22 美麗装備、作ります!
おてつだい妖精たちを抱きしめ、いつになくはしゃいでいるウサギ。
何もかもが可愛らしくて、ボクはつい和んでしまった。
「いいなぁ……」
ふと、つぶやきが聞こえた。
マニーだ。ボクの隣にいたマニーが、羨ましそうにウサギを見つめていたんだ。
そうだ……まだやることが残ってたんだ。
ボクは思い出したところで、再び妖精たちを呼び集める。
「よぉーし、みんな! 次は鎧を打ち直すよ!」
「「「「「「「「はぁーいっ!」」」」」」」」
妖精たちは弾けるようにウサギの身体から飛び降りると、ボクの足元に再び集まってきた。
ウサギが以前着ていた鎧を彼らの目の前に置くと、わらわらとよじ登りはじめる。
ボクは錬金術の変形陣を描き、鎧めがけて投げかけた。
すると……鉄でできた鎧は、飴細工のようにぐにゃりと歪みだす。
「よしっ、今だっ! カッコよく形を整えて!」
「「「「「「「「はぁーいっ!」」」」」」」」
鎧にまとわりついていた妖精たちは、手にした木槌でトンカントンカンしてくれた。
小さな子供が打楽器で遊んでいるようにしか見えないけど、鎧の形はしっかりと整えられていく。
少しして、賑やかな打ち直しは終わった。
「……うん、できたっ!」
できたての鎧を持ち上げると、妖精たちもひっつき虫みたいにいっしょについてくる。
【上質鉄の鎧】
戦闘力+17
魅力+4
この鎧はウサギのスケッチを元に、ボクの錬金術で作ったんだけど……再現度はイマイチだった。
でも、打ち直された今は元のイメージにかなり近くなっている。
磨かれてツヤのある表面に、薔薇の花をイメージした胸の細工。
翼を広げているような、勇壮さと美麗さを兼ね備えている肩当てのデザイン。
「おお……!」「うわぁ……!」
これにはマニーもウサギも口を鯉みたいに真ん丸にして、驚嘆の声をあげていた。
ふたりともまるで、ショーウインドウのドレスに見とれているかのようにウットリしている。
「はい、マニー! これはキミの鎧だよ!」
妖精がくっついたまま渡してあげると、マニーは目をぱちくりさせていた。
「なっ……なに? 俺が着ていいのか? これは元々、レディの鎧だったのでは……?」
珍しくアタフタしているマニー。
戸惑いながらボクとウサギを交互に見ていたのだが、ウサギは祝福するように手をぱちぱちさせていた。
ボクもマネして手をぱちぱちさせると、妖精たちも一緒になってぱちぱちする。
まるでお誕生日みたいになって、マニーは照れていた。
「みな、そこまでするとは……。そうか……それほどまでにこの鎧を、俺に着てほしいというのか……ならば、無下に断るのも無粋というものだな……!」
言葉とは裏腹に、ウキウキと鎧に袖を通しはじめるマニー。
鎧はちょっと過美なような気もしたんだけど、ルックスもスタイルもいい彼女にはぜんぜん違和感がなかった。
まるであつらえたように、サイズもピッタリ……!
「ど、どうだ? 似合うか?」
マニーは両手を広げ、クルクル回ってみせる。
「うん、とってもキレイだよ!」
ボクは即答する。本当にそう思ったからだ。
ウサギは『王子さまみたい!』とスケッチブックを向けていた。
たしかにウサギの書くとおり、男装の麗人となった王子様みたいだ。
「「「「「「「「にあうーにあうー!」」」」」」」」
鎧にぶらさがった妖精たちも大合唱。
とうとうマニーは瞳を潤ませ、頬を桜色に染めながら妖精たちを抱き寄せた。
「ううっ……! こんなにうれしい贈り物は、はじめてだ……! みんな、ありがとう……!」
それはもう、王子様じゃなくて……花束を抱えているお姫様みたいだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ボクはその後、鉄を抽出してマニー用の武器である『レイピア』を作った。
【鉄のレイピア】(戦闘力+10)
「レイピア? なんだこれは?」
さっそく細身の剣を手にしたマニーは、先っちょを指でツンツンしている。
「先が尖ってるでしょ? それは刺突用の剣なんだ」
「斬るのではなく、突く剣ということか」
さすがマニーは察しがいい。
鉄がめずらしいこの世界では、刺突する武器はほとんどない。
木や石では突く武器は作りにくいんだ。
多分こっちの世界では、『レイピア』は存在すらしていないと思うんだけど……他の世界ではわりとポピュラーな剣なんだ。
主に、身分が高い人の護身用の武器で、決闘とかにも使われたりする。
身分はちょっと合わなくなっちゃったけど、見た目はスマートなマニーにピッタリだと思って作ってみたんだ。
それからボクは、レイピアの使い方をマニーに教えてあげる。
マニーは察しがいいだけでなく、物覚えもよかった。
たった一度教えてあげただけで、サマになる構えとともに、強力な突きを繰り出せるようになったんだ……!
斜に構え、木と対峙するマニー。
風が吹くのにあわせ、瞬時に反応。
「ハッ! ヤッ! フッ!」
勇ましいかけ声とともに、素早い三連突きを放ち……木から落ちた葉っぱを、バーベキューみたいに串刺しにしていた。
うーん、すごい……!
これならすぐにでも実戦で活躍できそうだ……!
ボクとウサギと妖精たちは、マニーが曲芸のような剣さばきを見せてくれるたび、ぱちぱちと拍手をした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ボクは最後に、半分あまった革を使って自分用のリュックサックを作った。
お店で買うと何千¥もするけど、自分で作れば革代だけでいい。
それにこれで、ボクも荷物を持ち歩ける……!
今日はいっぱい塔でモンスターをやっつけて、いっぱい戦利品を持って帰るぞ……!
これで、冒険の準備は完了。
新しい装備に身を包んだボクらは『憩いの広場』を離れ、意気揚々と塔に向かった。
塔に入り、一階にある大広間へと向かう。
併設されたエレベーターホールには、多くの冒険者たちが順番待ちの列を作っていた。
ちらほらとクラスメイトたちの姿も見える。
ボクらもエレベーターに乗るべく、最後尾に並ぶことにした。
列は長いけど、エレベーターは何十機もあってひっきりなしに昇降しているので、ボクらの番もすぐだった。
エレベーターは10人まで乗れるんだけど、パーティ単位で乗らなくちゃいけない決まりになっている。
ひとりで塔に来た冒険者は、ガランとしたエレベーターにひとりで乗って、ひとりであがっていくんだ。
そんな光景を何度か目にしていたボクは、不思議でたまらなかった。
空いてるんだから、他のパーティと一緒に乗ればいいのに……と思ってたんだけど、なぜそうしないかは実際に乗ってみてわかった。
エレベーターの室内に入ったらまず、中にある郵便受けみたいなのに、乗客全員分の身分証を入れる必要があるんだ。
全員分の身分証を参照し、最低の到達階までのボタンしか押せない仕組みになっている。
たとえばボクの身分証だと、到達階が3階になってるんだけど……他の乗客の到達階が4階以上であったとしても、エレベーターでは3階までしか行けないんだ。
エレベーターで4階以上に行きたければ、他の乗客はボクと別々に乗る必要がある。
なぜこんな仕組みになっているかというと……多分、踏破していない階に行かれてしまうのを防止してるんだと思う。
この『太陽の塔』ではいちどは階段を使ってあがらないと、その階には行けないというルールがあるんだ。
だからひとつのエレベーターに乗れるのは、目的階が同じであるひとつのパーティだけ……他のパーティと一緒に乗ると、トラブルの元になるから禁止してるんだろう。
ボクとウサギとマニーは昨日、3階まで到達しているのでエレベーターのボタンは2階と3階を押すことができる。
ここでボクは初めて知ったんだけど、階のボタンは10階まであった。
いちばん上は、10階か……!
てっぺんまで行くのは、そんなに大変じゃないのかもしれない……!
目標が思ったより近くにあったので、ボクはますますやる気が出てくる。
現実はそう甘くはなかったんだけど、この時のボクは単純だった。
「よぉし、いくぞっ……!」
ボクは颯爽と腕を振り上げ、『3階』のボタンめがけて指を振り下ろした。
■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)
□■□■スキルツリー■□■□
今回は割り振ったポイントはありません。
未使用ポイントが2あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●降臨術
妖精降臨
(1) LV1 … 戦闘妖精
(1) LV2 … 補助妖精
(1) LV3 … 生産妖精
英霊降臨
(1) LV1 … 戦闘英霊
(0) LV2 … 補助英霊
(0) LV3 … 生産英霊
●リバイバー
カオツルテクト
(0) LV1 … 蝸
(0) LV2 … 蛞
(0) LV3 … 蛭
●料理
見習い
(1) LV1 … 下ごしらえ
(1) LV2 … 焼く・炒める
(1) LV3 … 茹でる・煮る
コック
(1) LV1 … 盛り付け
(1) LV2 … 揚げる・漬ける
(0) LV3 … 燻す・焙煎
●サイキック
ニュートラル
(1) LV1 … テレキネシス
(1) LV2 … クロスレイ
(1) LV3 … テレパシー
選択:ライトサイド
(0) LV1 … テレポート
(0) LV2 … タイムストップ
(0) LV3 … プリサイエンス
選択:ダークサイド
(0) LV1 … ダークチョーカー
(0) LV2 … エナジードレイン
(0) LV3 … マインドコントロール
●錬金術
風錬
(1) LV1 … 抽出
(0) LV2 … 風薬
(0) LV3 … 旋風
火錬
(1) LV1 … 変形
(0) LV2 … 火薬
(0) LV3 … 噴火
地錬
(1) LV1 … 隆起
(0) LV2 … 地薬
(0) LV3 … 地震
水錬
(1) LV1 … 陥没
(0) LV2 … 水薬
(0) LV3 … 奔流
●潜在能力
必殺技
(1) LV1 … 波動弾
(1) LV2 … 烈蹴斬
(1) LV3 … 龍昇撃
選択:打撃必殺技
(0) LV1 … xカウンター
(0) LV2 … 爆裂拳
(0) LV3 … 点穴
選択:投げ必殺技
(0) LV1 … 当て身投げ
(0) LV2 … イズナ落とし
(0) LV3 … 真空投げ
●彩魔法
灰
(0) LV1 … フリントストーン
(0) LV2 … プラシーボ
(0) LV3 … ウイッシュ




