


 第3世界には、人間離れした感覚を持つ人類がいる。

 普通の人間の何倍も鋭い味覚や、絶対的な音感……そして、一度見たものは決して忘れない記憶力など。


 彼らは『オーバーセンサー』と呼ばれ、その能力によって活躍したり、時には苦しめられたりして生きている。


 なぜならば……第3世界における『オーバーセンサー』の存在は、時代によって扱いが大きく変わるからだ。

 人々を救う、希望の救世主として崇拝されるか……人々を破滅に導く、絶望の悪魔として迫害されるか……それは、自分では決められない。


 そんな諸刃の剣のようなスキルだったけど、ボクは迷わなかった。

 考える間もなくスキルツリーを開き、残っていた1ポイントを『思考』に叩き込む。


 すると、ボクの頭に静電気が走った。

 脳の血液がすべて炭酸に変わったかのように、パチパチと弾ける感覚に襲われる。


 丸洗いしたあとの眼球みたいに、見るもの全てがスッキリと、鮮明になっていく。

 新しい世界が開けたような快感に、ゾクゾクと身震いが止まらない。


 視界の隅にあった、黒板の問題……ちょっと意識しただけで、スロットマシーンが揃うように、ガシャン、ガシャン、ガシャーン! と答えが弾き出される。


 問題は黒板の右端からはじまって、いちばん左端が難しい問題だった。

 誰もが右端からスタートするんだけど、ボクは左端へと向かう。



「お、おいおい、何やってんだ、アンノウンのやつ……」



「計算もせずに、左端から答えを書いてってるぞ……」



「まるで、連続したひとつの数字を書いてるみたいだな。なんか勘違いしてんのか?」



「まさかぁ、いくらなんでも計算式が読めないほどバカじゃねぇだろ」



「あ、わかった! 適当に答えを書いてるんじゃない!?」



「それだ! 一問もわかんないから、ヤケになってるんでしょ!」



「ばっ……バカだねぇー! 適当に書いて当たるわけねぇのに!」



「でも、それすら気付かないほどのアホっぷりは、アンノウンらしいな!」



 聞こえてくる下馬評を、ボクは気にもかけずにすべての答えを書き終える。

 チョークを置いて、答えを判定してくれるお兄さんのほうを見ると、



「う……うそだろ……? な、なんでだよ……? こんなこと、あんのかよ……?」



 我が目を疑うように、手元の答えと黒板を交互に何度も見直していた。



「おい! 判定員! なにやってんだよ! さっさと『×』を出せよ!」



 怒鳴りつけられ、お兄さんは叱られた子供のようにスカウトの人たちを見やる。

 言っていいのかな、どうしようかな、言ったらもっと怒られるんじゃ……みたいに逡巡したあと、



「い、いや……それが……全問正解なんです……」



「ええええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?」



 第1世界には、『テレビ』っていう映像を出す箱みたいなのがある。

 「バラエティ番組」っていうジャンルの映像があるんだけど、その観客はいちいち大げさに驚くんだ。


 そんなことを彷彿させるほどに、まわりのみんなは仰天していた。



「いやいやいや! あるわけねぇだろっ! あの問題を暗算したっていうのか!?」



「まっさかぁ! 学校の先生でも無理だよぉ!」



「いや、世界一の天才がいたとしても無理だろ!」



 ボクがポイントを振った、『超感覚』の『思考』……。

 これは、脳がコンピューターになったみたいに高速回転させられるんだ。


 特に計算問題なんかは、『思考』が得意中の得意とするもの。

 ボクの場合も一瞬で答えが出せた。書く時間のほうがずっとずっと長かったくらいに。


 ちなみに『超感覚』のスキルは全部、発動する必要がない。

 スキルを持っているだけで自動的に効果が得られる、『パッシブスキル』というやつだ。


 逆に『錬金術』や『必殺技』などのスキルの多くは、使うための手順を踏まないと効果が発揮されない。

 これは、『アクティブスキル』と呼ばれる。



「……おい! 5問全部答えられた場合の『知力』って、15だよな!?」



「そ……そうだが……こんなに早く答えられることは想定してないぞ!」



「なんだよ!? じゃああのガキの『知力』は、15以上ってことかよ!?」



「あ、ああ……それも、30以上のはず……!」



「な……なんだってぇ!?」



「かつて俺は、『知力』30のヤツがこの問題を解いているのを見たことがあるんだが……その時は、ここまで早くなかった……! 全部解くのに3分以上かかっていた……!」



「な……なんてこった……! 異常なのは『筋力』だけじゃなくて、『知力』もなのかよ……!?」



「いったい……何者なんだ、あのガキ……!?」



 ボクを見つめたまま、寒気を覚えたように震え上がるスカウトたち。


 ボクの『知力』は16なんだけど、『思考』のスキルのおかげでだいぶ底上げされているようだ。


 なんてことを考えながら、ボクは手をひさしのようにしてウサギに注目していた。



「はわわわわわわっ……?」



 チョークに翻弄されながら、カツカツと黒板に答えを刻んでいくウサギ。

 ボクがこの場所から問題を解いて、彼女を操って答えを書かせているんだ。



「こ……こっちも正解ですっ!」



 ウサギの答えを判定するお兄さんが、慌てて報告する。



「なにぃぃぃぃぃぃっ!?!?」



 火に油を注いだように騒ぎ出す大人たち。

 いいかげんボクはじれったくなって、やまびこをするみたいに口に手を当てて呼びかけた。



「あのー! ふたりとも正解したんだから、次の部屋に行ってもいいー!?」



「あっ……ああ! お、おいっ、開けてやれ!」



 スカウトのオジサンが指示を出すと、ガラガラと衝立が動き、次の部屋が現れる。


 ちょうどその時、部屋にゴン、サル、ブレンがなだれこんできた所だった。

 前室の試練が時間切れとなって衝立が開き、ようやくボクらに追いついたようだ。



「ようやく、このブレンが得意とする分野になったようですね! いまからこの天才的な頭脳で、アンノウン! すぐに追い抜いてあげますから、覚悟するんですね!」



 眼鏡をクイックイッと上げながら、ビシイッ! とボクにひとさし指を突きつけるブレン。

 そのときボクは、ウサギとともに部屋を飛び出しているところだった。



「あっ!? ごめん! せっかくやる気になってるところ、悪いんだけど……お先にっ!」



「ええええええっ!? もう解いちゃったの!?」



 ブレンの悲鳴を聞きながら、ボクは次の部屋へと躍り込む。


 周囲は、金網に囲まれた空間……!


 ……ガシャアアアンッ!


 背後から金網が降りてきて、出口も塞がれてしまった。



「よぉーし、来やがったな! ここではモンスターと戦ってもらう!」



 天井のほうから声がする。

 顔をあげると、飛び込み台みたいに張り出している梁のような所から、オジサンが覗き込んでいた。



「モンスターを倒したら、次の部屋に行かせてやるぜ! ほぉら、コイツらだっ! 普段は1匹なんだか、特別にオマケしといてやったぜ!」



「シャアーーーッ!? グルワッシャーアアアアーーーッ!?」



 飛び込み台から突き落とされたグレムリンロワーたちが、次々と金網の中に降ってくる。


 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)



「……烈蹴斬っ!!」



 ボクは着地点で待ち構えて、まとめて首を跳ねてやった。

 それで経験値がいっぱいになり、ボクはレベルアップする。


 けしかけたオジサンは、「えっ」と呆気に取られていた。

 続けざまに、ドドドドドドドッ! と足音が迫ってくる。



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!」



 今までは遠巻きに見ていただけの、スカウトの大人たちが走ってきて……ガシャーン! と金網にぶつかってきたんだ。


 目を血走らせている大人たちは、金網ごしだと猛獣みたいに見える。

 ボクは冷や汗を感じ、思わず後ずさってしまった。

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は『思考』に1ポイントを割り振りました。

未使用ポイントが2あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●超感覚

 モーメント

  (1) LV1  … 思考

  (0) LV2  … 記憶

  (0) LV3  … 直感

 パーフェクト

  (0) LV1  … 味覚

  (0) LV2  … 音感

  (0) LV3  … 声帯


●サイキック

 ニュートラル

  (4) LV1  … テレキネシス

  (1) LV2  … クロスレイ

  (1) LV3  … テレパシー

 選択:ライトサイド

  (0) LV1  … テレポート

  (0) LV2  … タイムストップ

  (0) LV3  … プリサイエンス

 選択:ダークサイド

  (0) LV1  … ダークチョーカー

  (0) LV2  … エナジードレイン

  (0) LV3  … マインドコントロール


●降臨術

 妖精降臨

  (1) LV1  … 戦闘妖精

  (1) LV2  … 補助妖精

  (1) LV3  … 生産妖精

 英霊降臨

  (1) LV1  … 戦闘英霊

  (0) LV2  … 補助英霊

  (0) LV3  … 生産英霊


●リバイバー

 カオツルテクト

  (0) LV1  … 蝸

  (0) LV2  … 蛞

  (0) LV3  … 蛭


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (1) LV1  … 盛り付け

  (1) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (1) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (1) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 選択:打撃必殺技

  (0) LV1  … xカウンター

  (0) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴

 選択:投げ必殺技

  (0) LV1  … 当て身投げ

  (0) LV2  … イズナ落とし

  (0) LV3  … 真空投げ


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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