21 おてつだい妖精、召喚!
朝の騒動を終えたボクらは、出発の準備を整えたあと、一階の酒場で朝食をとった。
宿の泊り客用に、朝食バイキングのサービスがあったんだ。
バイキングといってもそんなにいいモノじゃなくて、メニューは水とパンとマッシュポテトと野菜サラダしかなかった。
カチカチのパンと、パサパサのマッシュポテト、固いばかりのサラダ……。
孤児院でも毎朝食べていたので、普通に食べられるはずなんだけど……なんだか急にマズく感じるようになってしまった。
なんでだろう……? と頭を捻っていると、対面に座っていたウサギとマニーも食が進んでいないようだった。
ウサギは肩を落としたまま、小さくちぎったパンをぼそぼそと口に運んでいる。
マニーに至っては片肘ついて、フォークでポテトをこねくり回すばかり。
ふたりとも、まるで病院食を前にしているかのようだ。
でも、マズい理由がわかったぞ……昨晩はジューシーなハンバーガーに、ほくほくのフライドポテト、甘くてコクのあるミルクセーキだったから、それに比べたら味気ないんだ……。
ボクは干からびたようなパンを改めてかじって、味を確かめてみた。
「そっか……! 昨晩の丸パンは、ハンバーグを挟んでいたから気づかなかったけど……こっちの世界のパンは、酵母を使ってないのか……!」
「なんだそのコーボって?」
つまんだパンをつまらなそうに口に運びながら、マニーが尋ねてくる。
「パンをおいしくする菌だよ。入っているとふっくらしておいしくなるんだ」
「パンがふっくらするだと? バカな。パンというのはこういう枯れ木みたいな食べ物だろう」
マニーは八つ当たりするように、パンをバリンとかじった。
「うーん、果物か牛乳があれば酵母が作れるんだけど……まぁ手に入ったら、ホンモノのパンを作ってあげるよ」
「そうか……じゃあ今日は塔で、レイジングブル狩りだな」
なんとなくではあるけど、ボクらの今日の予定が決まった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
朝食を終えたあと、ボクらは宿をチェックアウトする。
市場で木炭と革を買ってから、『憩いの広場』へと向かった。
「なんだアンノウン。塔に行くんじゃないのか?」
「うん、行くんだけど……その前に装備を整えておこうと思って」
ボクはそう言いながらしゃがみこみ、木炭で石畳の床に、陣をしたためる。
まず『降臨術』を使いたかったんだけど、そのためには降臨陣を描かなくちゃいけない。
『錬金術』の陣は指で空中に描けばいいだけなんだけど、『降臨術』はちゃんと目に見える形で陣を描かなくちゃいけないんだ。
降臨の魔法陣ができあがったあと、ボクは手をかざして詠唱する。
えーっと、たしか、ボクが考えた降臨の呪文は……。
「我が指、十にあらざる。汝らをもって、新たなる依代となす……いでよ! 新たなる指たちよ……!」
念じたあと、かざした手をパッ! と掲げると、
ポポポポポポポポンッ……!
ポップコーンがはじけるように、陣の中から小人が飛び出したんだ……!
で……出た……っ!
『妖精降臨』で呼び出された、小人の妖精たち……!
降臨の呪文まで唱えて、出なかったら恥ずかしかったけど……ホントに出ちゃった!
「うわあっ!?」
驚いて尻もちをつくマニーと、わぁ……! と歓喜の声を漏らすウサギ。
風に煽られたタンポポの綿毛みたいに、高く高く浮く小人たち。
ふわふわと揺れながら降ってきて、マニーやウサギの頭や肩に着地する。
ボクは手の平で受け止めてあげた。
カラフルな三角帽に、園児服みたいなのを着た、手のひらサイズの小人妖精。
米粒みたいな木槌を振りあげながら、
「ごしゅじんさまー! てつだうー!」
と大はりきりだ。
「かっ……かわぃぃぃぃんっ!」
猫なで声で小人に頬ずりしているマニー。
ウサギはさっそく小人をスケッチしはじめるが、
「おえかき、てつだうー!」
モデルのはずの小人はじっとしておらず、木炭を手にスケッチブックに向かっていた。
……小人妖精には、みっつの種類がある。
いっしょに戦ってくれる『戦闘妖精』。
戦闘を助けてくれる『補助妖精』。
そして今ボクが呼び出した、生産を手伝ってくれる『生産妖精』……!
ボクは昨晩、『妖精降臨』のスキルを獲得して……その時から決めてたんだ。
明日は妖精たちに手伝ってもらって、新しい装備を作ろう、って……!
装備は錬金術で作れるんだけど、錬金術で変形させている最中、人間は干渉できない。
だけど、妖精なら変形の最中でも干渉できる。
だから、より複雑な形の装備も作れるようになるはずなんだ……!
「よぉーし、みんな、整列っ!」
呼びかけてみると、「はぁーい!」と元気な声とともに集まってくる妖精たち。
マニーとウサギは妖精に逃げられてしまって、ちょっと残念そうにしている。
ボクの足元に整列した妖精たちは、ワクワクした様子でボクを見上げていた。
「じゃあ、番号っ!」
「いち!」「にー!」「さん!」「しー!」「ごー!」「ろく!」「しち!」「はち!」
妖精はぜんぶで8人か……たしかスキルポイントひとつにつき、1~10人の妖精がランダムに呼び出せるんだよね。
サイコロの結果は、けっこう良かったようだ。
「じゃあ、今からいくつかの装備を作るから、みんな、手伝ってね!」
「「「「「「「「はぁーいっ!」」」」」」」」
諸手を挙げ、これでもかとやる気をアピールしてくれる妖精たち。
頼もしい仲間を得たボクは、さっそく作業にとりかかった。
まず、市場で買ったふろしきのような大きな革を、ふたつに切り分ける。
半分になった革に向かって、『変形陣』を投げかけた。
すると、火であぶられたように革は変形をはじめる。
「最初は『靴』だよ! 靴の形に整えて!」
「「「「「「「「はぁーいっ!」」」」」」」」
カエルのように飛びはね、革にぴとっと張り付く小人たち。
手にした木槌でトントン叩いて、靴の形に整えていく。
あっという間に、かわいいデザインの革靴が出来上がる。
それをウサギに渡すと、「わたしに?」みたいな顔で戸惑っていた。
「うん! 石の靴だと重くて歩きにくいでしょ? それに靴ずれを起こしてたみたいだから、それに履き替えるといいよ!」
ボクがそう言うと、感激した様子で靴を履き替えはじめるウサギ。
その間に、二品目にとりかかる。
錬金術の抽出陣で、地面から鉄を抽出。
続けて変形陣を浴びせると、鉄は形を変えていく。
今にも飛びかかっていきそうな小人たちに向かって、ボクは叫んだ。
「よし、いまだっ! 次は『チェインメイル』だよ! 鉄を編み上げて!」
「「「「「「「「はぁーいっ!」」」」」」」」
細いワイヤーのようになった鉄糸に飛びつき、ぶらぶらする小人たち。
遊んでいるように見えるけど、みるみるうちに鉄が編みあがっていく。
……しゃららんっ……!
無骨だった鉄の固まりは、ハープのような糸となり……美しい音色をたてはじめる。
鎧というよりも、ワンピースのように繊細な鉄メッシュの服が完成した。
「できたあっ! チェインメイル……! はいウサギ、さっそく着てみて!」
すると靴を履き終えたばかりのウサギは、「えっ、これもわたしに!?」みたいな顔をする。
ボクは昨日、ウサギのために鎧を作った。
華奢なウサギのために、なるべく軽い鎧を作ったつもりだったんだけど……昨晩、お姫様抱っこをして、もっと軽い装備のほうがいいんじゃないかと思ったんだ。
ウサギは引っ込み思案なところがあるから、前の鎧でも文句ひとつ言わずに着続けるだろう。
そしてがんばり屋さんだから、ヘトヘトなるまで無理をするかもしれない。
そう、昨日の塔で会ったときのように……!
そうなると、いずれは無理がたたる。
このチェインメイルなら、いまウサギが着ている鎧よりさらに軽いから、だいぶ負担が軽くなるはずなんだ。
ウサギはボクに促され、新品のチェインメイルに頭を通した。
着心地を確認するようにクルリと一回転すると、ドレスみたいにキラキラと光を放つ。
その見事な出来栄えに、「わーいわーい!」と小人たちも大喜び。
『みんな、ありがとう……!』と小人たちを抱きしめるウサギは、まるで妖精のお姫様みたいにキレイだった。
■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)
□■□■スキルツリー■□■□
今回は割り振ったポイントはありません。
未使用ポイントが2あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●降臨術
妖精降臨
(1) LV1 … 戦闘妖精
(1) LV2 … 補助妖精
(1) LV3 … 生産妖精
英霊降臨
(1) LV1 … 戦闘英霊
(0) LV2 … 補助英霊
(0) LV3 … 生産英霊
●リバイバー
カオツルテクト
(0) LV1 … 蝸
(0) LV2 … 蛞
(0) LV3 … 蛭
●料理
見習い
(1) LV1 … 下ごしらえ
(1) LV2 … 焼く・炒める
(1) LV3 … 茹でる・煮る
コック
(1) LV1 … 盛り付け
(1) LV2 … 揚げる・漬ける
(0) LV3 … 燻す・焙煎
●サイキック
ニュートラル
(1) LV1 … テレキネシス
(1) LV2 … クロスレイ
(1) LV3 … テレパシー
選択:ライトサイド
(0) LV1 … テレポート
(0) LV2 … タイムストップ
(0) LV3 … プリサイエンス
選択:ダークサイド
(0) LV1 … ダークチョーカー
(0) LV2 … エナジードレイン
(0) LV3 … マインドコントロール
●錬金術
風錬
(1) LV1 … 抽出
(0) LV2 … 風薬
(0) LV3 … 旋風
火錬
(1) LV1 … 変形
(0) LV2 … 火薬
(0) LV3 … 噴火
地錬
(1) LV1 … 隆起
(0) LV2 … 地薬
(0) LV3 … 地震
水錬
(1) LV1 … 陥没
(0) LV2 … 水薬
(0) LV3 … 奔流
●潜在能力
必殺技
(1) LV1 … 波動弾
(1) LV2 … 烈蹴斬
(1) LV3 … 龍昇撃
選択:打撃必殺技
(0) LV1 … xカウンター
(0) LV2 … 爆裂拳
(0) LV3 … 点穴
選択:投げ必殺技
(0) LV1 … 当て身投げ
(0) LV2 … イズナ落とし
(0) LV3 … 真空投げ
●彩魔法
灰
(0) LV1 … フリントストーン
(0) LV2 … プラシーボ
(0) LV3 … ウイッシュ




