23 たたかう妖精、召喚!
エレベーターは激しく揺れながら、3階に到着。
ガラガラと開いた扉から踏み出すと、代わり映えのしない大広間に出た。
1階に較べて人影はまばらなんだけど、ひときわ目立つ集団がいた。
クラスメイトたちだ。おそらくここで待ち合わせをしているんだろう。
ボクらを見るなり、なにやらヒソヒソ話をはじめるクラスメイトたち。
その姿を横目に、モンスターの出るエリアへと移動する。
「彼らはたぶん、ゴンとレツが来るのを待ってるんだろうな」
クラスメイトたちを一瞥すらせず、マニーは言った。
「そうなの?」
「ああ、クラスの中では一番強いからな。俺たちのグループは、初日は流れで一緒だったが、二日目からは別行動をするつもりだった。まさかグループと別れ、アンノウンと一緒に行動することになるとは夢にも思わなかったがな」
「……ふぅーん」
なんてことを話しているうちに、警告エリアへと入る。
ボクは昨日と同じ感覚で、たいした警戒もせず……最初の部屋に踏み込んでいったんだけど、
「ギャッ!? ギャアアアアアーーーッ!!」
車座になっているゴブリンロワーの群れに、いきなり遭遇しちゃったんだ……!
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
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【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
い……いきなりこんなに!?
何匹いるか数えきれないくらい、いっぱいいる……!?
ボクはちょっと不意を突かれてしまったんだけど、マニーは待ってましたとばかりに真っ先に飛び出しているところだった。
「このレイピアの切れ味……さっそく試させてもらおう!」
長い金髪を華麗になびかせるマニーは、馬に乗ってもいないのに白馬の王子様に見えた。
座っていたゴブリンロワーたちが、立ち上がって戦闘態勢を整えるより早く、
「ヤッ! ハッ! セイッ!」
「ギャッ!? フギャ!? ギャンッ!?」
得意の三連突きで、あっというまに三匹を霧に変えていた。
よぉし、ボクも負けちゃいられない……!
少し遅れて群れに飛び込んでいったボクは、その勢いのまま後ろ回し蹴りの体勢をとった。
「烈蹴斬っ!」
……シュパアンッ!
空を切り裂く音とともに、扇状の蹴りを放つ。
「ギャアアアアアーーーッ!?!?」
前方にいた4匹のゴブリンロワーの喉笛をかっ切り、まとめて黒い霧に変えてやった。
よし、これでだいぶ数が減ったはず……! と思ったんだけど、
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
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【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
【ゴブリンロワー】(戦闘力:30)
あ……あれ?
さっきより増えているような……? それも、かなり……!
「アンノウン! 新手がどんどん押し寄せて来ているぞ!」
マニーの緊張感あふれる声が届く。
白魚のようなしなやかな指で、部屋の先を示していた。
その指先を目で追うと……一本道の廊下の向こうから、ゴブリンロワーたちが列をなして迫ってきているところだった。
「ひぃやぁぁぁ~」
続けざまに、ウサギの悲鳴が届く。
息つくヒマもなく目をやると、部屋には別の廊下があって、そこからもどんどんゴブリンロワーがなだれこんで来ていた。
ボクは、今さらながらに気づいてしまう。
そ……そうか……!
いままでボクは、クラスメイトたちの後を追って塔を探索してたんだった……!
クラスメイトたちがあらかたやっつけた後だったから、モンスターとはあまり遭遇しなかったけど……今回はボクらのほうが先行しているから、こんなにいっぱいいるんだ……!
「烈蹴斬! 烈蹴斬! 烈蹴ぅぅぅっ……!?」
「ヤッ! エイッ! コノッ! うぐぅぅぅっ……!?」
「むぎゅうぅぅぅぅん……」
ボクらが捌く速度よりも、新手が来る量のほうが多くて……部屋はスシ詰め状態になってしまった。
ついには、仲間の上にのしかかってまで部屋に入ってこようとするゴブリンロワーたち。
「み……みんな! いったん安全地帯まで逃げよう! 逃げて、形勢を立て直すんだっ……!」
「に、逃げようにも……無理だっ……! 行く手もゴブリンロワーで塞がれている……!」
『お……押しつぶされちゃうよぉ……!』
人いきれ……いや、ゴブリンいきれにすっかり目を回しているマニーとウサギ。
こ……こうなったら……ボクのスキルで、なんとかするしかないっ……!
そ、そうだ……! あのスキルを使えば……!
で、でも、ダメだ……!
ぎゅうぎゅう詰めすぎて、陣が描けない……!
ならば……!
空間を作るまでだっ……!
ボクは背伸びもできない狭い中で無理矢理、練気のポーズを取った。
そして発声とともに、ショートアッパーを繰り出す。
「りっ……龍っ!」
……ドガアッ!
「ギャアッ!?」
積み上がっていたゴブリンロワーたちが、ピストンみたいに突き上げられる。
「昇っ……!」
握りこぶしを固めたまま、ダンベル上げのように……まとわりつくゴブリンロワーごと、腕を持ち上げる。
……グググググググッ……!
「ギギギギギギッ!?」
軋むような悲鳴とともに、持ち上がっていくゴブリンロワーたち。
そのまま一気に、腕を振り抜くっ……!
「撃ぃぃぃぃーーーっ!!」
……ドォォォォォーーーーーンッ!!
「ギャアアアアアアアアアアーーーーーッ!?!?」
地獄の餓鬼のように、うず高く積まれていたゴブリンロワーたちが……地雷を踏んだかのように吹き飛ばされてく。
群れを蹴散らしたボクは拳を掲げ、不死鳥のように天高く舞いあがっていた。
ピラミッドのようになっていたゴブリンロワーたちは崩れさり、雪崩となって廊下のゴブリンロワーたちを押し戻す。
これで、ボクはようやくノーマークになった……!
しめた……! とすかさず空中で、錬金術の陣を描く。
『地錬』の錬金術……『隆起』の陣を……!
できあがった陣を、部屋と通路の境目に向って投げかける。
ゴブリンロワーに覆われた床に、陣が吸い込まれた瞬間、
……ゴゴゴゴゴゴゴ……!
地震のような揺れとともに、床の石がモリモリと盛り上がっていった。
「ギャンッ!?」「ギャッ!?」「ギャアアッ!?」
盛り上がった石と天井の間に挟まれたゴブリンロワーは、バン! バン! バンッ! と爆竹のような音とともに弾け散っていく。
『錬金術』、『地錬』のスキルのひとつ、『隆起』……!
これは地面や床などを、盛り上がらせることができるんだ……!
ボクは続けざまに隆起陣を投げつけ、部屋にある通路を石壁で次々と塞いだ。
「よしっ! これで新手は入ってこられない……! みんな、やっつけて!」
ゴブリンロワーの山の頂上にいるボクが、麓に向って呼びかけると……少しして、ズボッとふたつの顔が出てきた。
まるでゴブリンロワーの海に溺れているような、ウサギとマニーだ。
「ぷはあっ! ……くっ! えいっ! やっ! こんのぉっ!」
「ふわあぁ、ひいやぁあ」
ふたりはもがくようにメチャクチャに武器を振り回し、ゴブリンロワーたちをかきまわしていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
小一時間後。
部屋をキレイにし終える頃には、ボクは1レベルアップ、ウサギとマニーは2レベルアップしていた。
床には、数え切れないほどのドロップアイテムが転がっている。
でも、それを拾うどころじゃなくて……マニーとウサギは女の子座りでへたりこんでいた。
「はぁ、はぁ、はぁ……死ぬかと思った……。モンスターに窒息死させられかけるなど、前代未聞だぞ……」
『ああ、苦しかったぁ……妖精さんだったらよかったのに……』
そう書いている、ウサギのスケッチブックには……妖精たちに囲まれ、笑顔になっているみんなのイラストがついていた。
うーん、この部屋をいっぱいにするくらいの妖精を降臨させるには、スキルポイントがいくつ必要なんだろう……。
なんてどうでもいいことを考えていると、
「おい、アンノウン。あの壁はいつまで持つんだ?」
ボクが隆起させた壁を親指で示しながら、マニーが尋ねてきた。
「うーん、よくわかんないけど……ゴブリンロワーに壊されることはないと思う」
部屋の四方の壁には出入り口があったんだけど、そのうち大広間につながる所以外はぜんぶ塞いでしまった。
どの壁の向こうにもゴブリンロワーがいて、ギャアギャアと騒ぎながら壁を叩いている。
それからボクらは、部屋中に散らばったドロップアイテムを拾い集めた。
ゴブリンロワーの胃石だけで、半分ほどリュックが埋まっちゃったけど……引き返さずに先に進もうということになった。
どの通路を進もうか、悩んだんだけど……ボクのサイキックで壁の向こうを透視して、ゴブリンロワーがいちばん少ないところを選んだ。
いちばん少ない通路は数えられるくらいしかゴブリンロワーがいなかったので、壁を倒してまとめてぺちゃんこにしてやった。
「よし……じゃあ、先に進むとするか。この階のゴブリンロワーは仲間を呼ぶみたいだから、見つけたら全員で先制攻撃だ。仲間を呼ばれる前に一気にやっつけることにしよう」
「あ……! そういうことなら、ちょっと待って!」
ボクは、用心深く通路を覗き込んでいるマニーの隣でしゃがみこんで、魔法陣をしたためる。
「なんだ、またあの妖精とやらを呼び出すつもりか?」
マニーに頷き返したボクは、手をかざしながら詠唱した。
「我が剣、一や二にあらざる。汝らをもって、新たなる依代となす……いでよ! 新たなる剣たちよ……!」
ポポポポポポンッ……!
陣からポップコーンのように飛び出したのは、6人の妖精たち。
カラフルな三角帽に園児服。
手にはつまようじみたいな木剣と、丸いボタンみたいな木盾を装備している。
今朝、憩いの広場で降臨させたのは『生産妖精』だけど、彼らは違う……。
ともに戦ってくれる仲間『戦闘妖精』なんだ……!
マニーとウサギからひとしきり愛でられたあと、
「ごしゅじんさまー! たたかうー!」
とボクの後を、隊列を組んでついてくる。
まるでカルガモのお母さんになったような気分だ。
ボクらパーティは3人から、いっきに9人に増えた。
ちびっこたちの戦闘能力は未知数だけど、人数だけなら、一気に3倍……!
これで、大勢のゴブリンロワーが来ても怖くないよね……? とボクは思った。
■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)
□■□■スキルツリー■□■□
今回は割り振ったポイントはありません。
未使用ポイントが4あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●降臨術
妖精降臨
(1) LV1 … 戦闘妖精
(1) LV2 … 補助妖精
(1) LV3 … 生産妖精
英霊降臨
(1) LV1 … 戦闘英霊
(0) LV2 … 補助英霊
(0) LV3 … 生産英霊
●リバイバー
カオツルテクト
(0) LV1 … 蝸
(0) LV2 … 蛞
(0) LV3 … 蛭
●料理
見習い
(1) LV1 … 下ごしらえ
(1) LV2 … 焼く・炒める
(1) LV3 … 茹でる・煮る
コック
(1) LV1 … 盛り付け
(1) LV2 … 揚げる・漬ける
(0) LV3 … 燻す・焙煎
●サイキック
ニュートラル
(1) LV1 … テレキネシス
(1) LV2 … クロスレイ
(1) LV3 … テレパシー
選択:ライトサイド
(0) LV1 … テレポート
(0) LV2 … タイムストップ
(0) LV3 … プリサイエンス
選択:ダークサイド
(0) LV1 … ダークチョーカー
(0) LV2 … エナジードレイン
(0) LV3 … マインドコントロール
●錬金術
風錬
(1) LV1 … 抽出
(0) LV2 … 風薬
(0) LV3 … 旋風
火錬
(1) LV1 … 変形
(0) LV2 … 火薬
(0) LV3 … 噴火
地錬
(1) LV1 … 隆起
(0) LV2 … 地薬
(0) LV3 … 地震
水錬
(1) LV1 … 陥没
(0) LV2 … 水薬
(0) LV3 … 奔流
●潜在能力
必殺技
(1) LV1 … 波動弾
(1) LV2 … 烈蹴斬
(1) LV3 … 龍昇撃
選択:打撃必殺技
(0) LV1 … xカウンター
(0) LV2 … 爆裂拳
(0) LV3 … 点穴
選択:投げ必殺技
(0) LV1 … 当て身投げ
(0) LV2 … イズナ落とし
(0) LV3 … 真空投げ
●彩魔法
灰
(0) LV1 … フリントストーン
(0) LV2 … プラシーボ
(0) LV3 … ウイッシュ




