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24 力だめしの間

 ボクらは用心しつつ、迷路のように入り組んだ通路を進んでいく。

 ここはゴブリンロワーの巣窟のようで、そこかしこにゴブリンロワーたちがいた。


 まず、ボクが先頭に立って通路を進んでいく。

 曲がり角や部屋の入口に来たら、サイキックで先を透視する。


 ゴブリンロワーを見つけたら、



「よしっ、みんな……こっそり作戦だ」



 小声で、足元の戦闘妖精たちに指示を出す。



「「「「「「……はぁーい……」」」」」」



 ボクのくるぶしくらいの背の高さの、6人の小人たちは……ネズミの親子のように一列になって、ちょこまかとで部屋に入っていく。


 彼らは最初は元気に「はぁーいっ!」って返事してたんだけど、それだとバレちゃうから、小さな声でしゃべるようにしてもらったんだ。


 部屋の真ん中には、座り込んでなにやら話しているゴブリンロワーたち。

 だるまさんがころんだみたいに接近していく小人たちに気づく様子もなく、ギャアギャアと熱く論議している。


 ボクは不思議でしょうがなかった。



「遭遇したゴブリンロワーはどれも話をしてたけど、何をあんなに話すことがあるんだろうね……?」



「ヤツらの知能は低いんだ。どうせたいした内容じゃないだろう」『今日のお昼ゴハンのこととか?』



 ウサギのスケッチブックを見たボクは、そういえば今何時くらいだろう……と思う。

 8時の鐘はちょっと前に聞いたから、いまは9時くらいかなぁ……。


 なんてことを考えているうちに、小人たちは配置についた。


 6匹いるゴブリンロワーたちの背後に、それぞれ回り込むと、



「「「「「「ええーいっ!」」」」」」



 手にしたつまようじの木剣で、ゴブリンロワーのお尻を思いっきり突き刺したんだ……!



「「「「「「ギャッ!?」」」」」」



 尻に火がついたように飛び上がるゴブリンロワーたち。



「よしっ、いまだっ!」



 その悲鳴を合図とし、ボクたちは一斉に部屋に躍り込む。

 お尻を押さえて痛がっている敵に一気に接近し、



「……烈蹴斬っ!」



「ハッ! ヤッ! セイッ!」



 ボクの必殺技と、マニーの三連突きで、あっという間に5匹を溶かす。


 討ち漏らした1匹は逃げ出そうとしたので、ボクは素早く錬金術の隆起陣を描き、出口の床を盛り上がらせて塞ぐ。


 謎の壁に行く手を阻まれたゴブリンロワーは、まるで夢でも見ているかのように目を白黒させながら、壁をドンドン叩いている。



「よし、ウサギ、お願いっ!」



「ひぇあぁぁぁ~」



 ボクが指示を出すと、鉄の剣を構えていたウサギが特攻するみたいに走り出す。

 無防備なゴブリンロワーの背後を、ドスリと貫いた。



「ギャアアンッ!?」



 最後のゴブリンロワーを霧散させたウサギは、勢いあまって壁に衝突、どすんと尻もちをついていた。


 ちょうど近くにいたマニーは、やれやれとウサギを助け起こす。



「レディ、キミは壁にぶつからないと止まれないのかい? おや……オデコをケガしてるじゃないか……よく見せて」



 マニーは、ウサギの鼻先まで伸びた前髪をかき分け、額をチェックしていた。

 そして何を思ったのか……いきなり額にチュッとキスしたんだ。



「これでよし、すぐに良くなるよ」



 そしてパチン、と星がほとばしるようなウインクをする。


 ボクは自分がされたわけでもないのに、カッと顔が熱くなるのを感じていた。

 マニーみたいな綺麗な女の子のキスは、見てるこっちまでときめいちゃうんだ。


 でもウサギは全身の毛が逆立つくらいにビックリしていて、



「ひぃやぁぁぁ~」



 いじめられた子供のように逃げ出し、ボクの背後に隠れてしまった。



「やれやれ、相変わらずレディは恥ずかしがり屋さんだな」



 マニーは悪びれもせず、肩をすくめていた。


 ……ウサギはどうやらボク以外の男の子が怖いらしい。

 たとえば市場で店のオジサンとかに声をかけられても、子供みたいにボクの背中に隠れちゃうんだ。


 マニーにはだいぶ慣れたみたいなんだけど、いきなりのキスにはさすがにパニックになる。

 まぁ、それは無理もないか……。


 でもマニーは本当は女の子なんだよね。

 それに気づいてくれれば、キスされても取り乱すことはなくなると思うんだけどなぁ……。


 といっても、ボクもあんまりウサギのことは言えない。

 だってこのゴブリンロワーだらけの迷路で、ボクはマニーに何度もドキッとさせられていたからだ。


 ここでは大きな声を出せないから、マニーは囁くために顔を近づけてくるんだけど……そのたびに金髪が揺れて、ふんわりといい匂いが漂ってくるんだ。


 同じ宿のシャンプーを使ってるはずなのに、なんでこんなにいい匂いがするんだろう。

 ちゃんとリンスとかも使ってるんだろうか。


 思えば女の子からこんなに顔を近づけられたことなんて一度もなかったから、匂いを感じるたびにドギマギしちゃうんだよね。


 クラスメイトの女の子とは目を合わせるだけで、「キモい」って罵られ続けてきたからなおさらだ。


 その点おなじ女の子でも、ウサギはぜんぜん色気がないから安心……。

 そう思いながらウサギのほうを見ると、ボクをじっと見上げていた。


 彼女はなにかしてほしい時は、じーっと見つめてくるクセがある。

 前髪で目が隠れてるから、ホントに見つめてるかはわからないけど……なんとなく視線を感じるんだ。


 きっとオデコに薬を塗ってほしいんだろうとボクは察して、リュックのポケットから傷薬を取り出す。


 マニーとウサギが聖堂主様から餞別としてもらっていた傷薬を、念のために分けてもらってたんだ。


 ボクは、目薬をさすときみたいに上を向いたまま動かない、ウサギの前髪をかき分ける。


 すると、不意打ち気味に、


 ……ふわぁ……。


 お花みたいな香りが、漂ってきたんだ……!


 いきなり心臓を掴まれたみたいに、ドキッ! となっているところに、さらなる追い打ちがかかる。


 前髪を分けたウサギって、こんなにかわいかったんだ……!


 キュッと閉じた瞼は桜の花びらみたいで、まつ毛は細くて長い。

 恥ずかしがってるのか、頬がさくらんぼみたいに赤く染まっている。


 まるで、花のつぼみから生まれたばかりの、お花の妖精みたい……!

 しかも背伸びをしながら目を閉じているから、まるでキスをせがまれてるみたいなんだ……!


 い……いやいや、なにを考えてるんだボクは。

 信頼してくれている女の子に、(よこしま)な気持ちを抱くなんて……!


 ボクは顔をブルブル振って雑念を振り払うと、軟膏みたいな傷薬を指にとり、ウサギのオデコに塗ってあげた。



「はい、塗り終わったよ、ウサギ」



『ありがとう……』



 思い通りにしてあげたはずなのに、ウサギはなぜか急に元気をなくす。

 肩を落とし、トボトボとボクの元から離れていった。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 それからしばらく迷路を進み、ボクらは広くて賑やかな部屋に出た。

 人だかりの向こうに物見台があって、その上にいるオジサンから手招きされる。



「おっ! またひと組、『ゴブリンロワーの巣窟』から新入りが出てきたぞ! 今日は千客万来だな! さぁ、こっちこっち!」



 どうやらボクらを呼んでいるようだったので、近寄って人だかりの中に加わると、台の上であぐらをかいていたオジサンはパンとヒザを打った。



「よし! お坊ちゃんお嬢ちゃんらで、この組は締め切りだ! 『ゴブリンロワーの巣窟』を自力で抜けられたなら、全員見どころがありそうだな! ここは冒険者ギルドが主催する『力だめしの間』だ!」



 ここが何なのかわからないまま、オジサンは水が流れるような勢いで説明をはじめる。


 要約すると、ここでは冒険者としての力だめしができるらしい。

 障害物競争のようにいくつかの試練があり、それをクリアしながら進んでいき、ゴールまでのタイムを競う。


 ゴールまでのタイムが早いと冒険者としての適性が高いことになり、結果はランキング形式で発表されるらしい。


 ランキングには『新人冒険者』用のやつと、『ベテラン冒険者』用のやつがある。


 ボクらの場合は『新人冒険者』のランキングになるんだけど……その10位までに入れば賞金も出るそうだ。



「参加はタダだから、やっていかなきゃ損だよっ! しかも、ショートカットもできるんだ! ここだけの話、ゴール地点の先はボスフロアなんだ! ボス前に、自分の実力がどんなもんか知ることができるし……一石何鳥なんだよ!? こりゃ、やらねぇわけにはいかねぇよなぁ!」



 一応、『力だめしの間』を通らずにボスまで進めるルートもあるらしいんだけど……そっちは罠だらけのうえにモンスターも宝箱もないので、危険なわりに旨味がぜんぜんないらしい。



「フン、どうせ『力だめしの間』を通らせるために、冒険者ギルドのヤツらが罠を仕掛けたんだろう」



 ボクの隣にいたマニーが、いまいましそうにつぶやく。



「どうして冒険者ギルドの人たちは、そうまでして『力だめしの間』を通らせたいの?」



「見どころのあるヤツがいたら、冒険者ギルドに勧誘するためさ。ヤツらは塔の利権をひとり占めしたいんだ。そのために、有能なヤツは支配下に置いておきたいんだろう」



「……ふぅーん」



 ボクは頷いたけど、なんだかよくわからなかった。



「ヤツらの思惑に乗るのはシャクだが……仕方あるまい、『力だめしの間』に挑戦するとしようか、アンノウン、ウサギ」



「うん、いいよ」『大丈夫かなぁ……』



 ボクは特に異論なかったけど、ウサギはなんだか気が進まなそうだった。

 同じ参加者であるクラスメイトたちを、不安そうに見回している。



「おい、アンノウンたちも参加するみたいだぞ」



「マジ!? 同じ組にならねぇかなぁ、そしたらドベにならなくてすむのに」



「マニーと一緒の組だと引き立て役になっちまうから嫌だけど、アンノウンなら歓迎だよな!」



「力はウチら女以下だし、足は遅いし、なんたってバカだし……ランキング最下位を更新しちゃうんじゃない?」



「それ、ありえるー! クラスでもダントツ最下位だったしね!」



「アンノウンのステータスってキモくて読めないけど、きっとぜんぶ平均以下……『5』とかだと思わない?」



「それ、10歳のウチの弟より低いじゃん!」



「でもさぁ、アイツ何にもできねーから、そんくらいだよ! しかも『魅力』は『1』とかだったりして!」



「あはははははははは! 超ウケるー! マジ終わってんじゃん!」



 ボクの失態を想像しているのか、こっちを見ながらゲラゲラと笑っているクラスメイトたち。


 でもボクは、ちょうどいいと思っていた。


 ボクのステータスは、昨日とは見違えるほどあがっているんだ……。

 それを『力だめしの間』で確かめてやる……!

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は割り振ったポイントはありません。

未使用ポイントが4あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●降臨術

 妖精降臨

  (1) LV1  … 戦闘妖精

  (1) LV2  … 補助妖精

  (1) LV3  … 生産妖精

 英霊降臨

  (1) LV1  … 戦闘英霊

  (0) LV2  … 補助英霊

  (0) LV3  … 生産英霊


●リバイバー

 カオツルテクト

  (0) LV1  … 蝸

  (0) LV2  … 蛞

  (0) LV3  … 蛭


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (1) LV1  … 盛り付け

  (1) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●サイキック

 ニュートラル

  (1) LV1  … テレキネシス

  (1) LV2  … クロスレイ

  (1) LV3  … テレパシー

 選択:ライトサイド

  (0) LV1  … テレポート

  (0) LV2  … タイムストップ

  (0) LV3  … プリサイエンス

 選択:ダークサイド

  (0) LV1  … ダークチョーカー

  (0) LV2  … エナジードレイン

  (0) LV3  … マインドコントロール


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (1) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (1) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 選択:打撃必殺技

  (0) LV1  … xカウンター

  (0) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴

 選択:投げ必殺技

  (0) LV1  … 当て身投げ

  (0) LV2  … イズナ落とし

  (0) LV3  … 真空投げ


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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